7/12-14にかけてRAY ASIA TOUR 2024の1カ国目として韓国ツアーを敢行した。日本でもじわじわ知られ始めたアジア圏のライブアイドル事情を韓国ツアーの事例から体験記的に記します。

 

 

韓国のライブアイドル事情

現地のプロモーターによると韓国のライブアイドル数は140グループ程度、ライブアイドルファンは600人程度とのことで、日本の1/10程度かそれより小さい規模感と想像できます。そのほとんどが日本のライブアイドルのカバーを中心にしたグループで、またマネジメントスタッフが着くようないわゆる事務所所属的なグループはごく少数で、ほとんどがメンバーによるセルフプロデュースとのこと。日本とは数字以上に質的な違いがありそうです。

 

音楽シーン、ライブハウス事情

韓国のライブアイドルも日本と同様ライブハウスが活動の中心ですが、ライブハウスの事情も日本とは大きく異なりました。インディーバンドシーンもまだ規模感が小さく、そのためライブハウスも経営的に潤沢ではありません。ツアー初日の会場が、音響・照明がワンオペでまず驚いたのですが、サポートスタッフもおらず(受付はイベント主催者が担当)、会場の鍵開けからクローズの清掃まで全て1人で回していました。音響・照明のワンオペもなんなくこなし、途中ステージトラブルも一人で舞台に上がって対応し、我々のオーダーにも嫌な顔ひとつせず対応してくれる姿に、とても感心しました。

 

こうした状況は、一方でシーンの強いハングリー精神、DIY精神を育てているようにも感じました。今回RAYを韓国ツアーに招聘してくれたLOUD CARNIVAL(以下LC)は平日日中サラリーマンをしながら兼業しているイベンターです。在韓中の通訳やサポート等は彼の仲間をかき集めて丁重にもてなしてくれ、イベント当日は、会場スタッフに代わって主催者が僕に音響周りの技術的サポートをしてくれたり、RAYの物販・チェキで困ったことがあると共演グループのスタッフや周囲のお客さんが駆けつけ通訳して対処してくれたり、さまざまな状況で助け合いムードがありトラブルなく進行できたように思います。

 

何人もの関係者、バンドマンが「小さいシーンだからこそ自分たちでできることを精一杯頑張っています」と言っていたことが印象に残っています。お客さんと運営・メンバーとの結束力も固く、作り手サイドの思いがお客さんにまで浸透しているように感じました。

 

またお客さんの女性率が半数程度と高く、憧れの対象としてライブアイドルのファンになり、いつしかセルフプロデュースの形でステージに立つケースも多いと聞き、ここにも力強いDIY精神を感じます。一方、セルフプロデュースはせざるを得ない事情からそうなっているだけで、いかにマネジメントチームを当たり前にし、いかにプロ意識を醸成していくかが今後の課題とも話していました。

 

日本からの影響

韓国のライブアイドルは多くが日本のライブアイドルをリファレンスとし、多くのカバー曲を披露しています。アイドルもファンも日本のライブアイドルの動画やSNSを見てパフォーマンス、振る舞い、オタ芸を学ぶため日本と日本語に明るい人が多く存在します。フロアでは日本と同じようにMIX、コール、モッシュが繰り広げられ、中には韓国語にアレンジしたMIXも聞こえ、定着したのちに独自変化を遂げているようです。

 

今回ツアーのイベンターLCは渋谷CYCLONEで見たライブでアイドルとバンドが共演してることに衝撃を受け韓国での開催を目指したとのこと。日本では珍しくないバンドとアイドルの共演も韓国ではまだまだ事例が少なくLCが旗振り役となり少しずつ浸透しているそうです。

 

 

LCが用意した会場BGMで流れていたのは明日の叙景、ANORAK!、Fall of Tears、春ねむり、Finger Runs、カイジューバイミー、sora tob sakana、situasion、airattic、MIGMA SHELTER等々とここでも日本の音楽、アイドル文化への理解の深さを感じました。現地のバンドマンたちがフェイバリットとして挙げた日本のバンドはOaktails、envy、naiad、OTHERSIDE、MERZBOW、BOREDOMS、ゲロゲリゲゲゲ等(重いのばかり笑)。

 

実際にライブをしてみて

ツアー3公演とも、大きな歓迎を持って迎え入れてもらえました。盛り上がる曲が喜ばれる傾向があるようには感じ(オタ芸の定着と表裏かも)、今後の海外公演では国の文化も踏まえてセレクトする必要があると学びました。アイドル対バンとバンド対バンで(ポジティブな意味で)反応が異なることも日本に近い感覚で収穫です。

 

特典会については、日本語が分かる方が多かったことでスムーズに進められましたが、そうでない国での特典会はまたハードルが上がるなと思いました。

 

3日目は韓国で最も人気のあるライブアイドル2組NEKIRU、WAGAONとのスリーマンということもあり会場は満員で、フロアの熱気もツアーを通して最高潮でした。3組合計10名でRAYの「バタフライエフェクト」を披露した時は涙を流している方が何人もいました。

 

 

最後に

ハングリー精神、DIY精神をもとに結束力で盛り上がっている、というのが韓国シーンの強い印象でした。アイドルも関係者もファンもみんな真っ直ぐで、きっと楽なことばかりではなく悩むこと、苦しいこともありながらがむしゃらに前を向いて頑張っているのであろう姿は、どこか2016年あたりの日本のライブアイドルシーンを思い出しました。自分たちにそうした思いが無くなってしまったとは思いません、ずっと大切にしてきたものを改めて思い出したような気持ちです。今回の訪韓でたくさん学び、たくさんの愛情を受け取りました、何らかの形で韓国の皆さんへ恩返ししたいと思っています。