ダン・ブラウン, 越前 敏弥
ダ・ヴィンチ・コード (上)

勝手に採点 ☆☆☆


全裸で謎の死を遂げたルーブル美術館館長ソニエール。


彼が残した難解なダイイングメッセージを解読するため、
ハーバード大学の宗教学者ラングドン教授がフランスの
暗号解読官ソフィーとともにその謎に挑む。


ラストが理解できない。え、どういうこと!?

見つけられたの、だめだったの?


確かにレオナルド・ダ・ヴィンチが彼の作品の数々に様々
な暗号めいた仕掛けを残したことは驚き!


最後の晩餐に女性が描かれていることも衝撃的。


ただ、ヨーロッパ文化やキリスト教の素養が全くないため、
著者の意図がどこまで理解できたか甚だ疑問。


ただ、許せないのが黒幕の正体。


後からじっくり読み返せば、なるほどタブーは犯していない
のかもしれないが、日本のミステリーに慣れ親しんだ者にと
ってはだまし討ちの感。


次々に降りかかる難問をクリアしていく様もタネ自体は良く
考えられたものだと感心するが、そこまでにして守るほどの
歴史的事実があったのか疑問に。


キリスト教やバチカンが抱える重要な問題扱い、ダ・ヴィンチ
ネタをふんだんにちりばめながら一級のサスペンススリラーに
仕上げた手腕は高く評価。


悲しいかなすべて理解できないのは読み手の問題か

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「炎と氷」

テーマ:
新堂 冬樹
炎と氷

勝手に採点 ☆☆☆

容姿も性格も全く異なる学生時代からの親友、
世羅と若瀬。

二人の共通点は金に対する異常なまでの執着心。

九州から上京し、闇金融業者を営む二人がある顧客
をめぐってバッティングしたことから訪れる悲劇。

久しぶりの新堂作品の王道。

闇金を舞台に繰り広げられるだまし合いで登場人物も
分かりやすい。

見るものを震え上がらせるような外観の大男、ホスト
クラブで成功する優男、キャバクラで人気の美女、気
の狂った色白のデブ、暴力団、チンピラetc・・・。

まさにオールスター総出演の感。

これはこれで楽しめるが、気になるのは友情を反故に
してまで取った面子なのに、ラストではなぜか友情に
回帰している点。

それなら最初から折半にすればよかったのに・・・。
策士、策に溺れるといったところか。

もう一段壊れた凄まじい展開を見せて欲しかった。

とはいっても、世羅と暴力団の血みどろ死闘は食欲を
なくすほどのスプラッターだけど。

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勝手に採点 ☆☆☆☆


人気時代劇シリーズ第二弾。


部下や手下たちとの息もぴったり合ってきて
脂の乗り切った長谷川平蔵が悪を斬る!


この編は強盗ついでに女を犯す盗賊葵小僧や女スリ師
のお富など女性にまつわる話がポイント。


それと平蔵の部下で兎忠こと火付盗賊改方同心木村忠吾
がその魅力を存分に発揮している。


仕事そっちのけで岡惚れした商売女に入れあげ、その
逢引の途中で偶然出会った盗賊たちを味方の協力で捕縛。


そんな手柄を立てるあたりは痛快そのもの。


さらに心憎い演出は、あまりの出来事に逆に恐れ入って
平蔵に真実を打ち明けるシーン。


あまりの優しさに感動。


また、スリの味を思い出してしまったお富への厳しくも
暖かい対応や襲われた商家を慮っての見事な裁きの数々。


まさに上司の鏡、人生の師と仰ぐべき人物像に感銘。

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伊坂 幸太郎
グラスホッパー

勝手に採点 ☆☆☆

違法な薬物を強引な手法で販売する会社へ入社した鈴木。
目的は妻をひき殺した社長の息子への復讐。

そこへ奇妙な殺し屋「蝉」や「鯨」そして「押し屋」が
入り乱れて繰り広げられる乱闘劇。

序盤の残虐描写に引き込まれつつも、中盤でのだまし合
いのような駆け引きがスピード感に乏しく中だるみ。

内容的にも、バイオレオンス的要素が強く、先を読むのが
不安になるような展開にページが思うように進まない。

「蝉」や「鯨」の代わり映えしない人生観、世界観を繰り
返されても、結局すべて罪悪感のせいで片付けられるあた
りに薄っぺらい印象が拭えない。

それでも「押し屋」の擬似家族ごっこはなかなか。
特に奥さんと子供の不思議な感じが魅力的。

最近ちょっとマンネリ気味の展開に飽きつつも、最後まで
きちんと読ませる技量は○。

浅倉 卓弥
四日間の奇蹟

勝手に採点 ☆☆☆


将来を嘱望された若手ピアニストが、留学の地オーストリア
で日本人家族を暴漢から守るため、片手の薬指を犠牲にする。


生き残った少女とともに失意のうちに帰国するが、偶然、彼女
の中にある才能を見出す・・・。


そんなある日、訪問先の病院で学生時代の後輩に再会し、不可
思議で神秘的な経験を。


感涙は訪れなかった。

やはりキーネタが他のヒット作と同様であることが原因。


主人公が不幸な事故でピアニスト生命が絶たれた若者っていう
のも使い古された設定で新鮮味に欠ける。


少女の心理描写なんかも、知的障害を抱えているという設定か
らおざなりになりすぎて雑。


死を自覚した後輩も何かアッサリしすぎだよなぁ~。
ろくに話もしなかった初恋の人より、元旦那の方が大事じゃない?


