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コンペから生まれた住宅ー1/3 : my work

建築設計の依頼には、コンペティーション(競技設計)から決まることも。


以前、コンペ応募時の心境を書いたことがありました。


http://ameblo.jp/michay/entry-10099396882.html


その時の住宅を含め、近年コンペを経て完成した作品を、

3作ほど、ご紹介させていただきます。

今回は、上記の記事に書きました応募案が、実ったものです。



天気雨


敷地は東京の東部、駅周辺の商店が途切れた、住宅地にあります。


ゆったりとした土地に、お嬢様ひとりの3人家族。

ご夫婦は、ともにお仕事をもつ、80年代の言葉ではヤッピーのカップル。


お忙しい生活に、車2台は必需品でした。


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存分にピアノを弾きたい・・・というご要望で、木造のお住まいを、

鉄筋コンクリートに住みかえることに。


左のくぼみが、玄関ポーチです。




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玄関先にまわると、車庫が見えます。

自転車・バイクも考え、軒下は十分に確保。


玄関戸は、やはり、木でつくりました。


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コンペへの応募は、30案ほど。


要望や敷地条件が記された要綱にしたがって、案を練ります。

この段階では、まだクライアントにはお会いできません。



3枚の図面に、アイデアと思いを込めて、2週間で提出。

あまりに短い期間のため、最後の2-3日は、事務所全員で仕上げます。


締め切りの17時に、いつも提出は早くて5分前。


無事出せました!


若いスタッフからの電話に、ホッとします。



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こんな感じの図面を手描きでまとめ、色をつけて提出。


クライアントが4・5案を選び、面談へと進みます。



1週間ほどで、プレゼンテーション用の模型を作り、

ひとり50分の持ち時間でアピール。


ネクタイとワイシャツのバランスも考えながら、面談へ臨みます。

洋服の配色をどうするかは、要綱からお好みを読み取るしかありません。



ご縁があって、設計者に選んでいただきました。



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玄関ホールです。


ご要望の、鍵や印鑑を入れる引き出しを左手に設けます。

靴類はすべて、右手のドアをはいって、シューズクロークへ。


床は、天然の大理石を敷きました。



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3階建てなので、1-2階をつなぐ吹き抜けを。


2階のリビングから、1階の様子がうかがえるように。



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家具が入る前の、リビングです。


オープンキッチンも入れて、およそ30畳。
正面は、南向きの窓。



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リビングに続く、サンルーム。


夏の日差しよけに、電動の傾斜ブラインドをつけました。


ステンレスパイプは・・・・・そうです、物干しに使います。



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ゲスト用の和室は、1階に。



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そして、1階のもうひと部屋がピアノ室。


はじめから白いピアノと決まっていましたので、

ピンクの壁と、パープルのカーテンに。



サッシュは防音タイプ、2重の厚いガラスで、遮音します。

床を下げ、天井をあげて、音を響かせました。





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南の庭からの外観。



完成した時の気分は、
フルマラソンをゴールした感覚に似ていました。


奥さまにピアノを弾いていただき、ホッとしたのが、今年の初めです。

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最近観た映画から・・・・7

インビクタス/負けざる者たち : INVICTUS


クりント・イーストウッドは、いったい何歳だ!

と、いいたくなるような力強い作品でした。


南アフリカの美しい風景をバックに、戸惑いながら癒合していく、

黒人と白人を粘り強く描いています。


弱小ラグビーチームがワールドカップを制するまでの道のりを、

ネルソン・マンデラの黒人大統領としての戦いのシンボルとして、

この映画は語りかけます。


専門家の予想では、準決勝どまりです


専門家の予想では、私はまだ刑務所にいるよ


モーガンフリーマンは、気のきいたセリフを連発します。


・・・松浦美奈さんの字幕は、このセリフが、予告篇とは違い、

「専門家の予想などくそくらえ」 みたいな意訳で残念でした。


マンデラはラグビーチームのキャプテンをお茶に招待し、

パワーを注ぎ込みます。


君の仕事は、厳しいものなんだね


大統領と同じです


私は執務中にタックルを受けたりはしないよ


キャプテンのマット・デイモンは、決勝戦のチケットを、4枚確保します。

両親と妻と、そして黒人のメイドのために。


TVがSONY、車がBMW750i なのは、スポンサーなのかな・・・

などと思いながらも、思わず涙するほど、感動した映画です。



アバター : AVATAR


ジェームス・キャメロン監督は、大変なテクニシャンだとは思いますが、

この作品、私はあまり感動しませんでした。


タイタニックもそうでしたが、敵側の人物像が魅力的ではないのですね。

単純に悪い奴だったり、ずるい輩では、物足りない。


スターウォーズのダースベーダーのような心惹かれるキャラクターを、

設定してくれれば、どちらの作品ももっと輝いたのでは?


3Dについてはなんと申し上げてよろしいのやら・・・



私個人のことかもしれませんが、2次元の映像でも、頭の中で、

3次元に構成しなおしているのですね。

だから、3Dは、かえって空間が歪んでみえて、邪魔でした。



これもアナログ人間の特徴でしょうか?





