相の浜 あめまつさんより聞いた話を親戚の方がまとめてくださいました。
この話はなあ、おれが子供のじぶんに聞いた話だがのう・・・
大秋(冬)のある日のこと。朝早くに船が港を出る時はてんぱれで、沖もべたなぎだった。
なれ(ならい。西北の風)の風がふけば帆をはれたが、べたなぎだから、櫓ででていった。
ともとり(船の後尾で櫓でかじをとる人)を入れて九丁櫓。
三十前の若い衆が多いから、そらまあ、いせいのいいもんだった。
ただこの日は気になることがあっただ。
そらな、あとでわかったことだが、普段みたこともねえ星が南の沖にぎらぎら輝いているのを
夜中に見たものがおったからだ。
漁場に着いた船はすぐに縄をのばしていった。
昔は船も小さかったから、いい日よりで十二枚。一枚が二百ぴろからの縄を流したもんだよ。
(ひとひろが身長くらいで約175センチとすると*200=約350メートル)
ところが縄をのばし終わったころから、いなさ(東南の風)がぷわぷわといれてきた。
このくらいの風じゃあんちゅうこともないだろうというわけで、どの船もたかをくくっていた。
そのうち、だんだん風が強くなり、波も高くなってきたもんで
「ええ。ようきがおっかしゅうなってきたから、しめにしたほうがいっぺど。」
と船頭が大声で言い終わるまもなく、いなさがうなってきた。さあ、ていへんだよ。
このつづきは明日にします。