私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡大①

 

 “仮想の世界”とも言えるこの現実世界において、『自分の心を使いこなす』ために、松下幸之助が提唱したことについて、もう一つ指摘しておきたいのは、松下幸之助は、“自己イメージ”というものが人間の心に対して持つ大きな力に恐らく気づいた上で、人類共通の“自己イメージ”とも言える『人間観』について、極めてスケールの大きな人間観を提唱し、人間というものに大きな“使命”を与えたということです。

 

 私たち人間は、「自分とはこういう人間だ」という自分自身について信じているイメージを潜在意識レベルの中に持っており、それが自分の信念の一部を形成しています。そして、人間が、“信念”に沿って、それに合致するように考え、行動するのと同様に、人間は、そのような信念の一部である“自己イメージ”に沿って、それに合うような価値観(自分が重要だと思うこと)や信念(自分が正しいと思うこと)を持ち、物事を考え、行動し、感情を持つようにできているのです。自己イメージは、いわば潜在意識の中にあるソフトウエアです。同じ現象に対してはこのソフトウエアが働いて常に同じ反応を示します。また、この“自己イメージ”は、居心地のいいコンフォートゾーンを形成し、それと異なる新しい考えや行動を取ろうとしても、ホメオスタシス(恒常性維持機能)、即ち脳が現状を維持しようとする強力な自己修正機能のホメオスタシス・フィードバックが働いて、そこに引き戻されてしまいます。その結果、“自分には無理だ”と決めつけて挑戦しないとか、“自分は変われない”ということとなるのです。(苫米地英人博士のホメオスタシス仮説)即ち、その“自己イメージ”の枠から外に出て、考えたり行動したりすることは極めて困難なのです。

 

 そのような“自己イメージ”というものは、自分自身でその経験に基づき、意識的に“選択”して作り上げたものばかりかと言えば、必ずしもそうではありません。むしろ、批判能力の未熟な子供の頃に親や学校の先生、あるいは、テレビなどから繰り返し聞かされたことがそのまま蓄積され、知らず知らずの間に創り上げられたものが多いのです。なぜそうなるかと言えば、人間の脳は繰り返し聞かされ、“慣れたこと”を“正しいこと”と認識するものだからです。(東京大学・大学院薬学系研究科・教授池谷 裕二氏)

 

 また、その後批判能力がついてきた後に、自分の様々な経験を通じて自己イメージを形成していく場合も、それらの経験を自分自身の独自のフレームを通して“削除”“歪曲”“一般化”して知覚し、また、評価・解釈して、作り上げた独自のものであり、必ずしも客観的な自己イメージと合致するものではありません。

 

 このようにして形成される自己イメージは、“現実の自分”とは、実は“似て非なるもの”であって、それ自体“仮想の自己イメージ”と言えましょう。そのようなプロセスを経て、意図せずして“制約的な自己イメージ”を作り上げてしまい、それが自分に仮想の“限界”を設定してしまうことが実は多いのです。それらの“自己イメージ上の限界”は、“仮想”のものであるにも拘わらず、本人にとっては、心の中の現実世界の認識の中にある“真実”であるから、“現実に存在する限界”として機能してしまいます。「自分にはできない」「自分には無理だ」と。しかも、自己イメージは、潜在意識のレベルにありますから、本人はそのことに気がつかないまま、そのような制約的な自己イメージに沿って無意識の選択をし続けることになるのです。

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「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑬ 4)失敗をしない経営:「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」③」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。