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春が過ぎて、
高校三年生の夏休みに突入しました。
ある日、太田先生が
私の通う予備校まで
車で迎えに来てくれました。
そして夏期講習の日程表を見て
「ちょっと遠出しようか?!」
と言います。
「え〜、私受験生だよー!」
などと返事をしつつも、
珍しい先生からの提案に
ニコニコして喜んでいる私がいました。
次の日の早朝、
バッグに荷物を準備し、
迎えにきた先生の車に乗り込んで、
出発です!
「で、先生、どこに連れて行ってくれるの?」
「まあまあ、ついてこい!」
FMラジオをつけると、
ノリの良すぎるDJが独りで楽しそうに
しゃべり続けています。
先生とふたりで笑いながら聴いていましたが
ちょっと退屈になってきたので、
私は先生に聞きました。
「まだ?」
「まだや。」
しばらくして、
今度は早起きして作ったサンドイッチを
ひたすら運転する太田先生の口にねじ込みながら、
また私は聞きます。
「先生まだ?」
「まだや。」
車は名阪国道を
ひたすらひたすら北東へ進みます。
「先生、まだ?」
「まだや。」
「……」
遂に車は亀山市の関まで来たところで、
ようやく止まりました。
ここにはホンダの亀山工場で働いている
先生の友人がいて、
その友人の寮までやってきたのでした。
その友人はお付き合いされている女性と共に、
暖かく迎えてくれました。
「わあー、若いー!羨ましいなあ!
かわいいね!よろしくね」
緊張して固まっている私に
本当にとても優しく構ってくれたので、
いつも太田先生から
「ガキだなー」とか「若すぎる」なんて
からかわれて真に受けていた私は、
ここではほんのちょっと
背伸びをせずにいることができました。
そうして高校生の私を決して軽視することなく
接してくれるお兄さんお姉さん達と
すっかり打ち解けて、
マニアックな車の整備について
教えてもらったり、
バッティングセンターに行って空振りしたり、
初めてサーキットを目の前で見学して
そのスピードと迫力に感動したり、
楽しい時間を過ごし、
亀山を後にしました。
帰り道は先生も私もクタクタで、
会話も途切れ途切れになってきました。
そんな頃、
家までかなり
近づいてきたところだったけれど、
「休憩しよう」
そう先生が言って、
入ったのはラブホテルでした。
【次へ続きます】
