積の交換法則の「順序」とは | メタメタの日

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 直前の発言で,かけ算の式を「被乗数×乗数」の順序で定義しても,「乗数×被乗数」の順序は証明できるのではないかと証明を試みたが,コメント欄で,紙つぶてさんから「被乗数×乗数=乗数×被乗数ナド(左辺から出発して)数学的に証明出来る筈がないではないか」と一笑された。また,「何が証明されたのかわからない」というコメントもあった。

 

 それらも踏まえて考え直した結果,私としては,次のようなところに落ち着いた。

 

 前発言でも紹介したが,ペアノの公理に基づく数体系での積の交換法則の証明は次の通りです。(遠山啓『代数的構造』(新版1996年,日本評論社)109頁以下)

========(引用開始)==================

和 Nの任意の2要素x,yに対して,

(1)  x+をx+1と定義する。

(2)  (x+y)+ をx+y+ と定める。  

【x+ は,xの後続者。中略。】

積 x・y(xyとも書く)をつぎのように定義する。

 x・1=x,

x・y+=xy+x. 

【中略。分配法則(x+y)z=xz+yzの証明】

交換法則:xy=yx.

まず y=1 に対してx・1=1・x を証明しよう。

x=1のときは 1・1=1・1 で正しい。

xに対して正しいとすれば,x+ については,

1・x+=1・x+1=x・1+1=x+1=x+=x+・1 

したがって,すべてのxに対して1・x=x・1が成立する。

 yに対してx・y=y・xが成り立つと仮定しよう。

 y+x=(y+1)x    (分配法則によって)

=y・x+x=x・y+x=xy+

したがって,すべてのyに対して成り立つ。 

========(引用終り)==================

 

 ペアの公理系の構成は,和から積に進んでいて,積の定義は同数累加です。つまり,同数累加の同数xを積の被乗数xとし,累加数yを積の乗数yとし,積の式は「被乗数x・乗数y」の順で書き,xyは「xのy倍」の意味になります。

 交換法則は,

     被乗数x・乗数y=被乗数y・乗数x

となります。(上の引用で遠山は,同数,累加数,被乗数,乗数などの用語を使っていませんが)

 以上の理解は,西洋から数学を学んだ日本で,明治の算術から戦後の算数まで,かけ算を同数累加の簡便形として導入してきたものと同じです。(1950年代後半から,数教協が「量の理論」で算数教育を革新しようとして一部成功した内容には触れない。)

つまり,

  7+7+7+7+7=7×5 の式では,左辺の同数累加の同数7が右辺の被乗数7であり,左辺の累加数5が右辺の乗数5であり,積は「被乗数×乗数」の順で書く。

 

 私の前記事の証明は,7+7+7+7+7の式を,かけ算の式の定義より,被乗数7×乗数5と書いても,7×5の式が,5+5+5+5+5+5+5の式と等しいことが証明されたら,つまり,

      7×5=5+5+5+5+5+5+5 

が成立したら,5が同数(被乗数),7が累加数(乗数)となる。

だから,

    5+5+5+5+5+5+5=5×7

    7×5=5+5+5+5+5+5+5  より,

        5×7=7×5   

  被乗数×乗数=乗数×被乗数

が証明されたのではないか,という論理構成だったのだが,定義より,

    5+5+5+5+5+5+5=5×7  

だから,けっきょく,

   7+7+7+7+7=7×5=5+5+5+5+5+5+5=5×7

が証明されたのであり,これこそが,交換法則(被乗数7×乗数5=被乗数5×乗数7)だと批判されたのでした。

 

 実際,遠山の引用の後半4行に具体的な数値を入れてみると,

=====(はじめ)========================

6×5=5×6が成り立つと仮定しよう。

 7×5=(6+1)×5    

=6×5+5=5×6+5=5×(6+1)=5×7

したがって,7に対して成り立つ。 

=====(おわり)========================

途中で,

   7×5=(中略)=5×6+5   ‥‥(イ) 

5×6は,定義より,5の6倍だから,

   7×5=5+5+5+5+5+5+5  ‥‥(ロ)

が成立している。

 (ロ)の式を見れば,5は,右辺の同数累加の同数だから,左辺の積の被乗数であり,7は右辺の累加数だから,左辺の積の乗数になっている。ここで話を止めれば,7×5は「乗数×被乗数」となるところだが,そもそも,乗数,被乗数という用語を用いていない。