ハート・ロッカー : THE HURT LOCKER


バグダッドでの爆弾処理兵のお話。


今年のアカデミー賞作品賞をアバターと争ったとのことですが、

どうみてもこの作品の方がオスカーにふさわしいと思います。


ジェームズ・キャメロンはこんなに素晴らしい女性と結婚していたのに、

彼女からはあまり多くを学ばなかったようで。


主人公が、1歳くらいの息子に話します。



子供のころは大好きなものがたくさんあるけど、大きくなると少なくなって、

一つか二つになってしまう。

パパには、一つだけだ。


もちろん、この大好きなものは、妻からは理解されません。



手づくりのFMチューナーも、No.13のサッカーチームのユニフォームも

あっという間に捨てられてしまった、私の新婚時代が懐かしいです。


こんな男心を見事に描いた、キャスリン・ビグローは、
監督賞を獲るのに、十分な力量があったということでしょう。




シャーロック・ホームズ : SHERLOCK HOLMES


誰でも知っている名探偵ですが、とても新鮮な描き方をしています。


007並みのアクションと、テンポの早い謎とき。

もう一回見たい衝動に駆られます。


もちろん、敵役の何とか卿も魅力的。

シャーロック・ホームズの相手にふさわしい頭脳と犯罪スケールですね。


あなたの職業は家庭教師、生徒は8歳。

婚約して外国へ行っていたが、指輪が安物で、結婚はやめ・・・


例のごとく、ホームズは、会った人をひとめで推察しますが、

多少間違えるところがいいですね。



NHKで放送されていた原作に忠実なフィルムも大好きです。

こちらはホームズをジェレミー・ブレットが演じていました。


マイ・フェア・レディで魅力的な若者、フレディ役をしていたハンサムな俳優で、

ON THE STREET WHERE YOU LIVE

という名曲を、オードリー・ヘップバーンに捧げて歌う人です。


この街はよく歩いているけど、足は歩道を踏みしめていた


でも、今は何階もの高さに浮かんでいるようだ


ここに君が住んでいると知ってから・・・


などという、ベッタリ甘い歌です。


ハンサムな俳優といえば、ワトソン役はジュード・ロウ。
なかなか似合っていました。


 mic




絶滅寸前のスタイル / 帝冠様式の建築


天気雨


東京都文京区にある、「拓殖大学国際教育会館」


昭和初期に、中国文化の研究所として建てられました。


ビルの上に、和風の屋根が被った、個性的な外観。

このスタイルは、「帝冠様式」 と呼ばれています。




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設計は東京大学のキャンパスに数多くの作品を残す、内田祥三(うちだよしかず)。


東大総長も務めた、文化勲章ウィナーです。

代表作の安田講堂は、ご存知の方も多いのでは。


東方文化学院~外務省研修所 として使われてきましたが、

前世紀の末に研修所が移転。


民間に売却されることに。


払い下げについては、有識者の保存運動も動き出し、結局、

ご近所の拓殖大学が引きうけてくれました。




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正面の門は、お寺か武家屋敷のイメージですね。




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扉の丸窓には、16方向へ飛び出す透かし彫り然とした模様が。


近くで観ると、とても美しい細工です。


東京大学のキャンパスは、多少大味な印象を受けますが、

内田先生、このような繊細なデザインンもなさっていたのですね。



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門をくぐると車寄せの向こうに、7つのアーチが連続していました。


国籍不明のふしぎな建物にふさわしい、アプローチです。



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玄関に入ると、正面に階段が迎えてくれます。


大理石でできた重厚な階段ですが、踊り場にはトイレのドアが。

これは、当初からあったのか、改装でできたのか、わかりません。


学生の設計課題でしたら、トイレのレイアウトで、かなり減点されますね。



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手すりにも屋根が被っています。


外観デザインの反復でしょう。

これも国籍不明の気分を盛り立ててくれます。



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戦前の建築には、階段室の空間が魅力的なものが多いですね。


最近の階段室は、建築基準法からくる防火戸で囲まれた場所なので、

避難のとき以外は使いたくない、無味乾燥なデザインが横行。




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帝冠様式の圧巻は、屋根の重なりあい。


懐かしさがこみあげてきますね。

緑青(りょくしょう)をふいた銅製の樋も、リズミカルに走っています。


緑青は、毒といわれていましたが、誤解のようで。


皇居の新宮殿建設の際、屋根の緑青が、お堀の鯉に害があるのではと、

陛下が心配なされたそうです。

それをきいて、やさしい方々だなーと、思いました。




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この建築は、現在、拓殖大学の日本語講座などに使われています。


留学生たちは、何とも素敵な空間で学んでいるようで。


国威発揚というより、

日本のイメージアップに貢献しているのが、なによりです。




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教室の窓から、軒先を越えて小石川の台地が見えます。


下に見えるのは、自動販売機などが置いてある学生ホール。

プレファブのアネックスですね。


この棟は、フラットルーフの国際様式。



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帝冠様式建築といえば、九段会館が有名です。

元の、軍人会館ですね。


他には、上野の国立博物館や、各地の公共建築に見られます。


日本の伝統様式を代表するスタイルとして、戦前の一時期流行しました。

戦後、社会の変化と共に、硝煙のにおいのする建築として、

否定されることが多かったようで。


その社会が建築を作る・・・建築家林昌二氏の言葉ですが、

スタイルの、はやりすたりを横目で眺めながら、さまざまな思いがわきあがります。


戦前の一時期に咲いた薄幸の帝冠様式建築。

さて、いつまで現役で活躍してくれるのでしょうか?


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