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7)人生は一つの芝居のようなもの⑤:人間としての成功とは?

 

 それでは、このように『人生を一つの芝居のようなもの』と捉えた松下幸之助にとって、『人間としての成功』とはどのようなものだと考えたのでしょうか?

 

 この点、事業経営において成功を収め、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)というグローバル企業を一代で作り上げて、社会的な地位や名誉、財産のすべてを手にした松下幸之助でしたが、『人間としての成功』の基準を『社会的な地位や名誉や財産』とすることを否定し、次の様に述べています。「“人間としての成功”とは、人それぞれが、自らに与えられた天分を十分に生かして生きることである。」「人はそれぞれ、異なった持ち味、天分をもって生まれついている。昔から十人十色と言われるように、顔かたち、性格、素質、才能など全く同じという人は一人もいない。ということは、人はみな夫々の天分に従って異なった仕事をし、異なった生き方をするように運命づけられているということではないか。つまり、人はみなそれぞれに異なった使命が与えられ、異なった才能が備わっている。私は、“成功”というのは、この自分に与えられた天分をそのまま完全に生かしきることではないかと思います。それが“人間としての正しい生き方”であり、自分も満足すると同時に働きの成果も高まって、周囲の人々をも喜ばすことになるのではないか。これこそ、真の意味での成功ではないかと考えるのです。もとより成功の姿は、人によってみな異なるでしょう。しかし、社会的な地位や名誉や財産が成功の基準となるのではなくて、自分に与えられた天分に沿うか沿わないか、これを十分に生かすか生かさないかということが成功の基準となってくると言えましょう。」

 

 松下幸之助は、『人間としての成功』の基準は『社会的な地位や名誉や財産』ではなく、『自らに与えられた天分を完全に生かし切る』ことだと喝破したのです。

 

そしてさらに言います。「しかも、お互いにこの天分に生きることによって、初めて本当の生きがい、幸せというものを味わうことができるのではないでしょうか。もしも、社会的な地位や名誉や財産を得ることが唯一の成功であると考えてしまいますと、これさえ得ればよいというので、お互いに非常に無理な努力をして、自分の天分、特質というものをゆがめ、損なう場合もあるでしょう。また、そういうものがなかなか得られない場合には非常に落胆したり、劣等感を覚えて、生きる張り合いを失ってしまうことにもなりかねないと思うのです。」

 

 このように『(自らに与えられた)天分に生きること』によって初めて『本当の生きがい、幸せというものを味わうことができる』のだと言います。そして、『社会的な地位や名誉や財産』という誤った基準を成功の基準としてしまうことの“弊害”を指摘します。つまり、“方向”を間違えて、『社会的な地位や名誉や財産』を得るためならと“無理な努力”をしてしまうこととなると言います。しばらく前のホリエモン(堀江貴文氏)の証券取引法違反事件や東芝事件など最近の企業不祥事はまさにその典型例だと言えるでしょう。

 

  しかも、その場合の問題は、そのような“無理な努力”という方向違いの努力によって、『自分の天分、特質』を歪め、損なってしまうことだと指摘します。そうなると、『本当の生きがい、幸せというものを味わうことができる』機会を自らの手で消し去ってしまうこととなり、仮に『社会的な地位や名誉や財産』を得ることができても、“真の幸福感”を味わうことができず、常に不満で、心が満たされない状態になってしまうのです。

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「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑪ 5)「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。