前回の滞在記はこちら↓


予定通り、旅の最終日は5時に起きた。
急いで支度をしてパッキングを終える。
部屋に忘れ物がないか念入りにチェックして準備完了。

窓から前日までが嘘のように暗い空が広がっているのが見える。街は風雨が吹き荒れていた。

フロントに向かうと、ホテルのスタッフさんたちが「えっ、何でもうチェックアウト!?」みたいな感じで一瞬焦っていた。
それでもすぐにチェックアウトの手続きをしてくれ、タクシーを呼んでくれた。
荷物を積み込むのも手伝ってくれ、タクシーに私たちを乗せ、見送ってくれる。
ありがとう。とても快適に過ごせました。

タクシーは台東駅へ。
台東の街は不気味に静かで(まだ朝早い事もあるが)、雨はますます強くなり、嫌な予感で胸がいっぱいになった。

↑午前5時45分台東駅。気温は27度。

駅に着くと、夫が前日に予約した乗車券を引き換えに行ってくれた。
私はそこでのん気にこんな写真を撮って待っていた…。

↑すごい湿気なのでカメラのレンズの表面ではなく内部が曇ってしまった。

夫はこちらへ戻って来ると、衝撃的な言葉を告げた。

「電車も止まったんやって。お金返金してくれたわ」

何なに!?それって帰れないって事!?
(いや、私はもう一泊してもいいけど…)

…と思った瞬間、駅の電灯が消えた。
営業終了。終わった…。

しかし、とりあえず花蓮まで行けば電車は動いているようなので、今度は前日に行った旧台東駅の前にあるバスターミナルに行く事にした。
確か台東から花蓮まで走ってるバスがあるはずだ。

…というわけで、またまたタクシーに乗りバスターミナルへ。
しかし、やはりと言うかバスターミナルも静まり返っていた。
同じくバスに乗りたい地元の人が数人うろうろしていたが、結局いつの間にか帰ってしまったようだった。
花蓮行きのバスはあと15分ほどで(予定通りなら)来るようだ。

だが、結局バスなんて来ない。
どうしよう、チョコはどうしているんだろう?もう一泊泊まるホテルを探さないと、と不安な気持ちになっていた時に1台のバスが現れた。
夫が確認しに行くと、どうやら台東市内を走る路線バスのようだった。
すると、そのバスがスーッとこちらに動いて来て、運転席側のドアが開き、運転手さんが「もう今日はバスは来ないから乗りなさい」と言ってくれる。
どうやら駅まで送ってくれるらしかったが、電車も動いていない。
しかし、このままここにいてももっと仕方がない。
運転手さんは私たちともう1人おじさんを乗せてバスを発車させた(まるで自家用車みたいだ)。

駅に着き、運賃を払おうと「いくらですか?」と訊くと「いいのいいの」と言って受け取ってくれなかった。
その優しさが疲れた身体と心に沁み入った。
泣きそうになりながら、「謝謝」と何回も言ってバスを降りて手を振った。

運転手さん、本当にありがとうございました。

夫は「花蓮までタクシーで行こう」と提案して来た。
確かにそれしか台北に帰れる手段はない。
しかし、問題はこの台風の最中花蓮まで行ってくれる運転手さんがいるだろうか…。
タクシー乗り場まで歩いて行くと、2人の運転手さんがいて、すぐに「どこまで行くの」と訊いてくれたので、「花蓮OK?」と言うと2人のうち1人の運転手さんが「いいよ。4時間かかるから4000元でもいい?」と言った。
幸い、台東ではあまりお金を使う事が無かったので、私たちの財布には4000元は残っている。
大きく頷くと、荷物を載せるためにトランクを開けてくれた。

台東から花蓮まで、タクシーの旅の始まりだ。

タクシーを走らせると、運転手さんは「トラ」さんだと自己紹介してくれた。
私たちも「トラさん!」と言って「わかりました」という意思表示をした(言葉が話せない情けなさよ…)。
トラさんはスマートフォンで台風の報道番組を見せてくれる。
雨は強く降っていたが、トラさんは台風に挑むようにハンドルを握り、少しでも早く花蓮に到着できるよう頑張ってくれた。
いくつも山を越えてトラさんのタクシーは走る。
途中、セブンイレブンでトイレ休憩とタバコ休憩(トラさんの)を挟んだ。
ずっと台風の中運転してくれているのだから、ゆっくり休憩して欲しいと思った。
そう伝えられない自分がもどかしい。


そして道中で「ここは!」と思う場所を通る。
本当は前日行こうと思っていた池上のサイクリングロード(伯朗大道)と書いた道の側を通ったのだ。
いや、あれは伯朗大道そのものじゃなくて、伯朗大道への看板だったのかも知れない。
まぁ、とにかく今回の旅で行きたかった場所にほんの少しだけ近付く事が出来た。

台東を抜け、花蓮に入ったと思われる辺りではこんな道を通った。


先日観た花蓮を舞台にした映画「パラダイス・ネクスト」に登場したような道だったので嬉しくなる。
トラさんは台東を出発してすぐの頃、「寝てていいからね」と言ってくれたが何だか悪いし、こんな経験も滅多にない事なので起きて車窓を眺めていた。
いや、車窓から見える風景に夢中になっていたのだった。

ようやく、花蓮の市街地に近いと思われる場所に出てきた。
花蓮駅もそう遠くないらしい。
最初「4時間かかる」と言われていた台東から花蓮への道のりだったが、時計を見ると何と3時間しか経っていなかった。
トラさんは一生懸命急いで運転してくれたのだ。
危ない?確かにそうかも知れない。
だけど、無茶な事をお願いしたのはこちらなのだ。
優しいトラさんには感謝の気持ちしかない。
本当にありがとうございました。
台東まで気をつけてゆっくり帰って欲しいと心から祈って、トラさんのタクシーを降りた。

花蓮駅に着くと、切符売り場にたくさんの人が並んでいるのが見えた。
私たちも慌てて最後尾に着く。
意外と早く順番が回って来て、ドキドキしながら「台北まで」と夫が乗車券を買うのを見守った。

結果はこう。
「宜蘭駅までは無座(席無し)で、宜蘭から台北までは指定席に座れます」との事だった。普悠瑪号だ。
疲れた身体に無座はご無体な…という感じだが、花蓮から宜蘭は1時間ほどだったので、実際には連結部で車窓からまたまた海などを眺めながらの楽しい道中となった。

出発まで数分しかなかったが、朝から何も食べてなかったので、駅弁を購入。
しかし前に並んでいたグループがもたついていて時間がかかり、ホームに降りた時は何と出発を知らせるベルが鳴り響いていた。
そして目の前でドアが閉まってしまった…。 
頭の中に「絶望」の文字が浮かんだが、夫がドアをノックすると開けてくれた。危機一髪。
本当にご迷惑おかけしてすみません。

↑車窓から見えた海。当然荒れている。

1時間耐え、ようやく宜蘭到着。
意気揚々と指定席を探して着席。
とにかくお腹が空いていたので、早速お弁当を開けた。

↑花蓮駅の限定弁当。これがまた美味い。

お弁当は1時間以上前に購入したのにまだ温かく(さすが冷えた弁当が嫌いな台湾人!)、具沢山である。
そして花蓮限定なだけあって、鹹肉や洛神花など原住民料理に出てくる食材が入っている。
野菜・肉・魚が入った盛りだくさんでめちゃくちゃ美味しい駅弁に感激した。

お弁当を食べ終えると、車窓からの風景はだんだん都会的なものに変わって行った。
電車は地下に潜り、松山駅を経て、とうとう台北駅に到着した。

何とか台北まで戻って来られた…。