私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

7)人生は一つの芝居のようなもの①

 

 この点、松下幸之助は「昨今のきびしい情勢の中では、お互い経営者として、時にやりきれない気分になることもある」と経営者に対して同情を示しつつも、「そういうときに、一つの心の持ち方として次のようなことを考えてみてはどうでしょうか。それは、お互いの人生なり仕事を含めて、この現実の社会というものを、一つの芝居、ドラマと考えるということです。」と述べ、「人生は一つの芝居のようなもの」あるいは「自分は生きた芝居の主人公」だと考えてみることを提案しています。

 

 そして、次の様に言います。「考えてみますと、現実の社会というものも、一つの芝居と見れないこともありません。そこでは、われわれ一人ひとりが演出家であり、役者であり、また同時に観客でもある。そういうかたちにおいて、いろいろな生きたドラマが展開しているということができましょう。この生きた芝居は・・・演出するのも演技するのも自分です。やり方しだいで、いくらでもいい芝居ができる。しかもそれを自分で鑑賞するのですから、ひとしお味わい深いものがあります。」(以上、「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」pp.112-113)

 

 つまり、松下幸之助は“人生”という“現実”を“芝居”という“仮想の世界”と見なして、自ら“演出”し、自ら“演技”をすることによって、いくらでも“いい芝居”ができるのだ、つまり、現実の人生を“いい人生”に変えて行くことが可能なのだ考えていることがわかります。

 

 これまで述べてきた通り、私たちの認識する“現実の世界”は、五感の機能の物理的制約に加えて、現象の認知だけでなく、その評価と解釈のプロセスにおいて、価値観と信念を軸とした“削除”“歪曲”“一般化”のメカニズムが働くという制約の下に形成された、いわば“現実の世界”とは似て非なる独自の“仮想の世界”なのです。私たち人間は、このようにして、独自の“世界モデル”を心の内面に創り上げ(“内部表現”)、それに強い臨場感を持って、“現実の世界”だと信じ込んでいるのです。その内部表現上の“仮想の世界”こそが、その人にとっての“現実の世界”なのであって、それ以外には実は存在しないのです。その“内部表現”の中に自ら創り上げた“仮想の世界”(世界モデル)は、すべて“情報”からできている。そして、情報は“書き換える”ことができる。松下幸之助の言うように、自ら“演出する”ことができるし、また、自ら“演技する”こともできる、そして、それらを通じて、与えられた環境(“宿命”)の下にではありますが、その中においては自由に書き換えることができるのです。

 

 より正確に言えば、松下幸之助自身が、必ずしもこの現実の世界自体が“内部表現”を通じた情報から成る“仮想の世界”だという認識まで有していたわけではありませんが、結果として、“心の持ち方”即ち“価値観(自分が重要だと信じていること)”や“信念(自分が正しいと信じていること)”を変えることによって、“物の見え方”“物の考え方”を変えることができ、それらが“行動”とその“結果”をも大きく(良い方向にも)変えることができるのだということを自身の体験から学び取ったのだと考えられます。

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「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑦(4)失敗の原因を無くして行く①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。経営に失敗する多くの経営者の姿を反面教師として学んだことや『成功の原因』を作るとともに他方で『失敗の原因』を無くして行くという経営の考え方について、解説します。