理沙、ベッドの中で…。中々眠れない。
枕元に置いてあるスマホを持って、そして鼻水をグスリと…。
スマホの画面を見て。すると、自然に受話器のマークを。
そして、指でゆっくりとスワイプ。
「おぃ、まだ起きてるか~~。」
つぶやきながら指でトン。耳には付けずに、そのままの状態で。
画面は、発信から通話。
スマホから、
「もしもし…???…なんだよ。」
理沙、
「将輝~~。」
将輝、
「うん…???」
また少し目が潤みだす理沙。今度はスマホを耳に、グスリとさせて、
「な、なんでもない。」
スマホから、
「はぁ~~???…なんでもなくって、電話してくんのかよ。」
けれども、
「…って、おま…、もしかして…、泣いてる…???」
理沙、鼻をグスリと…、
「うるさいよ。」
数秒の沈黙。
将輝、
「何…???どうした…???」
理沙、スマホに、
「犯人…、見つかった。」
その声に将輝、
「えっ…???」
「私を轢いた、轢き逃げ犯人、見つかった。」
「おっと~~~。来たか~~。」
理沙、小さな声で、
「でも。」
また涙が出てきて、
「でもね…。」
将輝、
「うん…???」
涙が目尻を伝う。
「私を轢いた車の運転していた人。女の人。」
「女の人…???」
「その女の人、事故、起こした後、事故を起こしたショックで、うつ病になったんだって。」
瞬間、将輝、
「えっ…???」
「だから~~。」
声が裏返っている。涙声で理沙、
「事故の事、記憶にない。」
「うそ…。」
「子供もいるんだって。小学生、2人。」
「え~~~~。」
将輝、そして、
「理沙。理沙、それって、おじさんとおばさんから…???」
理沙、
「うん。さっき聞いた。はぁ~~。」
天井を見ながら。
「おま、どうすんだよ。それ…???…ってか、その人、うつ病になって、子供たち。」
「うん。…だから…、私…。」
「なぁ~~理沙~~。」
スマホに理沙、
「うん…???」
「記憶にないって…???」
「うん。子供たちの事も、分からなくなった。」
数秒、沈黙。
理沙、
「将輝~~。」
返事がない。
そしてまた、
「将輝~~。」
すると…、
「理沙さぁ~~。俺さぁ~~。」
そんな将輝に理沙、
「うん…???」
「俺さぁ。」
「うん。」
「かあさん、いないじゃん。」
その声に理沙、
「うん。」
「子供たち、かわいそうだよ。」
「うん。」
「俺さぁ。ふたりも死んだ人の前に。…でも、その人、死んでないんだろ。」
理沙、また、
「うん。」
「だったらさぁ。守ってやろうぜ。…俺が、こんな事、言うのも変だけどさぁ。」
将輝の声に理沙、自然に首を横に振って、
「ううん。変じゃない。将輝、おかあさんがいないから…。だから、電話した。おかあさんが子供たち、分かんなくなって。…そして、子供たちも、おかあさん生きているのに、おかあさんじゃなくなったようになって。」
スマホから聞こえる将輝の声、
「子供たち、かわいそ過ぎんだろ。」
「うん。」
鼻水を啜って、そして理沙、
「はぁ~~。…ごめんね将輝、夜遅く、電話して。」
将輝、
「えっ…???あぁ~~。まっ、復習してたから。」
いきなり理沙、
「かっ。かかかか、偉いじゃん。」
「…てか、おまえが言ったんだろ、復習しろって…。」
その声に、
「だって、あんた、学期末、駄目だったら、試合出れないんでしょ。」
「あぁ。」
理沙、
「私、もぅ、寝る。」
「おぅ。」
そして将輝、
「明日、学校でな。」
「分かってるよ、おやすみ。」
そしてすぐに通話は切れる。将輝、
「…って。すぐに切りやがった。何だよ。」
翌日のリハビリ、予定通りに熟し、漆原総合病院に。
前以て電話連絡していた駒田に事情を話し…。
駒田、
「そうですか~~。そんな事に…。うつ病自体、とにかく症状は様々です。ただ…、治らない病気でもないんですけど…。治療には、本人の、治りたい気持ちが一番。焦る必要はないんですけど、じっくりと時間を掛けて…。」
そこまで言って駒田、
「けれども…。」
腕組みをして、
「こと、それが、事故の加害者と言うのが…。ん~~。理沙君には、ちょっと、辛いかも知れない。…でも、僕らは、理沙君のこれからを応援する。手伝わせてもらう。何かあったら、いつでも。」
ニッコリと駒田。
和奏、
「すみません、先生にもこんな事、相談して。」
駒田、右手を振って、
「いえいえ、とんでもない。いつでもどうぞ。お待ちしております。」
駒田にお辞儀をして和奏、
「ありがとうございます。」
信じて…良かった。 vol.135. 理沙、ベッドの中で…。
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