~街角で~


 荷馬車がお店の前で停まった。


 ここで小麦粉とか買うみたい。


 「わしはここでしばらく荷物を積むから、お前さんは町をブラブラしてくるといい。」


 「手伝うよ。」


 「いやいや、重い袋を何度も抱えるのは子供のお前さんには無理じゃて。いいから町を見ておいで。」


 「うん・・・じゃあそうする。ついでに飲み物とか買ってくるね。」


 「ああ」


 私は荷馬車から離れて町の中へ向かった。


 「色々なお店があるんだなあ。」


 商店街のような町の中を歩く。


 やっぱりこの町にも学校みたいなものあるのかな?


 私以外あんまり子供の姿見えないけど・・・。


 「アン、あそこ」


 「ん?」


 イッちゃんが示したのは・・・刀とか武器のお店?


 武器のお店が普通に街中にあるっていうのもすごいよね。


 お店の中には王子様たちの姿が。


 王子様の新しい剣を買おうとしてるのかな。


 ・・・。


 あれ?


 「ゲルパって人いない・・・。」


 お店の入り口は広めで、お店の中の様子は少し離れた所からでも分かった。


 王子様と側近の人たちの中で、ゲルパという人だけ見当たらない。


 「・・・別のところでお買い物かしらね。」


 「・・・。」


 気になる・・・。


 「探してみよう。」


 「え?」


 どこと言う当てがあるわけじゃなかったけど、ゲルパさんを探すことにした。


 あの人は何か引っかかる。


 刀のお店の脇の小さな路地に入った。


 表の大きな通りと違って、路地はほとんど人の姿が見えない。


 思いつきで適当に進んでみる。


 いくつめかの建物の角を曲がった時・・・。


 いた、ゲルパさんだ。


 町から少し離れた林の中に。


 ・・・。


 今いるところからはよく見えないけど、誰かと話しをしているみたい。


 「誰かいるみたいね。ここからじゃ分かんないけど。」


 「もう少し近づいてみよう。」


 私は気づかれないように体を低くしたまま林の方へ・・・。


 木の根元の茂みに隠れた。


 ギリギリ声が聞こえるくらいの距離だ。


 「・・・次は確実にだぞ。」


 私に聞こえたのはそのセリフだけだった。


 ゲルパさんが話しているのは・・・。


 見えないなあ・・・。


 バッ。


 黒いマントのようなものの端っこが見えた。


 ゲルパさんと話していた人は黒いマントか丈の長い服を着ている?


 でも私が見えたのはそれだけ。


 話は終わったらしくゲルパさんは私たちの隠れている茂みの前を歩いて町の中へと戻っていった。

 

 『・・・次は確実にだぞ。』


 ゲルパさんのあの言葉の意味は・・・。



 ~つづく~




 

~赤い服の少女~


 梅小路さんのお家の少女の絵。


 寂しそうな表情の女の子・・・。


 「む~」


 みさとがなにやら変わったデザインのメガネをかけて絵を見た。


 「・・・飛び出してこない。」

 

 ・・・3Dメガネか。


 「昼間はずっと絵のままですの。絵から女の子が出てくるのは決まって夜ですわ。」


 「夢とかじゃないですよね?夢と現実がごっちゃになったり・・・。」


 「ほっぺをつねったりして爪で傷が付いたくらいですもの。夢ナはずはありませんわ。」


 梅小路さんの顔に小さい傷あったの気が付いてたけど、それが原因だったのか。


 「そういうことだと、今この絵を見てても仕方ないわね。今日はカメラを設置して、様子を見ましょう。」


 「カメラだけ置いて帰ってしまうんですの?」


 「私たち学校帰りのままだし、それにこの絵からは悪意のようなものは感じないわ。気にせず寝てるといいわ。」


 「でも・・・。」


 「なんならあたしがお泊りしてやろうか?」


 「・・・一人で寝ますわ。」


 「なぜだ~!!」


 怖い絵より警戒されてるのね、みさと。


 コンコン☆


 「お嬢様お茶をお持ちしました。」


 「どうぞ。」


 「失礼します。」


 さっきのメイドさんが入ってきた。


 丁寧に私たちの前にお茶を置いて・・・。


 「あの・・・お嬢様、お願いが・・・。」


 「・・・またですのね。みなさんに聞いてごらんなさい。」


 ?なんだろ、私たちに質問?


 と思ったら、メイドさんはポケットからデジカメを取り出した。


 「みなさん、お写真を撮らせていただいてよろしいですか?」


 ちょっと赤い顔をしてそんなことを言うメイドさん。


 「は・・・?」


 「・・・ごめんなさい、彼女の趣味なんですの。私のお友達や可愛い女の子が訪ねてくると写真をとりたがるという・・・。」


 ・・・。


 「もうこんなにたくさん来られたら我慢できません!興奮してお湯で火傷しましたー!はああ!!」


 カメラを持ってテンション上がってるし・・・。


 ・・・私の出会う人たちって、なんかこう・・・。


 

 特に断る理由も無いので、メイドさんのリクエストにお答えしました。


 写真を撮ってお部屋を出て行ったメイドさん。


 「はああ~!」


 という声がしばらく下の階から聞こえてきて、梅小路さん恥ずかしそうだった。


 

 さっきの瞳美のセリフの通り、くーみーが取り出したカメラを梅小路さんの寝室にセットして、私たちは帰ったのでした。



 ~つづく~