隠し剣秋風抄/藤沢 周平
¥620
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勝手に採点 ☆☆☆☆


ヒト癖ある無名の剣客たちを主人公に彼らの生き様を
描く時代小説。


内容的には「たそがれ清兵衛」の続編と言ったところ。
短編なので割り切って読みやすい。


こうした地味な下級武士の心情や活躍を描かせたら右に
でるものはいないだろう。


苦しい生活ぶりや過酷な状況に陥っても決して湿っぽく
ならず、彼らのしなやかさがからりとした文章で綴られる。


特に印象深かったのは、役目で視力を失った武士の復讐劇。

彼の苦悩の深さと潔さ、妻の献身さに心を打たれる。


読んでいて次の物語が楽しみなこと請け合い。

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「暗殺の年輪」

テーマ:
暗殺の年輪 (文春文庫 ふ 1-1)/藤沢 周平
¥500
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勝手に採点 ☆☆☆


直木賞を受賞した表題をはじめとする中編集。


「刺客」のような痛快時代劇を期待していたが、内容は全体的に
暗鬱でとっつきにくい。


一番印象的だったのは「ただ一撃」
舅のために自害してしまった若い嫁がいたわしい。


逆につかみ所のなかったのが葛飾北斎が主人公の「溟い海」。
どうも藤沢作品は武士が主人公でないと躍動感が出ない。


ここでの北斎は若い才能を羨む卑しい人物として描かれ、
最後までその卑しさが取れない印象。


文学的な評価は高いのかもしれないが、娯楽作品として純粋に
楽しめないが残念。

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「決闘の辻」

テーマ:
決闘の辻―藤沢版新剣客伝/藤沢 周平
¥560
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勝手に採点 ☆☆☆


宮本武蔵や柳生宗矩など、歴史に残る剣豪・剣客たち。
彼らの生涯に残る運命の対決を鮮やかに描く時代小説。


壮絶な死闘もあるが、結局本人は闘わわないバージョン
もあるなどバリエーションは豊富。


一番印象的なのは「二天の窟―宮本武蔵」のセコさ。


すでに老齢し、真っ向勝負では勝てないと分かるや、
自分の愛人を抱かせ、帰途を待ち伏せして打ち倒すなど
剣士としては最低の品格。


いまいち彼の名声が響かないのは、戦場での活躍がイマ
イチだったことと、こういった姑息な手段を労して、さして
有名でもない相手に勝ち続けたというネガティブイメージのせいか。


また、父の仇を討ちに行く「飛ぶ猿―愛洲移香斎」は逆の
意味で印象的。


仇である相手が亡き父を懐かしみ、自分より強いことが分かると、
潔く身を引く清清しさ。


きっと彼は故郷で許婚と幸せに暮らしたに違いない。

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たそがれ清兵衛/藤沢 周平
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆☆


