ブラック・アイド・ピーズ ~ ザ・ビギニング | あれも聴きたいこれも聴きたい

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過去記事メンテ中。

 可愛らしいジャケットです。時代考証がよく分からなくなってきますが、このアルバムが発表された当時はすでにもっと実写に近いCGの時代でしたから、わざわざビットの荒い似顔絵を持ってきたはず。その狙いは過たず、見た人の心に明かりを点します。

 ブラック・アイド・ピーズの6作目のアルバムは、前作から1年ちょっとという短いインターバルで発表されました。前作が「ジ・エンド」でしたから、その続きで「ザ・ビギニング」と名付けられました。普通は逆ですけれども、そこが彼ららしい感覚です。

 全米チャートでは初登場6位となりましたが、それが最高位でした。普通に考えると大ヒットですけれども、半年間シングル・チャートを占領していたグループにしては残念な結果に終わりました。ミリオン・セラーにもなりませんでしたから。

 このアルバムに対する批判のうち最大のものはファーギーの出番が少ないというものでした。花も実もあるファーギーの当時の人気はすさまじく、音楽的にはリーダーであるはずのウィル・アイ・アムなんかより圧倒的にブラック・アイド・ピーズの顔でした。

 ファーギーは結局本作品を最後にグループから脱退します。ソロでも大成功していましたから、わざわざバンドに残ることはなくなっていたんでしょう。言われてみれば、確かに本作品での彼女の出番は少ないです。いろいろあったんでしょうね。

 もう一つの批判はオートチューン問題です。日本ではパフュームでお馴染みのボーカル補正機をウィル・アイ・アムが多用していることが物議を醸しました。ファーギーのハスキーが入った肉感的なボーカルとの対比が際立つ面白いボーカルですけれども。

 私が一番気に入った批評はオールミュージックのジョン・ブッシュのもので、それは前作のヒット・シングル「アイ・ガッタ・フィーリング」の長い影が全体を覆っているというものです。デヴィッド・ゲッタの影が濃いという主張です。これには思わず膝を打ちました。

 地上最大のDJと言われたデヴィッド・ゲッタは本作品では1曲のプロデュースを引き受けているのみですけれども、確かにアルバム全体のトーンはゲッタ・サウンド的です。「モンキー・ビジネス」の頃のブラック・アイド・ピーズとはかなり異なるトーンです。
 
 そんなこんなで結構散々なアルバムになってしまいました。しかし、彼らの作品のクオリティーはさすがに高いですから、これはこれで十分楽しいアルバムです。重めのしゅっとしたファンク・リズムにオート・チューン・ボーカルはよく合います。

 今回はインターポレーションも一部復活しましたし、シックのサウンドをサンプリングしたりもしていて、ちょっとほっとしました。アップルのフィリピン物語も登場して、洗練されたサウンドを引き戻してくれてもいます。彼らのポップでオーガニックなヒップホップは健在です。

 本作からの二枚目のシングル「ジャスト・キャント・ゲット・イナフ」は東日本大震災のわずか1週間前に東京でMVが撮影されました。初のオンエアは日本へのメッセージを添えて震災の5日後に行われました。いろいろな思いがこみ上げる感動的なMVです。

The Beginning / The Black Eyed Peas (2010 Interscope)