2012年のドイツのテレビ映画"ROMMEL"の日本リリース版DVD『ロンメル・第3帝国最後 の英雄』を観る。日本語字幕が付いているという点以外では映画自体は本編カットもされていない。ところがオリジナルの冒頭にあった哲学者ハンナ・アーレントの引 用が日本版ではカットされている。
"Wir sind auch fuer unseren Gehorsam verantwortlich“
(我々もまた服従にその責任を負うものである。)
この引用があろうとなかろうと一見、映画本編には何ら影響がない瑣末なことなのかもしれない。
しかし、映画の放映当時、ドイツの大手新聞ベルリナー・ツァイトゥングではこの引用について触れ、監督の意図とそこからこの映画を解き明かそうとする映画評が掲載されている。
仮に日本の映画評論家がこの映画を評論したとしても日本リリース版だけを見たのではこのアーレントの引用不在のまま語る訳になってしまう。
ユダヤ系のドイツ人哲学者アーレントとヒトラーに懐疑的であっりながら、ナチに従順であったナチのロンメルとの間を結ぶラインは完全に遮断されて評される ことになる。これではロンメルが最後まで総統に牙を剥けなかった彼なりの戦争とナチズムに対する責任についての議論が生まれては来ない。
これは本当に些細なことなのかもしれない。
しかし、この些細なことが映画作家の意図を見逃してしまうことになる。
何ゆえにリリースに携わったものはハンナ・アーレントの引用、しかも数秒のキャプションを無謀にもカットしてしまったのだろうか?
私は日本の映画という文化の取り扱いにおけるこうした無神経さを常々残念に思えてならない。
執筆:永田喜嗣