「震度0」

テーマ:
横山 秀夫
震度0

勝手に採点 ☆☆☆☆☆


数千名の陣容を誇るN県警警察本部。

その幹部である警務課長が突然の失踪・・・。


不祥事が暴露することをおそれ、本部長をはじめ、県警

最高幹部たちがいがみ合い、対立し、不信の度を強め

ていく。


隠された失踪の理由とはいったい何か。


待望の横山氏の警察長編もの。


さすが期待に違わず、圧倒的迫力とリアリティ、複雑な

人間関係に吸い込まれていく。


本部長、警備部長、刑事部長などそれぞれの視点から

テンポ良く描かれ、彼らの苦悩が浮き彫りに。


おなじみのキャリアVSノンキャリアの対立に、彼らの奥様

方の生き様を重ねていくあたりはお見事。


切った張ったの逮捕劇とは無縁の警察を舞台とした人間

ドラマに人生における幸福の意味を改めて考えさせられる。

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「東京DOLL」

テーマ:
石田 衣良
東京DOLL

勝手に採点 ☆☆☆


孤高の天才ゲームクリエーターMG。


深夜のコンビニで出会った美少女ヨリに触発され、

新たなゲーム開発に乗り出す。











一方、彼が所属する会社が大手の買収攻勢に

晒され、存亡の危機に陥る。












生身の少女をフィギアのように弄ぶ三流エロ小説と

話題のM&Aを中途半端に絡め、良いとこ取りを狙った

意図がいやらしい。












おまけに頻繁に登場する車や服、時計に家具など、

ブランド品のオンパレード。




そこまで固有名詞を並べる必要がどこに!?












まさか実際に買っちゃったことをいいことに、取材費

という名目で必要経費として落とそうという作者の魂胆か。












それと最も気になるのが知らぬ間に会社の株式が勝手

に売買されている点。












非公開会社なら通常譲渡制限が付けられているはず。

取締役会の承認は一体どうした。











それを社長と主人公の二人の役員が知らないなんて。



とはいえ、とってもうらやましいばかりのアーバンライフ。

一度でいいから、金の価値を確かめるために散財して

みたいもの。

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市川 拓司
世界中が雨だったら

勝手に採点 ☆☆☆


いずれも死と密接に絡んだ猟奇的ともいえる中篇集。


美貌の同級生に隠された秘密、いじめられっ子の弟が実行した

復讐劇、気弱な青年が犯した大罪と危険な逃避行。


「いま、会いにいきます」のイメージで入っていくと、とんでもない

ドンデン返しを食らってしまう。


深い絶望の淵に微かな希望の光が射すようなストーリーで、

死体が絡む話題が多いので後味は決して良くない。


「乙一」テイストにかなり似通っている印象。


そんな中でも「琥珀の中に」は、彼女の目的は何だったのか、

また、彼の心境を考えるとなかなか余韻に浸れる作品。


一方、表題にもなっている「世界中が雨だったら」は意外性・斬新

さに乏しく、いじめを苦に自殺する少年の最後を淡々と描いている。


実際にはネクロフィリアっぽい題材で生々しいはずだが、幻想的な

悪夢を見ているようなマイルドさに落ち着いているのが救いか。

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松岡 圭祐
ミッキーマウスの憂鬱

勝手に採点 ☆☆☆☆


東京ディズニーランドに準社員として派遣された後藤は、

夢と希望に燃えていた。


「ビソーブ」という聞きなれない部署に配属されるが、やる気が

空回りして、周りから浮いた存在に。


そんなとき、ミッキーが誘拐される!?大事件が勃発する。


やっぱり読まない方が良かったかな。というのが第一印象。

夢は夢のまま現実を知らない方が幸せで楽しめる。


それでも、その現実は一読に値する。


夢と魔法の王国を支える人々の複雑な人間関係やアトラクション

運営の困難さ、会社組織での階級意識など赤裸々に描かれている。


なかでも滑稽なほどに思えてしまうのが「ミッキーマウス」。


ランドでは、れっきとした生き物であるスターとして華やかに扱われる

反面、それを演じる演技者、共演者の間には葛藤や反目も存在する。


かなりシリアスな現実を描き、なるほどと思わせる前半部分に比べ、

後半のミッキー捜索劇は安っぽいドラマ仕立てに。


特に調査部と称する連中を悪玉に仕立て、会社幹部まで巻き込んだ

ラストは、「水戸黄門」か!と突っ込みたくなる。


新米キャスト後藤の成長を人間関係やアトラクション運営と密接に絡

め、落ち着いたストーリーに仕立てた方が、前半部分のリアルさが生

かされるはず。


それでも、ディズニーランドで働くキャストの苦労と彼らの笑顔を作り出

すために転嫁された入場料、商品の価格の高さもなんだか納得。

浅田 次郎
椿山課長の七日間

勝手に採点 ☆☆☆


デパート勤務で婦人服売り場を担当する椿山課長46歳。


遅まきながら出世を果たし、美人の奥さんと一人息子、それに一戸建

てのマイホームを得て、忙しいながらも恵まれた人生だったが・・・。


彼を襲った悲劇は過労死。

あまりに未練を残した彼は、全く別人の肉体を借りて現世にもどるが・・・。


死んでしまった人たちが最後まで不憫でどうもすっきりしない。

もやもやとしたわだかまりが最後まで取れなかった。


あの世からこの世に一時的に戻って、未練を果たすという設定自体は

最近の流行で新鮮味なし。


一緒に戻った子供の生い立ち、気持ちなど、泣かせる浅田節は健在なも

のの、せっかく戻った世界で知ってしまう悲しすぎる現実。


それも大半が前半部分で判明し、最後までひっくり返ることもない。


同じサラリーマン、子を持つ親として同情してしまうし、なんとも物悲しい。

ここにスカッとする仕掛けが欲しいところ。


それともうひとつすっきりしないのが彼のお父さんの最後。

ここまで盛り上げてそれはないだろう。


あまりに可哀想な結末にあっけに取られたほど。

伊坂 幸太郎
死神の精度

勝手に採点 ☆☆☆☆


人間が死に値するのか調査をする音楽好きの死神。


彼が下す「可」か「不可」の判断によって人の命が左右される。

仕事に几帳面な死神が担当になった人間の生活を通して感じ

たものは何か。


まず、設定が面白い。

この死神が介在できる死はいわゆる不慮の事故だけ。


病死や老衰などにはタッチできないらしい。


主人公の死神はお馴染みの不気味なスタイルではなく、ごく

普通の一般人のような外見。


食事も睡眠も必要ないが、怪しまれるので食べたり眠ったりする。


調査もしないで「可」を下す同僚が多い中、彼は職務に忠実にある

ときは注意深く観察し、またあるときは生活をともにして密着する。


短編形式で描かれる物語は、意外性のあるものやミステリーチック

なもの、ハートウォーミングなものまでバラエティ豊か。


伊坂作品の特徴である仙台を舞台にした話も織り込まれ、全く飽き

させることがない。


この独特な雰囲気を醸し出す彼の作風は他人にまねのできない

稀有なもの。


クールなのに人情的、カッコいいのにユーモラス。

この憎めない死神はホントに身の回りにいるかもしれない。