本日より9月・長月となりました
月初め・朝いち番の仕事は、先ず2017年のカレンダーから8月を切り離すことから始めましょう
いつものカレンダーならビリビリと無粋な音を立てるのですが、日も射さず、ただただ蒸し暑いだけだった8月は、次に控えし暦・秋を思い、心なしか軽やかでパリパリと香ばしい音を立て、9月にバトンタッチ
捲り終えた暦からは涼し気な風が吹いた気がして、季節の移ろいを感じます
昨年の9月1日は鎌倉の友だち4人で越中八尾おわら風の盆を観に富山県を旅しておりました
1日から3日まで八尾の町は哀愁溢れる胡弓の響きが流れることと思います
あれから1年の歳月が経ったのだなぁ~
それにしても暑くて、汗だくだくの3日間であったわぃ
一緒に行った友だち・みんなが揃って元気に過ごしていることが何より幸せなことと、懐かしく思い出しています
昨日からあれほど声を競うように鳴いていた蝉がぴたりと鳴くのを止めてしまい、いつの間にか日が落ちる前からコオロギが声を潜めながら鳴き始めています
どこへ行くあてもなくなってしまったのか…どこへ飛んで行ってみたとて、ひとりぽっちになってしまったミンミンゼミは、人にお尻を見せながらも12階の壁にとまり仲間の声を聞き漏らすまいと必死の様子が見てとれます
立秋が過ぎ、処暑が巡り来て…いよいよ夏の昆虫たちの季節も終盤を迎え、秋の虫との顔合わせが始まるのでしょう
こちらはアブラゼミ…蝉は自動車が走る道路だろうと、人の行き交う歩道だろうと「もうダメだ!」と思った瞬間、己の死に場所など考えもせずに、いきなり空から落ちてきて腹を見せながら生き倒れている姿をよく目にします
せめて足で踏まれるよりは土のあるところに移してやろうなどと迂闊に手を出そうものなら「ギャッ」と騒ぎ出し、心の臓が飛び出すかと思うくらいビックリさせられてしまいます
このアブラゼミは道端にひっくり返っていたのですが、翅もきれいなら6本の脚もみな欠けることなく付いています
蝉・1匹…無駄なものが何ひとつな精巧な作りに出るのは感嘆のため息のみ
宝石を散りばめたルネ・ラリックのようにはいきませんが、昆虫をモチーフにしたブローチを真似て胸元に飾ってみようかしら
羽化したままの姿で寿命を迎えることは、人も虫だとて幸運と喜ばねばならぬでしょう
様子を見ながら街路樹の下に移そうと手に取ったなら、その腹には何匹かの小さな蟻がしがみ付いておりました
「あぁ…こうして食物連鎖して行くのだな」
そうと解ってはいましたが、傷ひとつないアブラゼミの亡骸を亡き主人に見せたくて、ちょっと拝借してきました
「がんに罹らなかったら、あなたも傷ひとつない体で逝ったのにね」
主人は大腸がんで大腸20センチ摘出、肺がんで右肺・一葉摘出、浸潤性膀胱がんで膀胱全摘、浸潤していた横隔膜・部分摘出、転移が予想される前立腺・摘出と「お腹の中がスカスカになっちった!」と主人が嘆くほど手術で持って行かれてしまいました
やっと過ごしやすくなった季節の中で、今・この時も名もなき人たちが病と闘っていることと思います。
尽きるまで全うするのが「命」だと、言葉にせずとも主人が教えてくれて逝ったのだと手の平にのる蝉を抱きつつ改めて思い至りました。
『啼きながら蟻にひかるゝ秋の蝉』
(なきながらありにひかるるあきのせみ)
正岡子規