私は個人的にはMMTが議論を呼び起こしたことに非常に感謝しています。

 

というのも以前(2003年1月)にモンスター村の経済学を出版しましたが、

これは、世界から隔離されたモンスター村でモンスター10人が経済活動をしており、

そこへ元中央銀行総裁のミスターXがその異次元空間に行き、ゴールドを元手に

紙幣を発行、やがてゴールドバブルが発生し弾け、大不況に陥るという、当時の

日本のバブルの縮小版モデル作りバブル崩壊後の経済復興をテーマに書いたものです。

 

この時に、一番シンプルで強力な効果があるのは政府紙幣を発行し、負債を穴埋めする

というものだと気づきました。

(皆さんもモデルを作ってみれば分かりますが、あのような特殊な環境では、それが一番の

方法なのです)

何しろミスターXは高度な紙幣印刷機をモンスター村に持ち込んでましたので・・・(笑い)

 

ただ、その時に日本で政府紙幣などという話をすれば、奇人変人扱いされるのがオチで日本

にそれを受け入れる土壌はありませんでした。

そのため何とか復興策をひねるのに苦労をしました。

 

そこへ近年MMTという理論が世間をにぎわせやっと政府紙幣ではないが、それと同等の意味を持つ

条件付きで財政赤字を気にせず中央銀行は紙幣を発行できるという理論がでてきて、少なくとも議論

できるようになったのです。

MMTはまだ粗削りで修正が必要なのは前回記述した通りです。

 

そういった意味で、ありがたいと感じている次第です。

 

以下のモデルで考えてみて下さい。

 

従業員100人の会社があります。

従業員の平均年収は500万円です。

そこにはワンマン社長が一人いて彼の資産は1,000億円ほどです。

彼は、ギャンブルが好きで社員一人一人とポーカーをします。

彼は資金に物を言わせ全員と勝負し一人当たり1億円勝ちました。

従業員100人はそれぞれ1億円の借金をこさえ、給与支給日と賞与支給日に

限度額いっぱい取り上げられます。

日本では違法ですが、これが合法的であったらどうでしょう?

バブル時は合法的に強大利益と巨大損失が発生したのです。

 

これが閉じられた社会だったらどうでしょう?

100人が経済に与える影響はどうでしょうか?

最低限の支出しかできませんよね!

大不況間違いないです。

大げさに言えば合法的にこのようなことが日本各地で発生したわけです。

ある人は、多額の借金をして土地や株を買いまくり、ある人は高額で売り抜け

ということが行われたわけです。

例えば一歌手の千昌夫氏はバブル崩壊時借金が3千億円以上ありました。

 

―抜粋ー

25歳にして資産家になった千昌夫は「アベインターナショナル」を設立し、本格的に不動産業を拡大した。
1980年代には不動産業に専念するため歌手を休業し、土地を買いまくった。

千昌夫の「アベインターナショナル」も長銀から1000億円以上を借りて、最盛期には資産3500億円だったとされる。
千昌夫の個人債務は3000億円に膨れ上がったが、1000億円に棒引きされ、民事再生法で1億5,000万円まで棒引きされた。

ー抜粋終わりー

 

結局、千昌夫氏の個人的には3000億円近い借金が棒引きされ、それはつまり銀行の借金となり、これも多くは公的資金が投入された。

その分国債を発行したわけです。

このようなことがつもり積もって、わけですが、税金で返すのですか?

そのままでいいんじゃないですか?ということです。買ったと言ことは高値で売った人や企業がいたわけで、先見の目があったと

いう見方もできますが、あぶく銭を稼いだという見方もできます。

しかし合法で悪いことをしているわけではありませんので、チャラにはできません。

 

さて、どうすれば経済活動を元に戻せますか?

警察が違法でギャンブルの借金は認めませんと言えば元に戻りますね?

合法的に取引が行われた資本主義社会ではこうはなりません。

返済不可能な借金を抱えたものは破産手続き、返済可能であれば一生返済。

銀行は公的資金を注入して救済。

バブルの後始末でこのようなことが全国で起きました。

国が強制介入をして合法取引であったものも、元に戻せば経済活動も元に戻る

わけですが、法治国家とは呼べなくなります。

 

従業員100人のギャンブルでの負債モデルですが、これが合法な日本での商取引の

結果の縮図として考えた場合、経済正常化のためには、社長から100憶円とって、従業員に

返すわけにはいきません。

どうするかというと100億円の国債を発行して、従業員一人一人に分配し、返さなくていいですよ

とすれば、終わりなのですが・・・

税金であとで一人1億円×100人=100憶円返しなさいとやると振出しに戻ってしまします。

結局借金の返済どころが社長から国に代わっただけで解決にならないのです。

あなた方も悪いんだから一人100万円払いなさい。社長は金持ちだから1千万円払いなさい。

あとは国が面倒見ますよというのが、落としどころじゃないでしょうか?

でないと永遠に終わりません。

よって1億1千万は回収できますが、98憶9千万円は半永久的に塩漬けです。

これによるバブルやハイパーインフレは発生しません。

従業員は概ね元に戻り、社長は元々1,000億円の資産が1,100億円になっただけですので、

もちろん、こうなる前からでもこうなった後からでも社長がお金を使いまくれば、高インフレになり

社長の1,000億円の資産は大きく棄損し、それ以降は働いて物を生産しサービスを提供するものが

結局強く徳であるという世界に戻るだけです。社長が困るだけで従業員はさほど困りません。