いや彼女がこっちを向くからさ
てっきり勘違いしたんだよね
二枚目でもないのに
彼女はぼくの方を見て
「ここ」って言って
ぼくの横のテーブルを選んだ
「お母さん、早く」
って言いながら、ピンクのジャンパーを脱いだ
そしてスパッて席に座ると、スマホのゲームをし出す
ぼくはそ知らぬ顔で、ご飯を食べるけど
内心は自分が、彼女にモテてうれしかった
だって他の席も空いてるんだからさ
お母さんもそのテーブルに静かに座る
彼女が何を考えているかは、分からない
二人ともゲームをしながら、何気ない母娘の会話があり
いや、言っておくけど
彼女は可愛いタイプではなくて
もちろん子どもらしさはあるけど、ブチャイクな方だ
ふと、その時に気づいた
なぜ、その子がその席を選んだのか
彼女が求めていたものは、ぼくではなかった
そう、何となく感じた
それがあっているのかどうかも分からないよ
ただ、ぼくがそう感じただけだからさ
この子には、父親がいないんだな
ぼくはふとそう思ったんだ
それは母親のちょっとしたためらいとかから
そして二人の出すちょっとした空気感
その子が、ぼくのほう(父親くらいの男性)を見たりするわけじゃないよ
でも、多分近くにいたいんだなって
帰り際にさえ、言葉をかわすことはない
なぜならここは東京砂漠
でも、その子は普通子どもがそうであるようには帰りたがらない
「帰る?」って母親が聞く
「もうちょっと。」と彼女は答える
なにかモジモジして、甘えたそうにしてる
そしてぼくの中の母性がわき上がる
いや、父性って言うのかな
あー彼女を抱きしめてあげたいな、って思う
これは変な欲求などとは違うよ
もしぼくに子どもがいたら、そうしてただろう親心
もちろん、そんな義務はとうに放棄してしまったけど
愛、愛をもっと与えるべきかもしれない
もうぼくは守られる存在ではなく
立派に独り立ちしているわけだし
か弱い、とてもか弱い
そんな子どもたち
天使たち
もちろん、ぼくは実際にはそんなことはしない
変質者になってしまうから
彼女たちの後ろ姿を見送る、黙って
ぼくは彼女の求めた愛に答えられない
そのもどかしさに対し、こうして詩をしたためる
それしかできる術がないのだから