「残虐記」

テーマ:
桐野 夏生
残虐記

勝手に採点 ☆☆☆


小学生時代に誘拐され、1年以上の監禁生活を

送った女性小説家小海鳴海。


35歳になった彼女の元にある一通の手紙がりつけられる。


それは長い獄中生活を経て出所した犯人からだった。


OUTやグロテスクなどにも共通する、女性の心理描写、特

に特異な性的嗜好から生まれる複雑な精神世界はユニーク。


特殊な環境下で精神的に結ばれた若者と女子小学生の間に

生まれた葛藤と苦悩。


決して常人には理解できない世界に圧倒される。


当時、検察官として事件に携わった関係者が後に彼女の夫と

なる奇妙なめぐり合わせや若者と生活を共にしていた聾唖者

の存在も物語の陰鬱さを一層引き立てる。


しかし、一体失踪の理由は何なのか。事件の真相は何だったのか。

それが明かされない分、消化不良感が残る。

AD
歌野 晶午
女王様と私

勝手に採点 ☆☆


オタク・引きこもり中年が偶然美少女の小学生と

知り合い、高い食事をおごらされるなど、奴隷の

ようにあしらわれる。


しかし、彼女の友人が次々と殺害され、身に危険

が迫ったことから、彼に対して心を開き、頼りに

するようになるが・・・。


「葉桜」同様、読者をだまし討ちにしてはいけない。


ストーリーの大部分が単なる妄想でした・・・、

チャンチャンではとても納得いくものではない。


確かに、途中で種明かしはされているものの、

妄想でのストーリーが自分勝手であるうえ、ラスト

にかけて納得感ある説明がなされていない。


なんだか、まとまりがなくなってしまって投げ出した

感が否めない。


冒頭部分のチンピラと思わせながら女子小学生、

若いオタクと思いきや中年オヤジだった意外性

が台無し。


もっと正攻法・王道で迫る本格ミステリーを期待したい。

AD
青木 和雄, 吉富 多美
ハッピーバースデー

勝手に採点 ☆☆☆☆☆


母親と兄から言葉の暴力や無視など、精神的

な虐待を受け続け、言葉を失った小学生のあすか。


祖父母の深い愛情と豊かな自然に育まれ、徐々に

本来の自分を取り戻し、強く大きく成長を遂げる。


教師や友人たちまでもが彼女に感化され、信頼

や希望、勇気を与えられ、遂には家族との和解

を果たしていく。


彼女を傷つけていた兄や父母が容易に変説して

いく様に違和感を覚えるものの、それを補って余り

ある爽やかな感動。


子を持つ親として、子供の自尊心、やる気を阻害

していないか身につまされる。


こちらが躾と思って話しかけていることも、彼らの

心の成長に悪影響を及ぼす可能性が否定できない。


それでも、お互いぶつかり合いながら成長していけ

ば、健全な関係が保たれると思う。


あすかと母親の間には押し付ける一方的なルール

しか存在せず、愛情が欠如していた。


この物語のそれぞれのエピソードに秘められた、

実在する子供たちの悲しみ、絶望、悲嘆を考えると

胸が締め付けられる。

AD
大石 圭
1303号室

勝手に採点 ☆☆☆


海の見える風光明媚などこにでもあるマンション。


しかし、その1303号室に入居した若い女性たちが、

次々と投身自殺を図った!


自殺の原因は? その部屋に隠された秘密とは!?


表紙を見てもお分かりのように一言でいうと

「マンション版貞子」


そのビデオを見ると必ず死ぬをぱくって、その部屋に住むと

必ず死んでしまう。


それも呪い殺されるような生易しいものではなく、物理的に

突き落とされる、もしくは引きずりおろされるイメージ。


ここまで来ると、さすがに怨霊がそこまでできるかという

疑問が沸々と湧いてくる。


おまけに遺品のイアリングを通じて、マンション以外の場所

にも出没できるなど、まさに神出鬼没。


母の自殺からたどった悲惨で異常な最後は、目を背けたく

なるほど気持ちの悪い描写のオンパレード。


蛆虫、死体、腐臭などなど。


ただ、理屈は必要ないのがオカルト・ホラーのお約束だろうが、

そこまで深い怨念が残る理由が今ひとつピンとこない。


それと最後までその存在が良く分からないのが、虐待を受けて

いる美少女。彼女は誰?死神?