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8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡大②

 

 例えば、事業部長が、『こんなことはできないか?』と技術者に聞くと、大学出の頭に知識が一杯詰まった、いわゆるインテリほど、簡単に『できません』と言って、できない理由を次から次へと並べます。しかし、彼らはその優秀な頭を『できない』理由を考えるという消極的な方向でしか使っていません。その優秀な頭は本来『どうすればできるか』という積極的な方向で使うべきなのです。

 

 このように、優秀な頭を持ちながら、直ぐに『できない』と言うインテリについて、松下幸之助は、『インテリの弱さ』だと嘆いて、次の様に述べています。「物事というものは、できることでも、それを「できない」と思っている限り、やはり実際にできないのではあるまいか。~少々のことでできないと考えることは、むしろ人間のすぐれた可能性を押しつぶしてしまうことにもなるのではなかろうか。」

 

 昆虫のカナブンは、瓶の中に放り込まれて蓋をされると、そこから外に出ようと何度か試みますが、それがすべて失敗に終わると、もはや二度と外に出ようとはしなくなると言います。それは、その後蓋が開けられても変わらないのです。

 

 先のインテリも上のカナブンも、実際には存在しない“自分の限界”を自分の数少ない経験から『自分にはこれはムリだ』と決めつけて(“一般化”)、そう信じ込んでしまうことによって、それが事実上“限界”として機能してしまうのです。そして、それは『人間の可能性』『押しつぶしてしまう』もので、実にもったいないというわけです。

 

 松下幸之助は、貧困や争い、様々な不幸という人間の現実の姿を見て、人間というものは、そういうものではないはずだと考え、「人間は、無限の可能性を持つ、崇高にして偉大なる存在である」という“新しい人間観”を提唱したのです。曰く、「人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである。かかる人間の特性は、自然の理法に従って与えられた天命である。」

 

 この松下幸之助の提唱する壮大な人間観は、万物の本質を生かし活用する力を持ち、『無限の可能性』を持つ存在として、このような自分の数少ない経験だけで簡単に『できない』と決めつけてしまう(“一般化”)人間の認知や評価・解釈上の特徴から、自ら設定してしまう、実際には存在しない自分の“限界”を取り払うという機能を持つのです。

 

 実際、『自分にはムリだ』と思い込んでいる“限界”のほとんどは、このような実際には存在しない“限界”であることが多いのです。

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「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑭)失敗をしない経営:「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」④です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。