私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

5)人間の認知機能の歪み④

 

 これらのメカニズムが悪い方向に作用することによって、人間の抱える様々な間違いや問題が生じてくると言えます。

 

 特に、最悪の場合は、松下幸之助が失敗する経営者の多くに共通して見られたという自分の“私心にとらわれる”場合です。

 

 松下幸之助は、言います。「人間誰しも自分が大事であり、可愛いものである。」それ故、私たち人間は、自分の利害や感情などの私心にとらわれやすいものです。そして、私心にとらわれると、脳のRASは、自分にとって得になること、自分が好きなこと、自分にとって楽なことに意識をフォーカスし(“焦点化”)、それらに関する情報を選んで地引網を引き上げるように集めてくるのです。そして、そのような状態が固定されてしまいます。その結果、それ以外の様々な情報(実は、多くの場合にここに重要な情報が含まれているのです)は“削除”されてしまうのです。また、たまたま目に入ったとしても、自分の都合のいいように歪めて解釈し(“歪曲”)、そして、『これはこういうものだ』と評価します。客観的に正しく評価することができません。また、それに反する事例もありうるということなどは一切無視して、数少ない事例から、すべての場合が『こういうものだ』と決めつけてしまうのです。(“一般化”)

 

 松下幸之助は言います。「ついつい目先の自分の利害得失に心奪われ、それにとらわれて物事を考え、判断を下し、行動をとっていくことになりかねない」(「素直な心になるために」p.125)「物事の一面のみを見て、それにとらわれがちになってしまう」(「素直な心になるために」p.134)「そうした自分の利害とか感情にとらわれてしまうと、判断を誤ることもあるし、また力強い信念もわいてこない。」(「指導者の条件」p.77)実は、『自分のため』というだけでは、人間それほど頑張れるものではありません。自分さえ、諦めれば済むからです。ところが、社会のため、お客様のため、従業員たちのためというように人の為にやるとなると、自分だけのことでは簡単に諦めることはできませんし、力強い信念がわいてきて驚くほどの力を発揮することができるのです。

 

 また、松下幸之助は、次の様にも言います。「とかく意欲や欲望にとらわれがちとなり、また、何かの必要に迫られて心に余裕がなくなって、ついつい無理をしてしまうことになりやすくなる」(「素直な心になるために」pp.138-140)松下幸之助は、『雨が降れば傘をさす』というように“自然の摂理”に反しない経営を行うことが大切だと強調しましたが、“私心”にとらわれると、『雨が降っているのに傘をささない』というように、本来やってはいけないことを欲に駆られてつい無理してしまうもので、そのような無理が失敗を招くことがあるのです。

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「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント④」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。経営に失敗する多くの経営者の姿を反面教師として学んだことや『成功の原因』を作るとともに他方で『失敗の原因』を無くして行くという経営の考え方について、解説します。