縁起と演技の関係

新宿駅からほど近い花園神社には「芸能浅間神社」という境内摂社があり、芸能関係の仕事をしている人なら知らない人はいない有名な神社があります。

 

社(やしろ)は、本殿に比べれば驚くほど小さくゴツゴツした岩の上にちょこんとあるのですが、その社の周りにずらりと並ぶ有名人の名前の数々でこの神社がどれほど芸能人に敬われているかが分かる光景です。

(私も芸能界にいた頃は新宿に行く度に浅間神社にお参りしていました。)

 

「芸能」や「芸能界」「芸能人」と聞くと、今はやりのミュージシャンや有名な俳優やモデルを思い浮かべる方も多いでしょう。

 

しかし、芸能は数千年も前の古典から最新のテクノロジーを使ったものまであり「幅広い」という表現ではとても表現出来ないほど多種多様です。

 

芸能界というところは華やかでキラキラして見えますが「妬み(ねたみ)嫉み(そねみ)僻み(ひがみ)」を持った魑魅魍魎(ちみもうりょう)がそこら中にいる世界です。

 

なので、映画や舞台、新しいドラマなどでクランクインする時には「お祓い」をして撮影を開始する事も珍しい事ではありません。

 

それだけ「他の魑魅魍魎(招かざる者)を呼び込まないためにも、穢れた者を遠ざけたい」という気持ちが強いというわけです。

 

そういう意味もあり、芸能界では「縁起」を大切にします。

勿論、一般でも縁起を大切にする事はよくありますが、芸能界は浮き沈みが激しい業界なので「良い縁を掴む」という事を殊の外大切にします。

つまり、それだけ「悪縁(穢れた気)」を嫌うという事でもあります。

 

「縁起」は「演技」と、発音は違いますが、ひらがなで書けば「えんぎ」で同じ、また演技にはかかせない「台詞」は言葉で構成されていて言葉は「言霊」として力を持つある種一つの「呪文」とも言われるので、そういう意味でも演技とは言え相手を罵ったり、ネガティブなセリフだったりを言わないといけない役者は穢れた者を遠ざけたいと思うので、縁起やお祓いなどを殊の外大切にするわけです。

 

それは、清くて、正しくて、美しい事か

さて、芸能界の「縁起と演技」のお話しの説明が終わったところで、最近動きのあった宝塚問題についてお話ししていきましょう。

 

遺族側の訴えに真っ向から激しく対立していた宝塚運営が3月28日の会見で突如「パワハラはあった」と認め遺族に謝罪しました。

 

その会見の時に「早い段階での再会を目指す」としていたので「取り敢えず謝罪文を出さない3人はさておき、運営としてパワハラを認めて謝ってしまえば再開は出来るビックリマーク」と、踏んだのでしょう。

 

パワハラに関与したのは宙組の幹部上級生4人と、宙組の上級生3人、劇団のプロデューサー2人と演出担当者1人の合計10人とされ、そのうち遺族側に謝罪文を渡したのは、幹部上級生2人、上級生1人、プロデューサー2人、演出担当者1人の合計6人で、額にやけどを負わせた幹部上級生については、この日までに謝罪文が間に合わなかったもののその後のメディアの取材で謝罪文が遺族に送られた事がわかっています。

 

つまり、宙組の幹部上級生1名、宙組上級生2名の計3名が謝罪文すら出さないまま再開の舞台へ上がるという事のようです。

 

「運営が謝罪したから自分たちは何も悪くない、謝らなくていい」という理由にならない理由なのか、なかなか一般社会で生活している人からしたら理解できない行動です。

 

で、これを運営も認めていて、何なら再開を急ぐとまで言っているわけで、何でしょう…謝罪文を出さなかったのが幹部上級生と上級生二人という事なのでショーだけとは言えショーの大部分に出演しライトを浴び拍手を貰う事を考えると、まるで凱旋ショーのようで、きちんとけじめを付けずに再開する事にスッキリしないぬめぬめとした気持ち悪さを感じます。

 

まぁ運営が、この状態で再開すると言っているので、これが宝塚としての「清く、正しく、美しい」事なのでしょう。

 

それぞれの思惑

謝罪会見をした途端に「ヤッホ~音譜」と言わんばかりに再開報告したのは、あくまでも企業としての収益の問題と何とか体裁を整えてなるべく早く退団へと促すためもあるのでしょう。

 

とはいえ、今後の利益のために謝罪しなかった3人を使って(幹部上級生や上級生であるためお芝居のメインどころを務める可能性が非常に高いため)利益に繋げる事は社会的には非常に印象が悪いのですが、それでも組を潰すよりはましですし、もしかしたら今後は「運営は謝罪した、謝罪しない3人については運営は関与しない、謝罪についてはそれぞれに聞いてくれ」という態度に出るかも知れませんが…

(ま、運営が謝罪しようが、謝罪しない3人を起用している時点で道義的にどうなのよって話がぶり返すと思いますが…)

 

運営の本音としては、謝罪もしたし合意も取れたので出来れば謝罪しない3人についてはとっとと卒業してもらって関係を断ち切りたいのが本音ではないでしょうかはてなマーク

 

