夜明けの街で/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆☆


中年に差し掛かるサラリーマン渡部が陥る社内不倫。


派遣社員・仲西秋葉との危険な恋愛に、彼はやがて妻と幼い
娘を捨てる覚悟を決めていく・・・。


しかし、秋葉の過去には隠された秘密が・・・。


渡辺淳一ばりのドロドロ不倫小説かと思いきや、そこは
さすが東野。不倫はあくまで刺身のつま。


それでも前半部分は、恋愛小説さながらのリアリティで、
仕事と生活に追われていた渡部が急速に恋愛に目覚めて
いく過程をスピーディーに描く。


男性社員と打ち解ける秋葉に嫉妬する場面や、劇的なスキー
場での再会など男心をくすぐるつくり。


一方、ネタのキモとなる過去の事件だが、ここはどうも不
自然さが鼻をつく。自殺を他殺と見誤る捜査もいかがなものか。


また、強い意思を心に秘めた行動とは言え、あまりに身勝手な
行動ゆえ、心情的に秋葉に同情できるところが少ないことも
納得感が乏しくなっている要因。


東野作品は、「ホントにそんなことまでするのか!?」という
疑問が生まれない作品ほど秀逸。


そういう意味で残念ながら完成度に難点が残る。


とはいってもそれは東野作品のなかの位置付け。
娯楽作品としては十二分に楽しめるデキ。

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使命と魂のリミット/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆


心臓の動脈瘤で死去した父親の影響で心臓外科医
を目指す研修医氷室夕紀。


彼女の指導医は父親のオペの執刀医だった西園教授。
しかも彼は近々彼女の新しい父親となることが決まった。


父親の死の原因に疑問を抱く彼女は、彼の真意を探
ろうと思い悩むが・・・。


一方で彼らが勤務する帝都大学病院には、医療ミスを
原因に病院を破壊するという脅迫状が発見され、警察
も乗り出し事態は緊迫の度を増していく。


さすがは「東野圭吾」と唸らせるできばえ。


コンスタントにこのレベルの作品を作れるのは彼しか
いないだろう。人気、実力ともさすが。


トリックに頼らないヒューマニズム溢れる人間ドラマ
は読み手を強く引き付け、読後の満足感も申し分ない。


今回はストーリーとしてはドンデン返しのない、到って
規定路線を走り続けたものであるが、ラスト数ページの
教授の告白は涙なくしては読めない。


いつもながらではあるが、犯人の犯行動機がイマイチ希薄
である感は否めないものの、終盤での心変わりもあって
よりリアリティーが増す結果となっている。


東野氏の描く心のなかに強い意思を持ってひたむきに生きる
人たち。彼らが主人公である限り彼の作品は輝きを失わないはず。

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おれは非情勤 (集英社文庫)/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆


