私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑤:グローバル化の利益を享受する者

 

 それでは、安倍政権の推進する様々なインフレ政策によって利益を得る“強い者”とは誰でしょうか?

 

 それは、これまで日本市場に入りたくても様々な規制があったために入れなかった、そして、構造改革の後に堂々と日本市場に新規参入してくる欧米のグローバル企業なのです。つまり、安倍政権の推進する政策によって利益を享受することができるのは、欧米のグローバル企業であって、『日本が豊かになり、日本国民が豊かになる』わけではないのです。

 

 この点は、極めて重要な点です。

 

 私たちは、少なくとも日本政府は、日本国民の豊かさや幸せを目指して政治を行っているものと信じ込んでいます。安倍首相は言いました。まずは、富裕層や企業が豊かになれば、一般の人々にもその“お零れ”がしたたり落ちてくる(“トリクルダウン”)と。しかし、そんなものはいつまで待っても落ちてはこないのです。そこには意図したものかどうかは別として、“壮大な虚構(ウソ)”があるのです。

 

 このままでは、今後もこれまでがそうだった通り、日本は世界中で唯一“経済成長”しない国となり、しかも、その限られたデフレ下の日本市場では、安倍政権の『構造改革』や『グローバル化』『自由化』『民営化』など様々な“見当違いの”インフレ政策によって、規制緩和され、市場が解放されて、欧米のグローバル企業やグローバル資本のみが利益を享受するという結果をもたらすこととならざるをえません。他方、かかる需要不足供給過剰のデフレ下における供給力強化によってデフレがさらに深刻化する中で、安い賃金で喜んで働く“移民”がどんどんと流入してきて、私たち日本国民は、それらのあおりを受けて“失業”するか、あるいは、それらの移民との間で“底辺に向けた賃金競争”を強いられることによって、ますます“貧困化”し、日本という国も“衰退”の一途を辿ることとなっていく、私たちは、何も知らないうちに、あるいは、何も知らされないうちに、そのような『グローバル化、自由化はいいことだ』との間違った考えに基づく“虚構の世界”の中で生かされているのです。その点こそ、私が本稿のテーマ『私たちは仮想現実の世界に生きている!』との関連で、過去の歴史の話をし終えて完結しつつあったときに、わざわざ『現代の仮想現実』の話を追加した理由です。この話を(最近)知ってしまった以上、黙っているわけには行かなくなったというわけです。以下でもう少し具体的に述べてみたいと思います。

 

 まず、先に述べた通り、『グローバル化』『自由貿易』というものは、その言葉が与える印象とは裏腹に、全体の“経済成長”にはつながらず、経済成長は鈍化することが既に明らかになっています。そのような中で、安倍政権により現在も強力に推進されている『構造改革』や『グローバル化』『自由化』『規制緩和』は、これらの欧米のグローバル企業に対して、それまで様々な規制によって弱小業者や農家などを守ってきた日本市場を“規制緩和”“グローバル化”の名の下に開放し、弱小業者や農家を強者たるグローバル企業との苛烈な競争の下にさらすことによって、益々弱体化させ、その“格差”を拡大させて、遂には潰してしまうことにもなりかねません。つまり、『グローバル化』というものは、インフレ対策であり、デフレ下の日本には“不必要”かつ“不適切”な政策であるという点に加えて、“強者”にとってのみ都合のいい論理であって、“普遍的な真理”などでは全くないのです。

 

 中野剛志氏によれば、過去の歴史を見ても、国内に守るべき“弱い者”がいる場合には、各国はそれらの“弱い者”を守ってきました(“保護主義”)し、むしろそれによって経済成長を実現しているのです。例えば、1866年~77年はヨーロッパ諸国が自由貿易体制下にありながら大不況に陥っていた頃、当時世界で最も保護主義的な国であると言われたアメリカは、目覚ましい発展を遂げ、経済大国にのし上がりました。また、1892年~94年は大陸ヨーロッパ諸国が保護主義化した時期ですが、各国の貿易は拡大し、景気が回復しています。

 

 また、日本でも戦後の復興期には、まだまだ弱かった日本の自動車を初めとする諸産業を当時の通商産業省が様々な法令を作って、徹底的に守ってきたからこそ、その後成長して、世界で戦えるようになったのです。

 

 このように、『グローバル化』というものは、決して経済全体を大きくするものではなく、強者が弱者を駆逐し、格差を拡大させ、弱者の貧困化を進めるもので、強者や強者を多数持つ国にとっては“良い結果”をもたらしますが、弱者や弱者を多数持つ国にとっては“悪い結果”をもたらします。今の日本はそのいずれでしょうか?

 

 “守るべき弱者”がいる限り、『グローバル化』は、それらの弱者をグローバル強者との苛烈な“グローバル競争”の下に晒し、その結果、殺してしまうこととなるのです。そして、『グローバル化』は、上に見た通り過去何度か繰り返しており、“歴史的に不可避の唯一の流れ”ではありません。私たちは“選択する”ことができるのです。小泉政権以降、突き進んできた『グローバル化』の流れを今止めなければ、今後日本市場は、“強者”たるグローバル企業に席巻されてしまうこととなります。

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