では、当の謝罪しない3人は今後どうしたいのか、また どうなると思っているのかを今の状況を見ながら考察してみましょう。

 

18日、NHK大阪放送局の林局長は昨年9月に劇団員Aさんが急死したため、今も続くBSプレミアムなどで放送していた宝塚歌劇団の中継中止について「宝塚歌劇団と遺族側の合意の話はニュースでお伝えしていますし、内容も承知しておりますけど、今のところ宝塚公演の放送や収録を再開することは考えていない。もう少し歌劇団側の再発防止の取り組みや遺族側との話し合いを見守った上で判断したい。世の中の受け止め方をみて、もう少し時間をかけて見守る」と答えています。

 

NHKは国民から受信料を徴収して放送をしているため、多くの人が納得しない事については慎重です。

 

NHKだって宝塚は宙組だけでなく、他に4つも組があり、それぞれに人気のトップスターがいて、各トップスターを贔屓にするファンが沢山いることぐらい承知していますが、社会的規模から判断すると放送は出来ないという事です。

 

今までの運営の対応と謝罪した後の対応、謝罪文を出さない3人の対応などで他の組の放送も見送られるのは、他の組のキャストとそのファンにとってはお気の毒な事ですが、これが「企業が対応をミスった後遺症」で、人の心理を読み取れていないのに読めていると勘違いして突き進んだ結果で、謝罪文を出さない3人については今も「謝罪文を出さない事は正しい事」だと思っている証拠で、それを多くの人は「禊をしな人物たちを起用して再開するのかはてなマーク」と、言う事を問題視していて、それをNHKは感じ取っているという事です。

 

「幹部上級生や上級生」と言っても年齢は30前後だと思うのですが、30前後で意地やいらぬプライドで自分の所属する組織の方針に従わない事は一般社会ではあり得ない事でしょう。

 

しかし、彼女たちはそれをやっているわけで、それが当たり前だと思っている…

まぁ、だからこの状況なんですが…かなり勘違いしている事がわかります汗

 

そして退団すると、この感覚のまま芸能界へ入って来るわけです。

 

しかも謝罪せず再開した舞台に立った後だと「やっぱり自分たちは正しかった」という間違った認識を強固にした状態…

 

つまり、違う方向にバージョンアップして芸能界に入って来るという事。

 

宝塚で退団して芸能界入りする事はメディアも取り上げ、騒がれ「華麗なる転身」と取られがちですが、皆が皆そうとは限らない…

 

毎日、CMやドラマ、映画にと出ている宝塚出身の方もいれば、たまに見かける方や、さっぱり見なくなる方、勿論、舞台で活躍する方もいますが、転身後のハネムーン期を過ぎれば移ろいやすい人の人気を維持するのは大変な事です。

ただでさえ浮き沈みの激しい世界なのですから。

 

だから始めに言ったでしょうはてなマーク

「浮き沈みが激しい業界だから『縁起と演技』を大切にし『良縁を掴む』という事を殊の外大切にする」と、そのため「穢れた気」を嫌うと、だからお祓いや習わしを大切にすると。

 

このまま行けば、「舞台に曰くのある人物」として認知され、舞台だろうが映像だろうが共演をお断りするキャストも出て来るでしょうし、共演どころかスポンサーさえ付くかどうか…

(現にNHKは放送を見送っていますし、問題以降宝塚と距離をとっているところは多くあります。)

 

縁起を担ぐ事の多い世界で「悪い印象が付きかねない因縁の輪」に加わりたいと思う人はいないでしょう。

 

今はいいかも知れませんが、自分の意地やプライドを優先して現実を見ず、解決しなければならない事を先送りにすればするほどツケは大きくなるばかりなんですが…

まぁ、「自分だけは違うビックリマーク」と思う小さな世界の王様は多いものです。

 

道の先が崖だと、どんなに周りが教えても、本人には「成功者の道」にしか見えなければ聞く耳なんて持ちません。

 

間違った認識のまま年を重ねると「間違っていたかも知れない」と思っても後戻り出来ないところまで進んでいて、方向転換するにもカッコ悪すぎて結局「自分は悪くないビックリマーク間違っていないビックリマーク」と進む事も、戻る事も出来ない状態になり心だけが疲弊していきます。

 

今は3人で、何となく仲間意識のようなものを共有して「大きな敵に立ち受かっているビックリマーク」的な感じで気持ちが高揚しているのかも知れませんが、一生3人でつるんで生きていくのならそれでいいでしょうが、退団すればそれぞれの生活様式が変わり、そうそう会う事も連絡も徐々にしなくなるでしょう。

 

退団後の人生の方が圧倒的に長く、退団後は宝塚とは関係の無かった方々と仕事をご一緒する事の方が多いだろう事を考えれば、他2人から「抜け駆け」と言われようが、今からでも謝罪文を出して1秒でも早く抜けた方が得策だと思います。

 

これが私のクライアントだったら間違いなく抜ける方向を示しますがね…

 

 

 

このお話が誰かの心のヒントになれば幸いですラブラブ

 

 

 

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