非常勤の教師として様々な小学校を渡り歩く主人公の若者が、
行く先々で出会う殺人事件を始めとする様々な難事件を解決
する痛快ミステリー。


児童向け雑誌に連載されていたライトミステリーを加筆修正し、
文庫用に新たに新調。


短期間しかいない赴任先でこうも人が死ぬところに出会う確率は、
天文学的な比率であるはずだが、彼は例外らしい。


ただ、殺人だけでなくいじめ問題や小学生が抱えるトラブルを
題材にして軽妙に仕上げるあたりはかなりの力量。


そのうえ、本格推理小説ばりのトリックを散りばめることで謎を
深め、読者の興味を引き付ける。


宮部作品の少年ものにも共通する味付け。


ちょっと頭が疲れたときにお奨めの一服の清涼剤。

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「赤い指」

テーマ:
赤い指/東野 圭吾
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勝手に採点 ☆☆☆


妻からの連絡で急いで帰宅してみると自宅の庭には幼女

の遺体が。なんと中学生の息子が犯人。


中年の夫婦は、溺愛する息子の将来と自己の保身のため、

ある計画を実行する。そこへ登場する刑事・加賀。


彼は事件の真実を見抜き、解決へと導くことが出来るのか。


東野氏が好む家族愛がテーマ。


夫婦の心境や息子との軋轢、同居する母とのつながりなど、

より深堀すべきテーマが表面的で真に迫ってくるところがない。


そのため、犯行を別人に擦り付けるという大胆な行為やずっと

ボケたふりをし続け、口紅を使って息子のトリックを暴くといった

やり方が、そうまでするかよ~的な印象がどうしてもぬぐえない。


また、加賀刑事と実父間の表面的には冷たい関係も重要なファ

クターになっているため、事件自体がぼやけた印象に。


その他の作品でもそうだが、複雑な心理描写を省いて、目に見

える行為や結果のみを第三者からの視点で読者に提示する手法

を徐々に変えていくべきではなかろうか。


初期作品では複雑なトリックを使った明快な謎解きで、それ以降

は愛情をテーマに過酷な人生を歩む人々を緻密に、淡々と描くこ

とで大きな感動をもたらしてきた東野氏。


今度はひたすら一人称で人間の心理に深く迫った手に汗握るよう

な大作を期待したい。

「宿命」

テーマ:
宿命/東野 圭吾
¥650
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勝手に採点 ☆☆☆


地元の有力企業の社長が殺害された。


凶器はボーガン。捜査を担当する刑事・勇作は、容疑者として幼馴染

であり、ライバルでもあった瓜生に目を付ける。


瓜生は殺害された社長の前の社長の息子で、今は医学部で教鞭を取

っている。そしてその妻は、かつて勇作が愛した美佐子であった・・・。


勇作は事件後行方の分からなくなった古いファイルとその謎を解くべく、

ひとりで調査を続けていくが・・・。


ラストを含め全体構成は見事。なるほどそういうことだったのかと納得。

運命に翻弄された二人の兄弟は事件後どのような関係になるのだろう。


ただ、瓜生や美佐子の人物描写が甘く、勇作と美佐子の関係も中途半

端な感じが否めない。


犯人の人となりもあいまいなままなので、殺害動機も不明瞭。


人が殺人を犯すまでの複雑な心理描写がすっぽり抜けているので、

物語に深みがなく表面をなぞった印象が強い。


それでも、白夜行や手紙といった作品群の原点ともいえる運命を受け止め

ひたむきに生きるテーマは氏のオリジナリティを感じる。

「探偵倶楽部」

テーマ:
探偵倶楽部
\514
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


美形の男女が調査員で、お金持ちのトラブルを解決する

謎の会員制探偵組織「探偵倶楽部」。


秘密厳守で仕事はきっちりこなすとという評判の良さで

会員からの評価も高い。


そんな彼らがクライアントから依頼された調査や謎解き。

彼らの素性は全く分からず、淡々と事件を解決する。


密室殺人の謎や連続殺人の犯行動機などにスポットが

当てられ、数学的なパズルを解くイメージ。


初期の東野作品に多くみられるパターン。


後の優れた作品のネタにも使われるトリックや仕掛けも。


ただ、やはり気になるのは、トリックに集中しすぎて、人間

の情念がすっぽり抜けている点。


犯行動機が後付けで説得力に欠けるのは、感情はそんな

に簡単に割り切れないところ。


前にも書いたが、このあたりを主眼にもってきて、トリックで

味付けした作品がここもとの彼の作風であり、読み応え十分

なもの。


本書を読むことで、最近の東野作品の良さが改めて実感で

きる。

東野 圭吾
私が彼を殺した

勝手に採点 ☆☆


人気男性作家が結婚式当日に毒殺される。


容疑者として、彼のマネージャー、担当だった女性編集者、花嫁の

兄が浮かび上がるが、彼らのいずれもが殺意と犯行におよぶチャン

スがあり、自ら「私が彼を殺した」と考えた。


犯行に使われた鼻炎用カプセル、直前に自殺した恋人、花嫁と兄

の危険な関係が複雑に絡み合い、真犯人を深い霧で包み込む!


