私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界④:『構造改革』の本質

 

 もう一つ重要な政策上の誤りは、『構造改革』です。他にも『自由化』『グローバル化』『民営化』『規制緩和』など様々なことばで言われますが、皆基本的には、それまでの規制を緩和し、参入障壁を低くして、新規参入を呼び込み、供給力を増やすという政策です。これは、需要が過剰で供給力の不足しているインフレが行き過ぎる状況においては、供給力を増やすので、有効な政策と言えます。実際、そのような規制緩和の政策は、1980年代インフレの状況にあった英米において、それぞれイギリスのサッチャー首相やアメリカのレーガン大統領の下“新自由主義”の名の下に行われました。特に、ソ連の崩壊によって東西冷戦が終結した後は、グローバリゼーションの流れが世界を席巻しています。そして、この“自由化”というのは、その言葉の響きからも、基本的には“良いこと”だというイメージを持ち易く、このグローバリゼーションの流れは“歴史の必然”であって、誰も止められないものであるかの如く語られることもあります。

 

 しかしながら、過去の歴史が語るのは、全く逆の結果でした。ケンブリッジ大学の開発経済学者ハジュン・チャン氏によれば、新自由主義の考え方は、「格差は拡大しても、経済は成長する。富は増えるから我慢せよ。豊かな人がより豊かになることで、投資が増え、仕事が生まれる。トリクルダウンの効果で、社会の底辺においても結局は生活が良くなる。」というものでしたが、次に示す通り、実際はそうならなかったのです。

 

1960年~1980年(20年)

1980年~2010年(30年)

先進国

3.2%

1.8%

途上国

3.0%

2.7%

新自由主義が普及した1980年以降とそれ以前とを比べると、上の表のように、むしろ1980年以降の方が経済成長が鈍化しているのです。このことから既に『新自由主義(ネオリベラリズム)は経済成長すらもたらさない』ということがはっきりしているのです。

 

 にも拘らず、我が国では、“周回遅れ”で2000年の小泉内閣以降『構造改革』に着手し、現安倍内閣においても、依然として、『改正出入国管理法(いわゆる移民法)』『コンセッション方式水道民営化を可能とする改正水道法』『カジノを解禁する統合型リゾート実施法』『民泊、白タク等のシェアリングビジネスのための規制改革、高度プロフェッショナル制度』『農協改革』など“自由化”“民営化”“規制緩和”“グローバル化”に邁進しています。

 

 しかしながら、これらの政策は、先に述べたように需要が過剰で供給力の不足しているインフレのときに供給力を増やしてインフレを抑えるための政策であって、現在の日本のように20年以上も続くデフレ不況(需要不足かつ供給過剰)下において、やる必要がないばかりか、やってはならない政策なのです。デフレ下でこのような“規制緩和”“グローバル化” “自由化”の政策を実施すると何が起こるでしょうか?

 

 これらの政策により、新たな参入があり、また、強い者がどんどん強くなって、供給力が向上しますが、元々不足していた需要は一定以上には増えません。つまり、デフレを深刻化させ、『慢性的なデフレ』となります。その一方で、“強い者”が新規参入してくると、それまで規制によって守られていた“弱い者”は強者との苛烈な競争に負けて、潰れて行きます。また、需要不足のデフレ下では物が売れませんので、企業の売上も伸びず、他方で、安い賃金でも喜んで働く移民を受け入れることによって、日本の労働者は、それらの移民との間で賃金の競争をしなければならず(“底辺への競争”)、日本人の雇用が失われ、失業率が上がり、あるいは、日本人労働者の賃金は上がりません。そして、大企業と中小企業間の格差が拡大する。資本家と労働者の間の格差が拡大する。国家間の格差も拡大する。そして、これら格差の固定化が進むこととなるのです。

 

 それでは、このようなデフレ(需要不足/供給過剰)下の現在において、本来政府がやるべき政策は、どのようなものでしょうか?

 

 それは、“グローバル化”や“構造改革”“自由化”“民営化”をしないこと、必要に応じて国内の守るべき産業を“保護主義的措置”によって守ること、その一方で、投資や消費を拡大することが困難な民間に代わって、政府が需要を創出する積極的財政政策であり、また、家計の消費を促す消費税減税若しくは廃止なのです。今安倍政権のやっている“構造改革”あるいは“グローバル化”“自由化”“民営化”と“緊縮財政”や“消費税の増税”とは“真逆の政策”が求められているのです。

 

 では、デフレ不況下において、このようなインフレ政策を実施することで一体誰が得をするのでしょうか?

 

 それを考えることによって、現在の政治の動きの操っている、あるいは、重大な影響を与えている“黒幕”が誰であるかが見えてくると思います。

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