「大統領就任初日にTPP離脱通告する」と表明したトランプ氏。

 

長年、TPP反対を訴え続け、『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』(サイゾー)を刊行した、元農水大臣で弁護士の山田正彦氏は、政府の姿勢について次のように話す。

 

「結局は安倍政権の責任逃れにすぎないのではないでしょうか? 安倍政権はこれまでTPPを『アベノミクスにおける成長戦略の要』と位置づけてきました。しかしトランプ大統領の誕生で、その失敗は確実になったといっていい。

 

少し前までは、オバマ大統領が『レームダック』(選挙後から任期切れまでの期間)のタイミングで批准してしまう可能性もありましたが、今やそれもなくなりました。

 

それでも政府は、自分たちが掲げてきた政策の失敗を認めたくないのでしょう。そこで、『日本としてはTPP発効に向けて全力を尽くしましたがアメリカの事情でやむをえず…』という形にするための単なる“言い訳パフォーマンス”とでも考えない限り、今の政府の動きはとうてい理解できないのです」

 

その一方で、衆議院のTPP特別委員会に参考人としても出席した弁護士の岩月浩二氏は、政府がTPP批准を急ぐ理由のひとつとして、「TPP対策予算にも注目すべき」と指摘する。

「政府は昨年10月の大筋合意直後から、TPP対策として農林水産関連の対策予算を組み、平成28年度には5000億円規模に膨れ上がっています。これは端的に言えば、与党の農家向けの選挙対策費です」

 

要するに「TPP対策」という名の下、あちこちにお金がバラまかれるのだ。

 

「当然、この予算は肝心のTPPが消滅してしまったら予算を組む理由がなくなってしまいます。ですから、政府は何がなんでもTPPが消滅したという事実を認めるわけにはいきません。多額の対策費はすでに『TPP利権』になっているのです。

 

この『利権』に関わっている人たちにとっては、TPPの将来よりも、とにかく『年内に批准させる』ことのほうが重要なのかもしれません」(岩月氏)

 

では、トランプ大統領の誕生でTPPは本当に「終わった」のか? しかし取材を進めると、事態はそう単純でないことが見えてきた。

 

このまま消滅か? それとも再交渉はあるのか? 発売中のでは、『週刊プレイボーイ』49号では、トランプ大統領が狙う次の一手を検証する。

 

(取材・文/川喜田 研 撮影/岡倉禎志[山田氏])