過去にドラマ化(ただし主人公ではなく、別の主人公格の人が主役)して、けっこう認知度高いのかな? という漫画です。作者は佐藤マコト先生。全8巻。
モーニング新マグナム増刊から発刊され、1999年から連載が始まったという、ちょっと古めの漫画。だからドラマも古いものなので、認知度はうーん、どうだろ? 的な印象なのですが、とにかくおもしろい。
絵は青年誌らしい絵で、筆のタッチが昔ながらって感じもします。鬱漫画として有名な「ぼくらの」や「なるたる」の鬼頭莫宏先生の絵に似てるなーと思いました。
~ここからネタバレ注意!~
「サトラレ」とは、あらゆる思考が思念波となって周囲に伝播してしまう症状を示す架空の病名またはその患者をさしており、正式名称は「先天性R型脳梁変性症」。この難しい言葉はあまり出てきません。
つまり、頭の中で考えていることが周囲に筒抜けなんですね。会話しているかの如く聞こえてしまいます。「あの子ムネ大きいなー。」とかいう心中での呟きも聞こえちゃいます。
聞こえる範囲は人によって異なり、また、状況によっても(興奮状態など)変わります。
この「サトラレ」の人々は、周囲から「サトラレ」だと悟られないように生活させられています。理由が、やはり「自分の心が丸裸なんて人間社会では生きていけない。」と精神が狂ってしまうからです。
そんな「サトラレ」の人々ですが、こんな能力を持っている反面、とてつもなく能力が傑出していて、主人公の西山幸夫(にしやまゆきお)(主人公とはいえ、他の「サトラレ」も主人公みたいな扱いで各々のエピソードが語られるため、群像劇といった方が近い。)はIQが200以上もある天才で、核融合発電の研究をしている人物です。
西山はぼーっと冴えない人物で、周囲の警護(「サトラレ」は国家の大事な宝として見られているため、「サトラレ対策委員会」に所属する公務員が存在する。)が常に思念波(心の声)の影響で振り回される周囲のサポートをしたり、「サトラレ」自体が不逞な輩に何かされないかと警護したりとされていることに気付かないほどです。ですが、研究に対する集中力はすさまじく、日常生活では冴えない男ってだけです。
この西山、「女性としては好意を持たれないけれど、良き友人として見られる」と相性診断された小松という女性が友人関係を装いながらサポートされていたのですが、やがて、両想いになってしまい、結婚に至ります。
「サトラレ」という人物と家庭生活を送りたがる人はあまりいないので(常に周囲に自分の情報までもダダ漏れになるし、警護の人に一緒に監視されるようになるため。)、「サトラレ」は結婚率があまり高くないのですが、そんな「サトラレ」を受け入れる人もおり、その特質を理解し、秘匿したまま結婚する、しているカップルも他にも登場します。
結婚前のエピソードに戻りますが、西山はとある山中で行われる「ところてんの早食い」という謎のイベントに参加して余暇を楽しんでいたのですが、その後ロープウェイに乗った際、早食いのせいで腹痛(しかも下痢)を起こします。それもロープウェイは機械の故障で立ち往生という状況。西山の突飛な行動に何とかついていった「サトラレ対策委員会」の新人が滑り込みセーフで乗り込んでいたのですが、当然、満員状態なロープウェイの中では「サトラレ」の緊急事態を察知しており、全員がビクビク状態。
新人は「反応しないでください。バレます。」と西山に気付かれないように声を掛けたり、ベンチに座っていた女性がそれとなく「顔色が悪そうなので、座ってください。」とフォローしたりと、なんとかロープウェイの復旧を待つが、西山が限界突破サバイバー状態。
新人は脱出口があることに気付き、縄梯子を下ろして脱出する展開に。しかし、そこで乗務員が「お年寄り、女性を先に」と余計な一言。西山の心の声も「余計なことを~~!」状態。
西山は先に降りる! と本能むき出しで押しのけて降ります。新人は「サトラレ」に対して否定的で、「こんなヤツを守るなんて。」と思っていたところでしたが、しかし、続く老女が風に煽られて落ちそうに。「恨むぞ~!」という心の声を吐き出しつつも、老女を何とか救出。