「犯人はあなたです」という刑事のセリフで終わってしまうラストが

許せない。一体誰が犯人だったの!?が正直な感想。


結局誰が犯人だったのか、暗示はされているものの誰かは直接

言及がなく、唐突に終わりを迎える。


まあ、推理小説の王道として、


・被害者は誰からも恨みを買うような高慢ちき

・登場人物全員が怪しい

・勝手に推理を進める刑事コロンボみたいな奴がいる

・そして真犯人は意外な人


とポイントは押さえている。しかし、犯行の動機が全く不明だし、

わざわざ全員集めて発表会をする理由も分からない。


とはいえ、禁断の愛や人間性の闇の部分にスポットライトを当てる

など、「白夜行」や「幻夜」といった読み応えある秀作の原点が垣間

見れる。


初期作品の多くにみられる殺しの謎解きに力点を置いたミステリー

から人間と人間の複雑な関係、気持ち、愛憎といったヒューマンドラ

マにし始め、氏の作風は大きく進歩し、より多くの読者を引き付けた。


それにしてもひとつ気になることがある。

結婚式場で毒殺された花婿って一体何人いるのだろうか。

「眠りの森」

テーマ:
東野 圭吾
眠りの森

勝手に採点 ☆☆


名門バレエ団で起った殺人事件。

夜間に忍び込んだ泥棒を女性団員が正当防衛で殺害。


賊の背後関係を捜査するうち刑事加賀は意外な接点に着目する。

そんななか、公演中に主任演出家がされ・・・。


あまりに理屈っぽく現実感の欠けた設定にがっかり。

いわゆる安っぽいミステリーの仕上り。


第一の殺害時点で、なんでとっさにそこまで思いつくの?、

交通事故で聴力を失うって?、公衆の面前で毒物を注射するなんて

可能?と突っ込みどころ満載。


演出家を殺害する動機も説得力なし。

ニコチンで殺せても、ホントにそこまでするかな~。


加賀とプリマ美緒との恋愛模様もかなり中途半端。

特にラストはありきたり。

東野 圭吾
容疑者Xの献身

勝手に採点 ☆☆☆☆


弁当屋で働く女性に好意を寄せる中年独身の高校教師石神。

隣に住む彼女が気になり毎日のように弁当を買いに行く毎日。


そんな平穏な日々を揺るがす驚愕の事件が発生。

なんと復縁を迫るストーカーまがいの元夫を彼女と娘が殺害。


愛する人を守るため、石神は自分を犠牲にして完璧なストーリー

を組み立てるが・・・。


どこかで読んだことのある設定と思いきや、どうやら物理学者

湯川シリーズの続編。


親友の警視庁の刑事から難事件を持ちかけられ、独創的発想

で次々と事件を解決に導くストーリー。


本編も基本的にはその設定を踏襲。


ただ、石神の一途な愛の強さが、読み手の心を強くひきつける。


事件に関する謎解きに関しては、いわいる本格推理小説的要素

を取り入れている。


DNA鑑定というゆるぎない証拠を逆手に取ったカムフラージュは

お見事。


しかし、理系的発想から繰り出される東野氏の仕掛けは、、「そこ

までやるかな~」的印象が強くて若干リアリティーに欠ける傾向。

それよりも「白夜行」や「秘密」といった名作に代表される自己犠牲、

献身的な愛情をベースに描かれたドラマは読み応えあり。


残念なのはラスト。あまりに寂しい結末に石神に同情せざるを得ない。

「さまよう刃」

テーマ:
東野 圭吾
さまよう刃

勝手に採点 ☆☆☆


父子家庭ながらも大切に育てた愛娘をレイプされたうえに
無残に殺害された父。


犯人に復讐するべく、猟銃を片手に執拗な追跡の旅が始まる。


指名手配され、警察に追われる身となりながらも、協力者から
の情報によって犯人に次第に近づいていくが・・・。


雰囲気は東野版「模倣犯」


同じ子を持つ親として復讐に立ち上がる父親の心境は痛いほど
理解できる。


現実にも同じような犯行が繰り返され、少年法や人権を盾に
成人すれば社会に解き放たれる凶悪犯たち。


被害者の人権は無視され続けているのにどうして?という
疑問が生まれるのも当然。


そういった矛盾に対して警鐘が鳴らされている。


ストーリー的には、前半部分で犯人も解明されてしまって
犯人探しというよりは、追跡劇中心に話が進む。


追うものと追われるものの逃避行が警察の追跡と絡み合って
緊迫度を増していく。


ただし、情報提供者に意外性を持たせたものの、全く独創性、
面白みのないラストには大いに不満が残る。


被害者の父親の心境に余韻を持たせるような工夫が欲しい。