黒猫:さて今日は上半期をまとめ……って上半期って9月で終わりじゃないの?

作者:そうだね。いいところに気が付いた。

黒猫:いま8月じゃん。

作者:そう、オーガスト。

黒猫:1月からカウントする上半期なら6月だし。

作者:そうジューン。

黒猫:いちいち英語で入れなくていいから。

作者:ソーリー、ブラックキャット。

黒猫:全部英語になったね。そういうの要らない。

作者:いや、あれですよ、まあ4月から9月までの森晶麿刊行作品を早めにダイジェストで出しちゃえ、と。

黒猫:おお、まとめであり先取りだ。

作者:そうそう。個人的には今日は観た映画の話でもして終わろうかなって感じだったんだけど。

黒猫:そのほうが無責任に言えるから?

作者:その通り! 自作の紹介って本当はあんまりしたくないんだよ。だって自作をもって「面白いから!マジで!」とか言うのは嘘くさいじゃない? かと言って「まあつまらないものですがこんなん出しました」って言ったら「粗品か!」って話になるわな。

黒猫:その点、映画や音楽の感想なら、純粋に批評を言えばいいわけだもんね。

作者:そうだよ。それに、当たり前だけど、いくら上半期刊行作をまとめても「どうせおまえはまたすぐ本を出すんだろ?」って自分の中で突っ込んでしまうよね。いかにも決定版みたいに言ってみても、また本が出ればこの上半期というまとめは何だったのかって感じが出るわけですよ。

黒猫:まあ生きていればね。

作者:そうなんだよ、生きていればっ…って話題で思い出した。こないだ飴玉口に入れたままうたた寝しててね。変な夢見た拍子に飲み込んじゃって、あやうく死にかけた。

黒猫:そういうこともあるし、上半期でまとめておいてもいいんじゃない?

作者:そっか。そうだな。じゃあとりあえず紹介しておきましょう。

【四月】

文庫版『葬偽屋は弔わない』(河出文庫)

 

 

 

『葬偽屋に涙はいらない』(河出書房)

 

 

このシリーズの続編が出せたことは個人的にとても嬉しかったね。偽の葬儀を扱う〈葬偽屋〉を手伝うことになった自殺願望ありの高浜セレナが、葬偽屋の殺生歩武と5つの〈葬偽〉を通して生と死と向き合っていったのが前作なら、二作目の『涙はいらない』は、そんなセレナの成長譚になっている。二人の関係の変化にも注目。

黒猫:しかも、表紙は丹地陽子先生。非常に典雅な仕上がりだね。

作者:うん、セレナの美脚もさることながらセレナの表情がじつに魅力的で…。

黒猫:セレナしか言ってないぞ。

作者:黒猫シリーズもそうだけど、丹地先生は毎度モチーフの全体へのちりばめ方が見事だよね。そして、本シリーズのもう一人の重要なキャラクター、黒村が表紙裏に描かれているのでそちらも要チェック。

黒猫:そういえば、本作がシリーズ化されたり文庫化されたのは、1作目の売り上げから考えれば異例だったという話だが?

作者:そうなんだよね…そのへんはね、ちょっといろいろごちゃごちゃあって、話が消えたり新たな話があったりで相変わらずはっきり言えないのでご容赦願おう。

黒猫:そ、そうなのか、まだ何かごたごたしているのか。

作者:何かある作品ではあるんだろう。何だかはわからんが。ちなみに〈葬偽屋〉シリーズは1作目も2作目も楽しい葬偽の魅力がぎゅぎゅっと入っていて、森晶麿ビギナーにも、黒猫シリーズから入った方にも、どっちにもお勧めできる一冊なのでまだ読んだことのない方はぜひここから入ってもらえたらと思う次第。

 

さてでは次。

【五月】

『文豪Aの時代錯誤な推理』(富士見L文庫)

 

 

あの文豪、芥川龍之介が現代に転生? 初恋の女性にそっくりな女性が殺される未来を変えるために奔走する、というけっこう奇想天外な話。カズアキさんのイラストがかっこいい! そして帯には文ストのヤツガレさんがコメントを!

黒猫:たしかに奇想天外だったね。君らしいような軽すぎるような新しいような、まあいろんなことを考えたけど、斬新な作風ではあったんじゃない? 少なくとも、君の中に今までにない切り口を試している。

作者:そうだね。萌え要素の在り方というのも、今までの自分の常とう手段とはなるべくちがうやり方をやってみた。黒猫シリーズのやり方がいいっていう人は今も多いんだけど、衒学要素の配合といいキャラのバランスといい、「あれはあれでしかない」が結論なんだよね。あれより難しくても誰も読まないし、あれより簡単だと「黒猫より易しめ」ってなるし同じなら「この人はこればっか」になる。それはもういろんなことやってみてこの七年で学んだことだからね。外野の声よりも、まずはL文庫の読者層に目線を合わせるってことを考えた。

