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ただのジョークだよ。
それを忘れないで。
僕たちはみんなすぐ死ぬんだから。
━リッキー・ジャーヴェイス━
『東洋経済』ONLINE 引用
長編ドキュメンタリー部門のプレゼンターとして舞台に立った有名コメディアンのクリス・ロックが、最前列に座っていた俳優ウィル・スミスの妻ジェイダ・スミスに脱毛症の為に短髪にしているのにもかかわらず、その髪型を揶揄して笑い者にした。
最初、ウィル・スミスもつまらないジョークにお愛想笑いをしていた。
しかし、妻ジェイダの苦痛に満ちた表情に気づき、ウィルの顔からは突如笑みはなくなった。
ウィルは立ち上がってロックに歩み寄り、平手打ちを食らわせ暴力を振るった。
祝典の場に相応しい行動を、ウィルには冷静に考えて実行して欲しかったと個人的には思う。
けれど、それよりあきれ果てるというか、開いた口が塞がらないのは、最初に笑えないジョークを飛ばしたクリス・ロックを擁護する人々が、アメリカ合衆国内に数多くいることだ。
彼らの言い分をL.A.在住の日本人ライターが解説してくれたのだが……。
なぜなのか。
ロックが言ったジョークは、悪趣味かもしれない。
しかし、強者が弱者を笑うものではない。
もしロックが白人だったなら、彼は大バッシングを受け、しばらく仕事を干されることになったはずである。
アメリカではここのところがとても重要だ。
黒人が白人をからかうジョークは問題ないが、逆は絶対にだめ。
ストレートがLGBTQをネタにするのもトラブルの元。
だが、権力と富がある人、たとえば政治家やセレブリティーは、思いきりネタにしてもいい。
いや、コメディアンからネタにされることを許容できないなら、政治家やセレブリティーになるなと言っていいくらいだ。
長寿番組「Saturday Night Live」などは、毎回、実在の政治家やセレブリティーのパロディーをやっている。
誰かが自分を演じてバカなことをやっているのを見て、不快に思う有名人もいるだろう。
しかし、そんなことで文句を言うのは「小さい」のである。
イギリス人コメディアンのリッキー・ジャーヴェイスも、本人がいる前で大物セレブを容赦なくネタにするのが大得意だ。
2020年のゴールデン・グローブ授賞式では、ジョー・ペシをベイビー・ヨーダと呼んだり、マーティン・スコセッシの身長をネタにしたりしている。
テレビに映る表情を見るかぎり、そういったジョークに抵抗を持ったセレブも明らかにいたが、ジャーヴェイスは「ただのジョークだよ。それを忘れないで。僕たちはみんなすぐ死ぬんだから」と言いつつ、遠慮なく続けた。
一読すると、なるほど、日本とアメリカの国民性の違いというか、精神性の違いなのかと、妙に納得してしまいがちになるのだが……。
そんな訳はないでしょう。
悪意を感じられるジョークはジョークなどではない。
もはや立派な言葉の暴力である。
倫理の問題であって、悪は悪なのである。
そこに強者も弱者もなければ、身分の上下も存在しない。
祝典の場で、わざと人を傷つけて笑いをとるほど浅ましいことはないし、その蛮行を容認することも鬼畜の所業と言っても言い過ぎではないだろう。
わたしはマイケルの母国であるアメリカ合衆国が好きだ。
わたしが親しくさせていただいている数人のアメリカ人はどの人も立派で、人間味溢れた尊敬すべき人たちである。
間違っても、悪趣味なジョークを飛ばしてニヤニヤしたりはしないように思う。
唐突なのだが、実は数年前から気にかかる事実があった。
その時には曖昧に言葉を濁してしまったが、そろそろ明らかにする時期に差し掛かってきたように感じる。
それは、ズバリ「洗脳」である。
洗脳されているのは、他ならぬアメリカ合衆国の国民である……。
MJJからお借りしています。
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