コーヒーメーカーの空間 | 群衆コラム

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耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

コーヒーメーカーは便利である。

セットしてボタンを押せば、

自動的にコーヒーを作ってくれる。

ただし困ったところもあって、

機械のなかを掃除できない。



毎日コーヒーをいれているだけでも、

なにかしら汚れが溜まってくる。

でも汚れを取り除くことが困難であるためそのままになり、

気がつけば悲惨なことになっている。

よくこれで作ったコーヒーを飲んでましたね、

という状態になっている。



そのような経緯があって、

職場のコーヒーメーカーを捨てた。

7年間がんばってくれて、

もうくたくたにくたびれていた。



新しいコーヒーメーカーは買わないことになった。

いまは19円でドリップコーヒーが飲める。

お茶は職場で用意するけれど、

コーヒーは飲みたいひとが自分で用意してください。

そういうことになった。

させていただいた。


ところが、である。

コーヒーメーカーはなくなったけれど、

コーヒーはまだ残っていた。

ドリップして飲むタイプのものである。

誰か飲みたい人が

ドリッパーとフィルターをもってこればよいだろうと思っていたら、

偶然職場の戸棚からドリッパーとサーバーが出てきた。

じゃあフィルターくらい買おうじゃないかとなり、

めでたくコーヒーは職場の飲み物として残ったのである。



コーヒーはコーヒーメーカーじゃなくても作れるんですね

と言ったひとがいた。

かつてわたしも

電気釜でなければ米は炊けないと思っていた。

機械が減ると頭と手が活躍する。

コーヒーメーカーを捨てたのは、いい決断だった。

コーヒーメーカー1個分、頭の中にも空間ができた。