Judas Priest / Invincible Shield | おネギさんの温故知新 「俺の山河は美しいかと」

Judas Priest / Invincible Shield


 

 

デビュー50周年を迎えたブリティッシュヘヴィメタルバンド、ジューダス・プリースト。



偉大なる半世紀の節目を飾る、通算19枚目の天下無双の強烈アルバムが誕生した。



2023年10月に先行配信された第1弾のPanic Attackを聞いた時思わずガッツポーズした。攻撃性とキャッチーさのバランスの絶妙さ、その強烈さのインパクト以上にメロディやリフもすごい印象に残る。名曲Painkillerを呼応するタイプの楽曲であり、本作のキラーチューンと言っていい。



第2弾として配信されたのがTrial By Fire。ミュージックビデオではモノトーンで表現したように、ヘヴィでダークな地を這うパワーに漲っていた。そして、第3弾のCrown Of Horns。印象的なギターが入口となり誘い込む世界はカラフルなポップなビートが躍動する。そしたら発売直前になって第4弾のThe Serpent And The Kingが登場。その個性的で独立した4曲が指し示したものは、アルバムがとても多様性に満ち溢れた作風であること。前作のFirepowerの単なる延長線上に存在しないという心意気にも感じられた。実際に似たようなケースだと、荒々しさを整合性で纏め上げたScream For Vengeanceと、継続性を意識しながら多様性で結実したDifenders Of Faithの流れもある。その流れが21世紀となった今、そのまま投影させたとも読み解くことができる。



収録されている各楽曲も非常に完成度が高い。本編11曲をそのまま飛ばすことなくずっと聞いていられる。デラックスエディションに追加収録されたボーナストラックの3曲は本編に入らなかった理由もなんとなく理解できる。本編のグレードが高い。ランニングオーダーの完璧さも言及しておく。デラックスエディションの最終曲、The Lodgerはかつてバンドに楽曲提供をしたことのあるボブ・ハリガンJrの楽曲である。



プロデューサーは前作のプロデューサーであるアンディ・スニープ。そしてSon Of ThunderとGiants In The Skyに共同プロデューサーとしてトム・アロムも参加している。アンディの才能のなせる業と、Priest Metal Insightという呼称もトムの貢献度の高さを物語ってる。



特筆すべきは、メタルゴッドのロブ・ハルフォードの驚異的な表現力である。一時期は体力の衰えが目立つこともあったが、前作のFirepower以上に艷やかでパワフルなボーカルを聴かせてくれる。この若々しさは驚異でしかなく、脱帽してしまった。もちろん、古参メンバーのページストのイアン・ヒルとパーキンソン病を患っているグレン・ティプトンの功労者の立ち位置は揺るがない。ギタリストのリッチー・フォークナーの貢献度、スコット・トラヴィスの強烈なドラミングも全てが一体となって聞き手を揺り動かす。まさに新たな代表作と呼ばれるべき決定的な1枚である。



記憶に新しいのが、2022年11月のロックの殿堂入り。そこにはロブ、グレン、リッチー、イアン、スコットの他に、ギタリストのK. K.ダイニングとドラムスのレス・ビンクスとの共演があった。もし、50周年ツアーを実施する場合は是非とも7人編成で見てみたいものだと我ながらに思ってしまった。