黒猫:もともと広告屋だもんな。

作者:そう。自分の作風とか考えるよりもターゲット層はどこ、とかそういうこと考えたほうが、結果としてのびのびやれるってこともわかってきた。「何を」「どんなかたちで」「だれに」届けたいのか。それを訴求していくと、結果として作風ができあがる。まあ、今回の作品はそういう基本的なことの再確認作業みたいな感じだったかな。

黒猫:では6月。

作者:よしじゃんじゃん進まないとね。

【六月】

『火刑列島』(光文社)

現象学者の凪田緒ノ帆は、半年前に自宅の火災で恋人を失った。まる焦げで発見されたその死体が持っていたスマホのロック画面には、下着姿の謎の女性の画像が残されていた。突然、緒ノ帆の前に現れた美青年・露木は〈予現者〉を自称し、「僕が予現したあなたの恋人以外の過去三件の火災事故では、いずれも被害者の男性のスマホにこの女性の画像がありました」といい、事件と女性の謎を一緒に調べようと誘う。さらに、謎の女性の画像を手がかりに、メグミという名前と、彼女を探す消防士・海老野ホムラが見つかる。三人は、露木の〈予現〉する火災とメグミの手がかりを追う旅をはじめた──。

火刑列島 [ 森晶麿 ] 火刑列島 [ 森晶麿 ]
1,728円
楽天

 

黒猫:これはダイナミックな作品だったね。黒猫の衒学性と、まさかの『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』の疾走感のハイブリットという感じ。

作者:そうそう。楽しめながら書けた。一回ロードノベル書いてみたかったんだよね。三人と旅している気分で読んでいただけたら幸い。

黒猫:シライシユウコさんの装画がまたこの小説のダイナミックさやコミカルさをうまく表現してくれているね。

作者:シライシさんはいくつも装画の案を出してくださって、どれもよくって決めるときにかなり迷ったんだ。

黒猫:内容も今までの森晶麿のような、まったくべつのような、摩訶不思議な読み応えだった。

作者:ある意味、読者を選ぶ作品かもしれないけどね。

黒猫:さて、そして、、、七、八、はお休みで、九月に何か出るの?

作者:そうなのです。まだあまり詳しいことは言えないんだけどね。そういえば夏といえば恐竜映画だよね。

黒猫:フリが乱暴だよ。

作者:『ジュラシック・ワールド 炎の王国』はかなり盛況らしいよね。

黒猫:だから話題転換が不自然だってば。

作者:もしも、そんな恐竜が人間に擬態する能力をもって現代の東京に潜んでいたらこわいよなあ。

黒猫:妄想も急だな。何だ、恐竜小説でも出すのか?

作者:いや、まああまり詳しいことはまだ言えないんだけどね。恐竜…え、いま俺なんか言った?

黒猫:恐竜って言ったよ。

作者:恐竜なんて言ってないよ。PHP研究所って言ったんだよ。

黒猫:絶対言ってないだろ!

作者:まあ、児童書として出すので、ターゲットは小学生高学年から中学生なんだけど、個人的にそんなに手加減はしていないので、誰が読んでも楽しめるとは思います。PHP研究所から。

黒猫:そういえば、君は『ジュラシック・パーク』を観て映画監督を志した、と。

作者:そうそう。で、原作者のマイクル・クライトンが映画監督もやってたので小説家から映画監督になれるかもって思ったのが最初。だから恐竜は僕の原点でもあるし、恐竜小説をいつか書くっていうのは悲願でもあったからとても嬉しい。

黒猫:そうなんだな。

作者:今回は、恐竜の話ってことで男の子が食いつきそうだなってのもあって、イラストレーターさんは誰に依頼するのがいいんだろうって担当さんとも話し合って、恐竜大好きで東京の街並みがしっかり描けて、かわいい女の子が描ける方にお願いしています。ずっと一度お仕事をご一緒してみたかった方なので、この機会にお願いできてとても嬉しい。

黒猫:いろいろ君の「嬉しい」が重なった本になりそうだね。

作者:お愉しみに。ということで上半期のまとめは終了!

黒猫:それはいいが、君、黒猫シリーズの続編はどうなってるんだ?

作者:それか……いま書いてるよ。いったん書き上げて、寝かせて増量させて、まだしっくりこないところがあるからあともう一回りしたらT嬢に送ろうかな、と。

黒猫:なるほどいよいよか。

作者:いやいや、まだまだT嬢という最難関の関門が残ってるからね。まあ気長にお待ちください。大丈夫、いざ幕が開けたら二人が別れてたとか、べつの人と付き合ってたとかいうことはないはずだから。

黒猫:「はず」? 「はず」って何だ! どういうことだ!

作者:ではでは、今夜の活字ラジオはここまで。