1800年後半から始まる物語で、「乙嫁」(本当は弟の嫁や年少の嫁という意味らしい)というきれいで美しいお嫁さんが話の中心となって話が展開していくお話です。

 

 人気もあって、ランキング入りすることも。

 

 

 

 ~ここからネタバレ注意~

 

 当時の中央アジアやカスピ海あたりの原住民たちの生活をものすごく勉強していて、かなりの再現度なのではないかと思います。

 

 そんな人々の暮らしをカルルク(12歳)とアミル(20歳)という乙嫁の、年の差カップルの話を中心に、その周辺の乙嫁や遠く離れれた地の乙嫁たちが如何にしてくっつくのかという話、ぜいたくな暮らしをしているけれど生活に飽きている乙嫁など、様々な乙嫁が群像劇で描かれます。

 

 私群像劇が好きなんですよね。

 

 主要登場人物のアミルとカルルクも、アミルのものすごい天然っぷりとか、けれどスーパーウーマンなアミルに相応しい夫になりたいというカルルクの想いも素敵です。

 

 絵もすごく筆が濃いめで、細かな模様などが鮮やかなタッチで描かれています。

 

 登場人物のパリヤという乙嫁が、基本的に周囲は嫁ぐための毛布やらなんやらを物覚えついてから針仕事で自ら作っていくのですが、そういうのがとにかく苦手で、苦痛に思いながら作るもモヤモヤした時間を過ごしていく中で友達が増え、友達にも協力して(たくさんの人に針を入れてもらうのが良いらしい)もらってどんどん花嫁となる準備ができていきます。

 

 そんななか、スッキリした性格の同年代のウマルと出会い、お互い惹かれ合い、やがてはちょっとした事件で婚約せざるを得ない状況になって、めでたく婚約できました。

 

 このパリヤ、目つきがすごく悪くって態度もガサツなのですが、本人には悪気がなく、みんなと仲良くしたいのにできないというような気持ちもあったようなのですが、人格者で美しいカモーラという女性を参考にしようとストーカーになるのですが、それで周囲から誤解されそうに(カモーラを羨んでいるのか、その目つき、悪意があるのではみたいな)なりますが、何とか誤解は解けて、カモーラを中心として友達を増やすことができたのでした。

 

 この話の狂言回しはスミスという青年が、道中で出会う乙嫁たちを観察したり、滞在している街で乙嫁が色々な出来事を起こしていくという流れになっています。さえない感じに見えますが資産家の家の出で、家督は持ちませんが、自由にして良いということから、この風習の違いについて研究している模様。

 

 そんなスミスもとある街で出会った乙嫁と恋心を交わすのですが、上手く行かず・・・と思えば・・・。みたいな、そんな、スミスも群像劇の主人公の一人として扱われていきます。

 

 ちなみに、アミルの兄がけっこうなやり手の人物なのですが、物語の初めの方で「やっぱりアミルは別の富豪に嫁がせるから取り返してこい。」と父から命令されて襲来するのですが、このアゼルは妹のアミルを想ってか、本気を入れて取り返そうとはせずにアミルは無事にカルルクと共に過ごせるようになりました。

 

 また、その母方の従兄弟であるジョイマクと父方の従兄弟のバイマトとつるんでいますが、このジョイマクが半眼たれ目で、けっこう好きなキャラクターです。彼らも乙嫁が欲しいみたいなのですが、乙嫁が嫁ぐために努力するのと同じようにそれ相応の羊だのを用意しなければならないので、お金がない現状にため息をつくような場面もあったと思います。

 

 かなりの描き込みっぷりなせいか、新刊がなかなか発行されませんが、続きを楽しみにしている作品の一つです。登場人物の表情などや身体の描き方、花嫁道具の描写など、絵柄がとにかく凝っているために、そちらに意識が持っていかれがちかもしれませんが、群像劇一つ一つのストーリーは反対にすっきりしていて、読みやすくあります。おすすめです。