このエントリは「川崎フロンターレ 開幕カウントダウンカレンダー」企画8日目として寄稿しています。


一昨日で沖縄での2次キャンプも終わり、選手たちが川崎に帰ってきました。ここからはいよいよ開幕に向けての最終調整になります。川崎はまだ寒いですので、特に筋肉系のトラブルを起こさないよう、万全の注意を払って準備を進めてもらいたいです。

さて、みなさんは練習見学に行かれたことがあるでしょうか。

川崎フロンターレの練習場「麻生グラウンド」は縦長な川崎市の最北、麻生区にあります。最寄駅は小田急多摩線の栗平駅。ここからさらに歩いて15分ほど掛かります。「歩いて15分」と単純に文字で書くと「武蔵中原駅から徒歩15分」の等々力陸上競技場と同じなのですが、駅からずっと平坦な道を行く等々力陸上競技場と違い、麻生グラウンドへは駅から一旦急坂を下り、そしてグラウンド脇の急坂を登らなければいけません。当然帰りも急坂を下って急坂を登ることになります。練習を見学するだけなのに私たちに坂路調教という試練を与えてくる川崎フロンターレはドSだと思います。

それが分かってて見学に行く私もドMであることを否定しません。

麻生グラウンド
川崎フロンターレの専用練習場「麻生グラウンド」。
選手たちは1年のうちのほとんどをこのグラウンドで過ごす。


さらに言うと、麻生グラウンドは遠いです。小田急沿線に住んでいればまだしも、私の家からだと電車の接続が悪いと1時間くらい掛かってしまいます。さらに南部の川崎駅近辺や市外からいらっしゃる場合は、もっと掛かるでしょう。

川崎市のイメージを他県の人に聞くと、大抵は京浜工業地帯を形成する工場群が真っ先に出て来ます。確かに湾岸部の工場群は小学校や中学校の地理の時間に習いますし、最近では工場夜景ツアーも人気が高いそうなのでそれも仕方ないことではあると思います。
しかし、麻生グラウンドはそんな工場群のイメージとは掛け離れた山の上にあります。そこには煙を吐く煙突はありませんし、ましてや海もありません。

そう言えば2013年の中断期間に行われたベトナムでの親善試合にオフィシャルツアーで行きました。そのツアーの最終日にオプションで「選手との懇親会」が設定されており、私も参加しました。同じテーブルになった中澤聡太選手(現セレッソ大阪)が「せっかくここまで来たんだから何でも聞いて下さい」って言ってくれたので、麻生グラウンドの印象を聞いてみました。そうしたら

「みんなよくあそこまで来るよね」

って感心していたんです。

中澤選手は川崎に移籍して来るまで柏、FC東京、ガンバ大阪でプロキャリアを積み重ねて来ました。FC東京の小平練習場と味の素スタジアムでは車でほぼ1本道の30分ほどしか離れていませんし、柏とガンバは練習場と試合会場が隣接しています。なのでフロンターレへの移籍が決まった際にも試合で等々力陸上競技場へ来た時のことを思い出し、陸上競技場のあるそこそこ広い緑地だったのであの辺りに練習場があると思っていたそうです。

「フロンターレは、なんであんなに離れてるんですかね」

私に聞かないでください(笑)
見学に来るファン・サポーターも大変だろうし、強化部以外のスタッフの机がある末長事務所とも離れてしまっているので、しょっちゅう顔を合わせる人以外、どんな人たちが何人くらい働いているか良く分からないって言っていました。

「みんな(末長事務所のスタッフも見学者も)1時間とか時間を掛けて来るでしょ。大変だよね。」


閑話休題。
では何故そこまでして練習を見学しに行くのか。理由は人それぞれだと思います。

麻生グラウンドは他のクラブの練習場に比べるとルールが緩く、また選手たちも出来るだけファンサービスを行うように指導されているみたいなので、特に分け隔てなくサインをもらったり写真を撮ったり、ある程度自由にできます。
※混雑時にはサインか写真どちらか一方に制限されますし、選手によっては治療等の予定でファンサービスが行えない場合もあります。

小林悠選手の日本代表ユニフォーム
昨年、小林悠選手が日本代表に初召集された際に買ったレプリカユニフォーム。
麻生グラウンドでサインを入れてもらいました。


ただ、いくら麻生グラウンドが自由だからと言っても間違えていけないのは、選手たちはサッカーをすることで給料をもらっているのであり、サッカーで良い結果を出すために練習をしているのであって、ファンサービスがメインでは無いということです。贔屓の引き倒しにならないよう、そこは気を付けていたいですね。


私は何で麻生グラウンドに行くのか。単純に練習している姿、練習内容が見たいというのが一番です。特に風間監督になってからの練習は基本技術 -いわゆる「止める蹴る」- を高いレベルまで向上させることを目的としているものが多く組まれています。これは私たち素人が見てもその技術の高さが分かりますし、またサッカーやフットサルをやっている人たちにとっても参考になるものが多いはずです。

練習内容は分かりやすいものから素人には意図が不明なもの(笑)まで、バラエティに富んでいます。
風間監督が就任した当初から毎日のようにやっていた「ゴール前で相手DFを外してパスをもらいシュートを打つ」という練習がありました。文字通りの練習ですが、選手全員で行うためDFが受け手になりシュートしたり、FWが出し手になったりします。そして毎日のようにその練習を続けることによって誰もが最後の場面での出し手になり得、DFでも流れの中で前線に上がった時に冷静にシュートまで持って行けるようになったのかな、と思いました。

それを強く思ったのが、2012年の第25節、ホーム・鹿島アントラーズ戦でした。
前半早々に2失点したフロンターレ。その2失点目の原因にもなってしまった實藤選手がすぐにゴールして1点を返すという展開でした。失点に責任を感じたとは言え、パス交換からゴール前まで上がって行き、そこでパスを受けても焦ることなくシュートした姿に、麻生グラウンドでずっとやっていたあの練習が重なって見えたのです。
(記録を確認したら、大島→實藤→中村→實藤→ゴール という流れでした)


選手たちが試合で見せている技術、戦術は麻生グラウンドで培われています。風間監督初陣の広島戦における伊藤宏樹選手(当時)のゴールも含め、普段の練習が試合に結び付く姿を見るのはなかなか楽しいです。

最初にも書きましたが麻生グラウンドはちょっと遠いです。毎日、毎週なんて行かれるわけがありません。ただ、選手たちが普段どのような練習をして、どのような準備をして試合に臨んでいるかを少しでも知ると、試合結果もまた少し違った見え方になるかもしれません。

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明日は@daichi0203さんの「あの助っ人外国人選手たちはいま(現役選手編)」です。