私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑧:コーポレートガバナンスの強化③

 

 そのことは、本家本元のアメリカで何が起こっているかを見れば一目瞭然です。

 

 アメリカでは、株主権が強くなり過ぎて、短期志向を抑制するどころか、それが行き過ぎて歯止めがかからなくなっているというのが現状なのです。具体的には、中長期の研究開発投資や従業員の賃上げよりも、株式配当や自社株買いなどによる株主への還元という株主にとっての『短期の利益』が最優先し、利益の多くを株主に持って行かれてしまっているのです。その結果、中長期の研究開発投資をすることができず、また、従業員の賃上げもなかなかできないという状況です。例えば、米国の代表的株式指数S&P500の内459社はその利益の94%を配当又は自社株買いによって株主に分配していたと言います。最近の例では、利益配当と自社株買いの合計は、ヒューレット・パッカード 168% / Time Warner 280% / Fazer 137% / Microsoft 119% / P&G 118%にもなっています。米国では『株主価値の最大化』が将来への開発・設備投資や従業員の賃上げを抑制し、“絶対的な株主最優先策”が常態化しているのです。

 

 そのような傾向は、ヨーロッパでも同様で、S&Pヨーロッパ350の内86社の株主への配当率は利益の89%にも上っています。

 

 また、アメリカを始め諸外国では、いわゆる『アクティビスト・ファンド』というものが活発に活動を展開しています。彼らは、絞り込んだ対象企業の株式を数%程度取得し、その企業の精緻な事業・財務分析を行って、対象企業の経営者に対し、短期的な株価の上昇につながる質の高い経営改善を突きつけることで、業績改善や株式価値の向上を実現し、株価を引き上げた上、概ね1年程度で株式を売り抜けます。対象企業に対して“物言う株主”として派手な経営改革キャンペーンを展開したり、また、株主総会における委任状勧誘戦を仕掛けるなど、対象企業に主張を通すために段階的にレベルを上げた対応をしていくのです。基本的には“短期志向”であって、ヘッジファンドであることから、運用を委託された投資者から比較的高い運用収益を上げることを期待されており、ファンド・マネジャーの成功報酬も運用収益にリンクします。それ故、アクティビスト・ファンドは、基本的に“短期志向”であり、株式保有期間は概ね1年程度で『会社の持続的な成長』に寄与する存在ではありません。

 

 『コーポレートガバナンスの強化』は、これらの『アクティビスト・ファンド』のために“武器”を用意しているようなものです。このような連中が日本に“株主”として押し寄せ、“建設的対話”と称して、『短期的な株価の上昇につながる精緻に分析された質の高い経営改善を要求する』ことが予想されます。企業側がその要求に応じて経営改善を行い、株価が上がれば、彼らは保有する株式を売って利益を確保しますし、企業が経営改善の要求に応じなければ、利益の株主への還元(利益配当や自社株買い)を強く求めるというわけです。

======================================

ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。/最新の記事は、

「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉒(8)衆知を集めること②:上意下達、下意上達①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。