その瞬間、ブリュッとこんにちわする西山のおケツ。
何とか全員が地上に降り、西山は絶望状態で座り込む。それを、周囲は「いや~、先に降りたのは安全確認のためだったんですね!」「素晴らしいです!」とお褒めの言葉を掛けてもらい、悪臭漂う中車で移動する際中も「みんなこの匂いに気付いてないの・・・?」と不思議そうだけど、「助かったぁ。」と安堵。
そんな西山の一連の行動を見て、新人は「サトラレにも愛すべきところがある。」と認識するのでした。
そして話は結婚後に跳びます。
結婚した西山は、小松との間に子供を授かります。しかし、「サトラレ」の子供は「サトラレ」になる確率が高いため、昔、小松に片思いしており、しかし現在では吹っ切れて自分の奥さんを持つ二ノ宮が、「ちょうど自分にも同じ時期に子供が産まれる。西山には単身赴任してもらい、たまに会う機会を持つ時には自分の子供を西山の子供として会わせよう。」と、奥さんと共に提案し、小松はそれを受け入れます。
生まれてきた「光」は、やはり「サトラレ」でした。それも思念波の距離も広く、小松は光と共に人気の少ない山中でひっそりと暮らすことになりました。
そうしてたまに我が子と誤認させられている二ノ宮の娘と会いつつも、核融合発電の研究がほぼ完成。それを良く思わない外国の重鎮たちは、西山を暗殺しようとします。
幾つかトラップが仕掛けられつつも、何とか回避してきた西山(とサトラレ対策委員)でしたが、あるきっかけで西山が自分が「サトラレ」だと知ってしまいます。そして光も自分が「サトラレ」だと知ってしまうのでした。
そんな絶望しかけた時、小松の必死の呼びかけで、再奮起した西山。しかし、そう上手くいかないのが漫画というものです。その直後、西山は胸に銃撃を受けて死んでしまいます。
死の直前、ヘリコプターで近くまで来ていた光に向け、西山の死の間際の猛烈な思念波で自身の研究内容を伝達します。光も幼いながらも、それをしっかりと受け止めるのでした。
そうして、「パーフェクトコミュニケーション」を果たした西山は息絶えるのでした。
しかし、周囲の人々には意味が理解できないほどの膨大な知識量に、それを理解できたのは光だけ。幼いために、他の人に研究内容を伝えようにも、上手く言語化できずに伝えられません。
光の成長を待ってから研究を再始動させようと政府は動きます。その間、光は山中の思念波が届かないところで母の小松と二人暮らし。つまらない生活に飽き飽きしていましたが、母親が自分のことを一番に想ってくれていることを知り、希望をもってこの話は終わりました。
この続編に、成長した光や他の「サトラレ」が連携して事件を解決したり、「サトラレ」と一般人の結婚生活を描いたりした「サトラレneo」があります。
こちらは全2巻で終わってしまっています。それも中途半端な終わり方でした。作者に何かあったのかな? 飽きちゃったのかな? ハンター×ハンターみたいな? と思いますが、もっと続きを読んでみたかったです。
また、別の作者である伊鳴優子先生が書いた、「サトラレ 嘘つきたちの憂鬱」という漫画もあります。全4巻。
こちらは高校生活を送る、ちょっと性格の悪く家庭環境が少し歪つな「千景」が「サトラレ」である主人公で、その周辺警護として「サトラレ対策委員会」に所属する、年齢を偽って同級生として友人として接する2人と陰ながら支援する1人で構成された中に、新人が1人入ってきて話をかき乱すという展開のストーリーになっています。
こちらは2019年に完結したばかりなので、絵柄も現代風です。青春漫画といって良いでしょう。
こちらはこちらで面白かったです。同じ若い学生相手に「友人」という立場で「サトラレ対策委員」となっている者達が他にもおり、時々定例会議を開いては「告知すべきでは?」「性格的に無理だろ。」「ていうか年齢ギリギリだろ。」みたいな若者らしいテンションで会議するシーンも印象的でした。
ですが、やっぱり、「サトラレneo」の続編が望ましい・・・。やってくれませんかね? もう無理ですかね? 諦めつつも、ちょっと期待しています。



