ユリ科の『杜鵑草(ほととぎす)』は、陽の光をあまり好まぬ花と言われております太陽

なるほど…そう言われてみますと、確かに物の陰や木の根元でまるでかくれんぼをするかのようにして花を咲かせていますバラ

ユリ科のユリ自身はスッと空に向かって上へ上へと茎を延ばし、実に向上心のある花であると、わたくし・密かに感心を致しているのですが、遠い親戚すじにあたる「杜鵑草」は、蕾を持つ茎を横へ横へと地面を這うようにして延ばし、人の足元で上目遣いするような格好で花を咲かせます目

今朝…脇に伸びた枝をバサバサと切られ、選定された街路樹の下で、朝日に輝く杜鵑草の蕾を見付けました目

産毛がキラキラと反射して「きれいはぁと」と、わたくし思わず声に出してしまったほどです!

それが聞こえたのでしょうか・・・「杜鵑草」の蕾はポッと桃色に染め、少し身をよじるようにして恥じらいを見せておりましたかお

こうして花開いた杜鵑草を眺めてみますと、その花びらに絞り染めのようにある斑点は鳥の杜鵑を思い起こさせます…杜鵑鳥でありながら、その鳩胸にポツポツと水玉模様が浮き出ています水玉

こちらは木の陰にひっそり・こっそり…花を咲かせておりましたぷぷッ(笑)

ひっそり・こっそりで思い出しましたが、東京の街でも聞くことが出来る秋の虫の代表格と言いますと、やはり蟋蟀(こおろぎ)となりましょうか?

街の喧騒が静まるころ「リリィリ…」と地べたから遠慮がちに蟋蟀が鳴き始めます流れ星

二十四節気「寒露」の末候『蟋蟀在戸(しつそつこにあり)』が巡って来ておりますコオロギ

その昔、鳴く虫を総じて「蟋蟀」と称していたと聞きますが、この中にはキリギリスもいれば、鈴虫、松虫、邯鄲(かんたん)などの虫も入っていたそうです虫の声

母の姉・わたくしの伯母は東京神田・末広町に住んでいたのですが、その伯母の言うことを鵜呑みに致しますと…ヤレヤレ・・・

「虫売りてぇのは神田が事の始まりさね」

と、なります。

「それって、いつ頃の話?」

「そうさねぇ~大した前でもないね~、せいぜいが200年ぐらいかね」

威張って話していましたが、実際…この伯母は竹でこさえた虫かごをぶら下げては、よく我が家を訪ねて来ていました。

「姉さん、今度はどんな虫?」

「どんな虫ってサ、虫を前にして失礼なことをおお言いでないよ!鳴き声を聞いてごらんな」

「…鳴かないねぇ」

「鳴かないねぇ…」

軒下に吊るした虫かごを見上げ、姉妹・ふたり渋茶を飲んでいたものでしたお茶

わたくしが子どもの頃ですから、昭和30年代の昔話になりますが、夏の縁日に虫売りの露店が立ちまして、下町の子どもたちは「ギッチョ売りのおぃちゃん」と呼んで、店先に陣取って虫の鳴き声を聞き比べておりましたコオロギキリギリス鈴虫

今にして思えば…深川あたりの子らは、ずい分と風流な真似をしていたものじゃござんせんか?

大人たちもなかなかの耳を持っていたようで、「ギス籠」を覗きながら…

「人間様が覗いてるってぇのに、よく鳴いてらぁ。こりゃぁ、度胸があっていい虫だ!」

「羽の震わせ方が粋じゃねぇか!これじゃメスもイチコロだな!」

…などと、テンデンバラバラ好き勝手なことを申しておりました。

下町っ子は「耳年増(みみどしま)とよく言われたものですが、育てる親がこうでありますから

耳だけがマセて来るのも致し方ありません!

 

「おみえ、轡虫(くつわむし)ってのはね、ガチャガチャと鳴き声が喧しいんだよ。異名をね…異名って何って…お前、異名を知らないのかい?梅ちゃん(母の名前)、おまえさんとこは子どもに教育ってもんを施してんのかい?異名ってのを知らないよ、この子は!あきちゃん(我が情けない兄の名前・明)は知ってるだろね?」

「別の名前ってかサ、呼び方があるってことでしょ?」

8つも違えば知って当然です!

教育を施されなかった・わたくしは、こうして少しづつ捻くれていったのですい~ムカっ

「で・サ、この轡虫ね、管巻き(クダマキ)とも呼ばれてサ、上等でないお妾さんのことを指して言ったりするんだよ」

「へぇ~なんで?」

「なんで?って、あきちゃん、お妾って聞いてお前こそ、なんでそこでグッと身を乗り出してくるんだよ!よし!おせぇてやるから、もちっと傍へおいでな…いいかい?よく出来たお妾さんはだね、とにかく何があろうがガチャガチャと余計なことは口にしないもんだ。自分の立場をよぉ~く知ってるからね、相手の家庭に入り込まぬよう、そこは弁えてんだ!ところがだ、上等でない妾は、『お』なんぞは付けない!これはね、金を寄越せだの、奥さんと別れろだの、温泉に連れて行けだのってサ、とにかくガチャガチャと自分の要求だけをまくし立てるんだね。飲めば管を巻くしサ、男も手を焼くわけだ…」

「でもサ、その手を焼くところが、また、たまんないんだろ?」

バッチィ~ンパンチ!」…伯母さんが兄を叩いた音ですビックリマーク

「梅ちゃん!何んだい、この子は?明!お前はね、女でコケるよ!」

わたくしは…この時、成るんならよく出来たお妾さんになろうと心に決め、お兄ちゃんのような情けない男に引っかからぬよう用心をしようと固く己に誓ったのでありました…汗

以上…轡虫の異名についてのお話でした土下座