みなさん、こんにちは!
本日の「きっかわみきの物語」部分公開は
「金色(きん)の耳」の「大鷹と小魚と沼の主」の章からです。
では早速・・・・
その日は何かが違っていました。
それは日の光が沼の水鏡に、まぶしく反射している日のことでした。
<花>は爽やかな日の光の中、天空を見上げたり、
水鏡の上をじっと見つめたりしていました。
上空には、大鷹が空を舞い、沼の水鏡の表面の下すれすれには、小魚が泳いでおりました。
<花>は交互に大鷹と小魚をじっと見入ると、目を閉じて、
それらがたてる音にじっと耳を澄ませたのでした。
<花>は、全身が耳になったように感じました。
そして、<花>には空を飛ぶ大鷹の気配が感じられ、
大鷹が空を雄大に舞いながら話しているのがはっきりと
聞こえてきたのでした。
「空を飛んでいる僕にとっては、空は、僕のいのち、
僕のすべて。
沼も山も稲穂も人間も、すべてを下界に見て大空を舞うことが、どれほど気持ちがいいことか。舞うって、何てすばらしいのだろう。
飛ぶって、何てすばらしいのだろう。
そして生きているって、何てすばらしいのだろう」
目を閉じたままいると、水鏡の表面の下すれすれの所にいる小魚の気配も感じられ、小魚が泳ぎながら話しているのも
はっきりと聞こえてきました。
「水の中を泳いでいる私にとっては、水は、私のいのち、
私のすべて。私はこの水の中を泳いでいる時、
どれほど気持ちのいいことか。
泳ぐって、何てすばらしいのだろう。
生きているって、何てすばらしいのだろう」
そして全身が耳のようになって、大鷹と小魚の喜びに満ちた声を聞いた<花>には、沼の主の声までもがはっきりと感じられたのです。
「水を離れた魚はおらず、空を離れた鳥はいないように、
魚にとって水は魚のいのち、鳥にとって空は鳥のいのち。
いまあなたが心の内に聞かれたとおりなのです。
そしてあなたはこれからもっともっといろいろなものの声無き声を聴いていくことでしょう。
そしてやがて深く得心する日がやってきましょうぞ。
あなたのいるこの星があなたのいのちそのもの、
この宇宙があなたのいのちそのものである、ということを」
<花>は思いました。
「この言葉・・・遠い昔どこかで聞いたような、
なんだか懐かしい感じ。これって、まるで私が遠い昔に知っていたことを、思い出したような・・・」
さて、みなさん、この一節、いかがだったでしょうか?
どのようにお感じになられたでしょうか?
水を離れた魚はおらず、空を離れた鳥はいないように、
魚にとって水は魚のいのち、鳥にとって空は鳥のいのち
これは仏教のとある経典の中に出てくる、有名な言葉ですが、
私にとっては、繰り返すごとに味わい深い言葉であり、なるほど誠にそのとおりだなあといつもしみじみと感じ入る言葉でもあります。
この物語「金色(きん)の耳」は、「私って何?」、「いのちって何?」をテーマにしたお話ですが、今日部分公開させて頂いた部分は、
物語の中でもラストに近い箇所です。
みなさんは「あなたって何?」と聞かれれば、何とお答えになられるでしょうか?
どうぞ今日は
あなたのいるこの星があなたのいのちそのもの、
この宇宙があなたのいのちそのもの
という言葉を思い出しながら、
私のいるこの星が私のいのちそのもの、
この宇宙が私のいのちそのもの
と置き換えて、つぶやいてみて下さいね。
すべてのものがつながり合っていることが改めて思い起こせる
一日となりますように・・・☆
書籍「金色(きん)の耳」(単行本・電子書籍両方あります)
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きっかわみきの物語
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