 

 また,前発言で思い出したかつてのSparrowhawk氏の発言によれば,

 3×4の式は, 

     3×4=3×(1+1+1+1)=3+3+3+3 と書けば,被乗数×乗数だし,

        3×4=(1+1+1)×4=4+4+4 と書けば,乗数×被乗数である。

 

 かけ算の式を「被乗数(同数)×乗数(累加数)」で定義しても,

    3+3+3+3=3×4=(1+1+1)×4=4+4+4

と式変形すれば,「乗数(累加数)×被乗数(同数)」の式になるのではないか。

 ×の前が被乗数,後が乗数と定義することにどれほどの意味があるのだろうかという話になる。

 ということは,7×5=5×7 を,

     被乗数7×乗数5=乗数5×被乗数7

と捉えて,それを交換法則の適用とするのがおかしいというなら,

     被乗数7×乗数5=被乗数5×乗数7

を,交換法則の適用と捉えるのもおかしいのではないか。

 

 戦前の算術の教科書は(高木貞治の教科書も含めて),交換法則は,

     因数7×因数5=因数5×因数7

と捉えていた。

 つまり,交換法則では,被乗数,乗数という区別をせず,共に因数と名付けている。

元の式の被乗数が名数であるときは,名数の単位(助数詞)を取り除いて,不名数としてから交換法則を適用していた。

 1時間に12里走る汽車の4時間で進む距離12里×4の式に交換方式を適用するときは,里の単位を取り除いてから,

    12×4=4×12

とする。つまり,

    12里×4=4里×12  とも,

    12里×4=4×12里  とも書かなかった。

 なぜなら,上の式では,左右両辺が表す状況が異なること,下の式では,被乗数×乗数の順序からすると,不名数であるべき乗数が名数になることを嫌ったのだろう。

 つまり,かけ算を,被乗数×乗数で導入しても,交換法則の適用では,因数×因数と捉える。数学的にはこれが正解ではないのか。

 

 前の記事で交換法則の理解に4通りあることを挙げた。

http://ameblo.jp/metameta7/entry-12297150391.html

 3×5=5×3 の式については,

   (甲)3の5倍=5の3倍

   (乙)3の5倍=5倍の3

   (丙)3倍の5=5倍の3

   (丁)因数3×因数5=因数5×因数3

 

  数学的には,(丁)が正しいということだろう。

 (甲)(乙)(丙)は,日本や世界の実社会で利用され,(甲)または(丙)が義務教育で教えられてもいるが(日本では(甲)),それらを交換法則と呼ぶのは,数学的には問題があるだろう。

 ネットでも,(乙)は交換法則ではないと発言してきた人はいたし,銀林浩さんの「数については交換法則が成り立つが,量については交換法則が成り立たない」という,私が吃驚し当惑もした発言の底にはこういう問題意識があったのだ,ということがあらためてわかった。

 

 数学的当否が如上であっても,教育的にはどう教えるべきだろうか。

 社会生活では,1個5円の商品を8個買う場合のレシートは,店によって

     単価5円×個数8   か

     個数8×単価5円   のどちらかが使われている。

 総額を求める式はどちらでもよいことを確認する(教える)べきだと思う。時期は,小2のかけ算の単元のまとめのところで。

 かけ算が使えるようになって,実生活で戸惑うことがあるのは,絶対にまずい。

 単価×個数=個数×単価 を確認するということは,

     1つ分×いくつ分=いくつ分×1つ分

     被乗数×乗数=乗数×被乗数

を確認することになる。

 つまり「交換法則の理解(乙)」を確認することになる。

 

 小学2年の子供は,ここに至るまでに,九九を各段ごとに暗唱する途中で,アレイ図を使って,被乗数と乗数を入れ替えても,全体の数は変らないこと(甲)を確認してきている。

 そして(乙)を確認したわけだから,かけ算を使う場面だ(同じ数量の集まりがいくつかある)とわかったら,どちらの数を×の先に書くかは気にしなくてよいと気が付くことになる。それが,小2のかけ算の学習の仕上げの一つとなるだろう。

 それは全然問題ないどころか,むしろ目指すべきことだろうし,どちらが先かを気にするよりずっとやさしい(少なくとも私はそう思うし,子どもの私もそう思っただろう)と思うのだが,今まで発言してくれた小学校の先生の発言を振り返ると,多分違う意見でしょうね。

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