じいちゃんの嘘 | パーキンソン病の父と私

パーキンソン病の父と私

2010年、父がパーキンソン病と診断されました。父のパーキンソン病で試した治療法や自然療法を記していくことにしました。同じような状況に置かれた方の参考になれば幸いです。

じいちゃんが
救急車で運ばれた数日後、
じいちゃんと孫は
近くのスーパーに買い物に出掛けると言って
家をでました。

夜7時過ぎのことですが、
うちの裏にあるスーパーなので
何かあれば、
直ぐに駆けつけられると思っていました。

ところが、
二人は数十分経っても帰って来ません。
心配になって、
探しに行ってみると
スーパーにいません。

ふと、
思い浮かんだのは、
孫がバスに乗りたがっていたことでした。

夜も遅かったので、
バスに乗りたいと駄々をこねる孫を説得して、
近くのスーパーに送り出したのです。

嫌な汗がどっと吹き出しました。
もし、
横断歩道で
じいちゃんの薬が切れて動けなくなったら、、、
孫が突然走り出して
じいちゃんが追い付かなかったら、、、
嫌な想像が、
頭の中をよぎります。

私と旦那は、
慌てて
心当たりのあるところを探しました。
バス会社にも聞いてみました。

そんな時、
じいちゃん達が
いろいろなお菓子を提げて、
帰ってきました。

バスに乗っていたのです。

私は、怒りました。
『近くのスーパーに行くって言ってたやん!
なんでバスに乗ってるん?
『じいちゃんが、動けなくなって、3歳の孫が走り出したらどうするん!?

『ごめんなさい』
私に謝るじいちゃんは、
心の何かが折れてしまっているようでした。

いつものじいちゃんなら
こんな勝手なことはしません。

じいちゃんの心は、
私には分からないけれど、
生きることに希望を持てず
けれども、諦めきれずに苦しんで
自棄になっているようにも見えました。

じいちゃんと孫の
乗客もまばらな夜中のバスの時間は、
そんな
現実をなにもかも忘れられる時間だったのかもしれないな
と思いました。