私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

6)人生も仕事も心の持ち方次第②

 

 同じ現象を目の前にしても、人によってその捉え方、受け止め方が異なります。それは、その人がどのような“心の持ち方”、つまり“心のソフトウエア”を持っているかということに左右されるところが大きいのです。

 

 例えば、“不況”という現象に直面したときに、普通の人は、不況というものは悪いものだと決めつけて、落胆、失望するでしょう。しかし、松下幸之助は、違いました。不況にも良い面があるのだと言うのです。曰く、「私は、事業を始めた当初は、好景気・不景気に直面してその都度、喜んだり、多少の心配をしたりしていました。しかし、よく考えてみてふと自分の心の持ち方・考え方によって、いいときはいいとして生かすことができるが、悪いときは悪いとしてそれをまた生かすことができるはずだと思うようになりました。

 

 好況で業績の良いときには、会社の問題点は隠れて見えにくいものですが、不況になって、業績が悪くなってくると、池の水がなくなると池の底が見えるようになるのと同様に、会社の問題点が浮かび上がって見えるようになります。そして、好況で業績の良いときには、“改革”をやろうとしても、社員たちにとってその必要性がわかりにくいため、改革へのエネルギーが十分に蓄積されません。

 

 しかし、不況となれば、何かを変えなければならないということは誰もが理解できるため、社員たちの“改革”への共感、共鳴が得られ易く、改革へ向けたエネルギーが十分に蓄積されるのです。また、不況のときこそ、次世代の経営者を教育する絶好の機会となります。

 

 それ故、世の中では悪いものだと決めつけられている“不況”について、松下幸之助は、「不況またよし」と言うのです。

 

 私たち人間の認識しているのは、所詮情報から成る“仮想の世界”であり、それは、どのような“心の持ち方”をするか、どのような“心のソフトウエア”を設定するか、自分自身の選択次第で、自分の意識をフォーカスする焦点とその結果集まってくる情報を選ぶことができる。そうであるならば、自分にとってより有益となるような“心の持ち方”を選ぶことによって、集まる情報と物の見方、物の考え方をより自分に有益となるように変えて行くことができるではないか。それによって、生ずる結果も大きく変わってくる。自分に与えられる環境や自分の身に起こる事象などその“宿命”は変えられないが、それらの環境や事象を生かすも殺すもそれらをどう捉えて、それらにどう対処していくのか、自分自身の“心の持ち方”次第であって、それらを最も良い“心の持ち方”を選んで、自分に繰り返し言い聞かせることによって、“強固な信念”(心のソフトウエア)となるまでに固定させることによって、その後の“運命”は変えて行くことができるというわけです。

 

 それ故、松下幸之助は「人生も仕事も、すべては心の持ち方次第だ」と喝破したのです。自分の認識するこの世の中は、情報から成る“仮想の世界”なのだから、自分の心を使いこなして“心の持ち方”を自分にとって最も都合のいいように書き換えることができるし、書き換えればよい。そうすることによって、より良い人生を送り、より良い仕事の成果をも挙げることができるのだからというわけです。

 

 例えば、仕事についてのあるべき“心の持ち方”の集大成が松下幸之助の経営理念ですが、具体的には、“心の持ち方”を次の様に自在に変えて行くのです。自己中心的な“私的利益の実現”から“公的利益の実現”に転換し、それを繰り返し自分に言い聞かせて、自身の“強固な信念”にまで高めることによって、有害な自分の利益や感情などの“私心”を“削除”するのです。また、『勝負(経営)は時の運』という現実を歪めて、『必ず成功すると考えること』と“一般化”し、また、『失敗の原因は他人や環境にある』場合もあるという現実を歪めて、『失敗の原因はわれにあり』と“一般化”し、それらを繰り返し自分に言い聞かせて、自身の“強固な信念”にまで高めることによって、『成功するまで諦めない』信念を持つことができるようになり、部下をリードし、成功するまで諦めない強い組織を作ることができ、また、失敗したときには、自分に原因があるとして、反省し、失敗に学んで、手を打ち、次の成功をつなげることができるようになるわけです。

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