映画化もされたメジャー作品。


実直な性格で質素な生活を送る下級武士たち。


共通するのは武芸に秀で、ヒト癖ある性格や容姿。


彼らに下される過酷な藩命や降りかかる災難にひた
むきに対処する生き様を描く時代小説。


「用心棒日月抄」の主人公が、くるくる別人に変わり
短編にまとめられた感じ。


映画化されたとあって長編かと思いきや「たそがれ清兵衛」
を始めすべて短編。


病身の妻を助けるため、早々と下城し帰宅すると家事や
内職に勤しむため、昼行灯の清兵衛。


夕方から元気を取り戻す彼のあだ名が「たそがれ清兵衛」

しかし、その実彼は免許皆伝の腕を持つ剣の達人。


そんな彼が藩のお家騒動に巻き込まれ、刺客として抜擢される。
見事藩命をやり遂げ、褒美に妻を名医に見せ、湯治場へ連れて
やることができたというお話。


どうやら映画化された話は「祝い人(ほいと・物乞い)助八」
という話の方らしい。


そのほか、「うらなり」や「ごますり」、「だんまり」など
能あるタカは何とやらを地で行く主人公たち。


それにしても、経済的、地位的に恵まれない武士の生き様を描
かせたら右に出る物はないと思わせる筆者。


さほど多くない文量に凝縮された秀作たち。


彼らの哀愁漂うそこはかとない奥ゆかしさが暖かく胸に伝わる。

これからも、藤沢氏の作品を手に取るのがとても楽しみ。

用心棒日月抄/藤沢 周平
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


シリーズ第1作。


若干26歳の藩士・青江又八郎は藩主毒殺の陰謀を偶然知り、

すぐさま許婚・由亀の父に相談を持ちかけたところ、逆に襲わ

れ、反射的に切り捨てる。


脱藩して江戸に逃れた又八郎は、用心棒や力仕事で食いつな

ぎながら、国許から送られてくる刺客を次々と倒していく。


由亀が父の仇討ちのため又八郎の前に姿を現すまで。


又八郎や同業の細江も若く、剣が冴え渡るあたりは痛快。


そのうえ、本編は忠臣蔵でおなじみの赤穂浪士たちの活躍を

絡めながら、絶妙なタッチで描かれる。


一方、用心棒家業から派生するサイドストーリーも格別。

江戸に生きる町人たちの暮らしぶりが活き活きと伝わってくる。


そんななか、又八郎が守りきれなかった遊女の悲しい死。

仇を取っても彼女の命は返って来ない。


日々の暮らしの中で、刺客の襲撃に備えることも忘れ始めた

ころに届く朗報。


藩の実権を掌握しつつある間宮中老からの救いの手。

しかも由亀が年老いた祖母とともに彼の実家を守っていた。


彼の証言により陰謀の黒幕は倒され、又八郎は元の役目に

復帰する。


次シリーズより重要な役どころを担う佐知もラストに登場。

これからの新たな展開を予感させる。

藤沢 周平
凶刃―用心棒日月抄

勝手に採点 ☆☆☆


シリーズ第4作。


前作から16年後の設定で、主人公青野又八郎も40代中盤。


用心棒稼業も懐かしく感じられるほど、藩の要職につき生活

は安定し、子供の成長を喜ぶ普通の父親となっていた。


そんな折、江戸へ半年ほどの役目を言い渡され、出発を控え

ていたころ、重臣から藩の秘密組織「嗅足」に関するある命令

を江戸にいる「嗅足」の女頭領佐知に伝えるよう打ち明けられる。


するとその重臣が何者かによって暗殺され・・・。


藩の秘密とやらが、藩主の側室の出生に関するもので、かなり

込み入った話であるため、ストンと腹に落ちてこない。


前シリーズと異なり、推理小説仕立て、謎解きに力点が置かれ、

又八郎と敵との暗闘や町人の暮らしぶり、用心棒の雇い主に

まつわる秘話などは触れられないか、かなり端折られている。


藩命を受けた又八郎が佐知と共に秘密を守るストーリーと、用

心棒稼業で生計を立てるエピソードが絶妙に絡まりあって奥深

い物語に仕上がっていただけに残念。


又八郎や佐知、そして細谷なども年を取ってしまい、目まぐるし

い活躍を見せられなくなってしまったということか。

それでも、二人のひとときの逢瀬や貧乏暮らしが続く細谷の生活

ぶり、新しい助っ人など登場人物は魅力満点。


ぜひ続編を期待したいところだが、ここで絶筆になっているのが

惜しいところ。

藤沢 周平
孤剣―用心棒日月抄

勝手に採点 ☆☆☆


シリーズ第二弾!


東北のとある小藩の下級武士青江又三郎は剣の使い手。


彼が藩のお家騒動に巻き込まれ、江戸へ脱藩し、用心棒

稼業で生計を立てながら、藩の窮地を救うべく活躍する姿

を描く時代小説。


今回は、藩の実権を掌握しつつある間宮中老からの密命で

前藩主の毒殺にかかわったものたちの血判状を取り戻すこと。


それも、反間宮派からだけでなく、公儀隠密までもが入り乱れ

死闘を繰り広げる。冴え渡る又三郎の剣。


お家騒動とお取り潰しの危機にありながら、藩から十分な支援

がないことから糊口をしのぐため引き受ける用心棒の仕事。


裕福な商家や高利貸しが盗賊から身を守るために彼らを雇う。


必ずと言って良いほど賊が押し入るのはお約束と言えども、

迎え撃つ又三郎や相棒細谷の豪剣の前に倒れる賊たち。


それも見ず知らずの賊が単に押し込みに来るのではない、

複雑な人間模様が絡んだ人間ドラマ、駆け引きの描き方は

宮部作品に通じるところもありお見事。


多少残念なのは、宿敵が案外あっさり倒されてしまうこと。

もう少し二人の粘っこい戦いを楽しみたい。

刺客―用心棒日月抄/藤沢 周平
勝手に採点 ☆☆☆☆ ニコニコ
¥1,575
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シリーズ第三弾!


とある北国の小藩の藩士青江又八郎が主人公の時代小説。

剣の達人又八郎へ藩の重鎮から隠居している寿庵の企み

を聞かされる。


忍の女佐知とその配下の者の命を助け、寿庵の野望を挫く

ため、又八郎は江戸へ出発する・・・。


久しぶりの時代小説。しかもかなり面白い。


どうやらシリーズ物でこの前にも作品があるようだが、それを

知らなくても十分楽しめる。


ポイントは、剣の腕を見込まれ、藩のお家騒動に巻き込まれ

ながら、江戸で生活するため用心棒稼業で生計を立てている

ところ。


用心棒として雇われた先で繰り広げられる事件の数々がこれ

また一ひねりも二ひねりもあって引き付けられる。


ケチな元金貸しの婆さんへの押し込みや旦那持ちの女が計

画、実行した誘拐事件など、その結末と併せてよく出来た物

語に仕上がっている。


そのうえ、国許の刺客との壮絶な死闘に手に汗を握る。

5人もの相手を一人一人確実に倒していく様は佐知ならず

とも惚れてしまうカッコ良さ。


どうしてもシリーズを読破したい、そんな気持ちにさせる一品。