ラストで妙に普通になってしまった少女にも興ざめ。


もう一捻り、二捻りないと「なーんか読んだことあるような」的
小説からは脱しきれない。

河合 香織

勝手に採点 ☆☆☆☆☆


障害者たちの性の悩み、告白に真正面から取り組んだ
話題作。


数々のエピソードに潜んだ障害者に対する現代社会の
差別、蔑視といった問題点と彼らの生き様が浮き彫りに。


なかなかこういった内容は表現が難しく、一般的にタブー
視されてきたなか、インタビュー形式で吐露される現実
が重くのしかかる。


なかには、健常者の妻を持ち仲睦まじく暮らしているご
夫婦も紹介されていて心休まる場面も。


しかし、そういったケースはレアでやはり厳しい現実に
直面してる方たちが多いのが現実。


人は誰でも人を愛し人から愛されたい願望を抱えているが
それは誰でも同じこと。


そこにスポットライトを当てた功績は大きい。

貴志 祐介
クリムゾンの迷宮

勝手に採点 ☆☆☆

突然オーストラリアの荒野に投げ出され、死のロールプレイング
ゲームに巻き込まれた元証券マン。


飢えと大自然に翻弄されつつも、偶然出会った耳の不自由なパート
ナーと協力し、迫りくる追っ手から逃れ脱出することが出来るか!?


設定はあまりに非現実的。

ところが読み進めるうちに結構引き込まれていく。


特に人食いチームの卑劣で残酷な振る舞いからの逃避行は手に汗握
る白熱した展開。そんなことあるわけないけど、あったら怖い!


それに引き換え曖昧なのが首謀者の目的。
憶測だけで描かれていないので消化不良の感。


想像するに本プランを企画実行した納得できる理由は見つからなかっ
たのでは?


さらに腑に落ちないのはパートナーの存在。


幾らなんでも、義眼に小型カメラが仕掛けられていたなんて、あまりに

アイロボットすぎる!?

森 博嗣
工学部・水柿助教授の逡巡

勝手に採点 ☆☆☆☆


某国立大学の研究者・教官だった水柿君がひょんなこと
から作家に転じるまでの軌跡(奇跡?)を描く自叙伝。


作家になるまでの過程はもちろん、ミステリー小説に
まつわる興味深い話が満載。


登場人物やミステリーの解明にはお約束事が多く、思った
ほど勝手気ままには書けないし、創作の幅も狭いことを実感。


そうした制約を踏み越えて良い作品を残すことはそうそう
簡単なことではないらしい。


それと業界の裏話もなかなか楽しい。


サイン会や取材旅行、担当編集者の話などは大変だなぁ~と
思ったり、なるほどと感心させられたり、爆笑させられたり。


さらに面白かったのが稼いだお金の使い道。
やっぱり金持ちってそういう方向に進むんだな。


そういった一見プライバシー的に言いにくいことも、おおっぴ
らに描かれているところに好感が持てる。


でもやっぱり羨ましい。節税対策もあって車4台持ってるなんて。

麻生 幾
COケース・オフィサー (上)

勝手に採点 ☆☆☆


静岡県警の万年警視名村は、中東に独自の情報網を構築し、
日本赤軍を追い詰めた伝説のテロハンターとしてその名を
轟かせていた。


そして、その彼に警察庁から再び緊急招集がかかる。


目的は国内で引き起こされるバイオテロの阻止。かつての
情報提供者「晴香」とともに実行犯を追い詰める二人だが・・・。


久々の麻生作品だったが、期待したほどの内容では・・・。


まず、前半部分の舞台となる中東やヨーロッパでの重要場面が
表面をなぞっただけの淡白さが隠せない。


各国とのパイプ作りも、相手国側の協力の動機が名村に対する

哀れみや同情ではいささか情けない。非情な世界のはずだろ・・・。


さらに後半で、晴香が情報提供を行うタイミングも取って付けた
ようであまりに不自然。


情報提供者とは日ごろから絶えず接触して、いざというときに
必要な情報を受け取るものじゃない?


それを十数年もほったらかしておいて、連絡を取った途端に重要
情報の鍵を握っているなんて。


イラク軍の情報部隊の元大佐とアルカイダが首謀者というのも、

どうも手垢が付きすぎた感。


それでも、天然痘ウィルスが引き起こす出血性の症状はかなり

リアルでバイオハザードのような臨場感は楽しめる。


また、展開も速いのであまり飽きさせることなく、終盤まで一気に
引き込まれていくスピード感はさすが。


情報戦がらみの陰謀ものはアメリカにお任せして、国内を舞台に

警察内部で展開させるシリアスなドラマを期待したい。