花田紀凱著「編集者!」(2005年3月発行)抜粋
文章に滲み出る人柄
1994年7月吉行淳之介さんが亡くなったとき![]()
僕は「マルコポーロ」の編集長をしていたが、
かつて「週刊文春」に掲載した
吉行さんと山口百恵さんの対談を追悼再録することを決めた![]()
ついては百恵さんにひと言、と思ってお願いしたら
百恵さんは短い文章を書いてくれたのである![]()
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引退後、百恵さんが書いた文章としては二回目のもので
百恵さんの誠実な人柄が滲み出たとてもいい文章だった
(文章は前回のブログに掲載したので略します)
吉行・百恵対談
対談を「週刊文春」新年号のためにお願いしたのは
1978年暮だった![]()
当時、百恵さん19歳![]()
次々にヒットを飛ばし
人気絶頂といってもいい![]()
しかも、十二月である![]()
忙しさも並大抵ではなかっただろう![]()
銀座並木町通りの、
今はないフランス料理店【レンガ屋】
吉行さんと、デスクの堤堯さん、僕、カメラマンの4人は、
一時間半も待たされていた![]()
温厚な吉行さんは、それでも「忙しいんだろうなぁ」と
赤ワインを飲みながら待っていてくれたが![]()
僕は気が気ではなかった![]()
やっと百恵さんが到着した![]()
ボーイさんたちは大騒ぎである![]()
マネージャーがこう言った![]()
「時間がないので30分でなんとか」![]()
これには吉行さんも切れてしまい![]()
一時はどうなることかと思ったが![]()
やっと話がついて対談が始まった時には十時を回っていた![]()
しかし、さすがに対談の名手吉行さんである![]()
百恵さんの本音を引き出し、
とても面白い展開になった![]()
吉行さん
接吻するときに女は目を閉じるでしょうと言ったら
「いや、それが百恵ちゃんは違うんだ」って
百恵さん
ウフッ
吉行さん
「百恵ちゃんは目が開いていて目が寄るんだ」って
いうから、寄るったって真ん中に寄るのか、それじゃ、
とても滑稽じゃないかって・・・
百恵さん
ハハハ。それはそうですね
吉行さん
「わたしの一番大切なもの」って少女が歌った場合の、まあ
普通はバージンなんかを考えるわけだけれど
あなたはなんだと思いますか
百恵さん
当時よく、興味本位にそういう質問を受けました
「まごころです」っていいましたけど
吉行さん
なるほどね
そういうふうにすり替えたわけね
で、いまは?
百恵さん
今だったら 自分の一番大切なものって言ったらば・・・
そうだなぁ
なんだろうなぁ
むつかしい![]()
こんな調子で百恵さんは吉行さんによってかなり本音を引き出されている![]()
当時54歳、父親のような吉行さんに対し
百恵さんがもの怖じしないのが印象的だった![]()
このあとに
百恵ちゃんの新連載エッセイ「窓に吹く風」について書かれてます![]()
次回更新させていただきます![]()
百恵ちゃん![]()
思慮深くて受け答えがしっかりしていますね![]()
言葉選びにもセンスがあります![]()
だから当時の文化人にも愛され![]()
目上の方とも対等の立場で話ができたのでしょうね![]()
僅かな時間を見つけて![]()
本を読んだり![]()
詩を書いたり![]()
努力を怠らなかったのでしょう![]()