熊本紀行2 肥後の若者
今回の訪問で、敏腕制作の松岡さんのおかげで、あちこちとパブリシティができました。
最初に、後援してくださる熊本日日新聞さんを訪問し、文化部の記者の堀江さんに「ダム」について聞いていただきました。まあ、しゃべりまくって方言のことやダムのこと、私が資料にした「山が笑う 山が笑う 村が沈む―ダムに揺れる五木の人々」熊本日日新聞社編についても話しました。この本は、ダムに関係する流域の人々の生活の言葉がおさめられています。そしてダムをめぐる住民の動き、裁判の動きもコンパクトにまとめられているので、ぜひ、お勧めです。堀江さんはとても若い記者ですが、熊日に書かれた木下順二の特集記事など、おお!という感じでした。上司の岩瀬さんは、50代なので、遊民者世代なので、昨年のダムの劇作家協会のリーディングに、円城寺さんが出たと聞き、羨ましがってました。えへえへ。
その後、熊本市民劇場の中村さんを訪問。演劇鑑賞会の活動をずっとされてこられた中村さんとは青年劇場の創立記念パーティーで会いました。演劇鑑賞以外にも、社会問題に関心が深い中村さんは、私に「立野ダム見学会」というチラシをくれました。にゃにゃんと!川辺川問題も片付かないうちに、立野という白川上流のダム計画が立派にできていたのです。あんぐり。http://www.qsr.mlit.go.jp/tateno/damujigyo/2013_tatenogaiyou.pdf
ダムにも出てきますが、川辺川ダムを巡って開かれた住民説明会、シンポジウムの激論は熊本県のホームページで読むことができます。紛糾する様子、司会の県の次長さんのすさまじい仕切り加減、野次まで書いてあるこの議事録はヘタな芝居よりもドキドキします。そして、国土交通省に紋切で答弁されても、ひるまず数々の具体的な対案を寄せていく住民パワーに圧倒されるのです。こういう討論の素晴らしさ、双方の工夫や熱意、作戦などは、今の中央の政治的状況ではありえない力強さです。その渦中にいたという、シンポジウム参加者だった方に翌日、八代で出会うことができました。
八代子ども劇場の丁畑幸美さんは、魔女の絵の名刺を差し出して、にっこり笑いました。子どもの文化地域コーディネーターもしていると名刺にあります。八代の町中にある、子供劇場の事務所には夏休みが始まったということで、子供たちがゾロゾロ、学童保育もやっているようで子供たちをリクリエーションに送り出し、喧噪が静まった居心地のよい事務所で、お話を聞くことができました。事務所にはこれから九州巡演が始まる、劇団仲間の「空の村号」のポスター。福島の飯館村を舞台にした篠原久美子さんの作品はこの夏、全国を駆け巡っています。福島の問題がしっかりと伝えるであろう舞台の浸透に、演劇の力を感じました。ダムについて話すうちに丁畑さんが、シンポジウムの事を語ってくれました。「とにかくみんなで団結、いろんな派閥も川をだめにされたら終わりだという認識で、発言する人を応援するために、住民説明会の人吉のホールをぐるりと取り囲んだ。最後には会場に入れないほどの人が詰めかけた。国土交通省はものすごい強いので、こちらも数字を積み上げて、合理的な説明で対抗したんです。そういうデータを集めるのに、行政側も協力した。地域の財産としての川を守るということで一致団結しました。」
私も興奮しましたが、アテンドしてくださったゼロソーの松岡さん、吉丸さんも、演じるシーンをもっとも良く知る人に緊張気味でした。ゼロソーの主催は河野ミチユキさんで、社会問題をテーマにしたオリジナル作品を多数、創作しています。リージョナルシアターシリーズで、東京などでも活動歴もあります。水俣をテーマにした「アクワリウム」という作品は、汚染によって奇形になった魚を集めたアクアリウムが舞台。この題名には「悪は利を生む」というメッセージが込められていると聞き、すごいセンスがあるなあと感心。来年度2015年には河野さんの作品は、ワンツーワークスの古城さん演出で、東京公演されるとのことです。地域と共に歩む演劇、根を下ろしてすっくと立つ若い演劇人に、日本の将来を託そう!と感じましたね。本当に、最近、有望でまっすぐでまじめで真摯な若者に出会い、おばさんは嬉しい!中年も頑張らねば~そして次には、八代市内で、今度は戦う老人に出会いました。(続く)


