正午。
僕は市内で中堅どころの総合病院駐車場にいました。
病院自体に用事があるわけではなく、待ち合わせ場所に指定されたからです。
姉に。
だからしょうがなく。
です。
従うまでです。
どうしてかって?
もちろん姉が怖いからです。
休日のまどろみを楽しんでいた早朝8時。
「12時までに病院の駐車場で待機しとけよ。遅れンな」
凄みの効いた姉からの連絡。
僕は思わず何もかも捨てて国外への逃亡を試みようと荷物をまとめたくなったほど震えあがりました。
大袈裟ではございません。
繰り返します。
大袈裟ではございません。
12時40分。
真っ赤なレクサスで颯爽と登場した姉に僕は思いました。
(そんなあってないような時間指定すンならせめて12時30分とかにしろよ、ボケが、痴呆かよ、クズビッチ)
もちろん口には出しません。
弟ですもの。
(。・ω・o)
台北から帰ってきたのでその土産を僕に渡すためにここに呼んだらしいのですが、僕は姉に会いたくなかったのでできれば郵送でお願いしたかった・・・なんてことはもちろん言いませんよ。
弟ですもの。
(。・ω・o)
「元気しとけよ」
と車から降りずに車上で俺にブツを渡すと滞在2分弱でこれまた颯爽と立ち去っていった。
あのう。
僕。
ここに来るまで車で1時間弱。
で待ち時間40分。
で。
あなた滞在2分て。
ほんと、もう郵送でいいじゃないですか、もう。
なんて愚痴も飲み込みます。
弟ですもの。
(。・ω・o)
さて、帰るかな。
車に乗り込む前に思い切り深呼吸。
で、眼前の病院を見上げて・・・おや。
この病院。
なんか昔に足しげく来たことが・・・。
そんで、なんかあったようななかったような。
・・・。
思い出しました。
それは。
20年以上前のことです。
僕がまだ営業畑にいた頃。
地域の引継ぎで同僚と僕の担当地区を同行することになりました。
順調に得意先を消化し午前中最後に立ち寄ったのが当時市内で3番目に大きな総合病院、ここでした。
南館と北館。
南北に長い通路で繋がれた院内、事務室へは北館西口から入るのが通例となっていましたが時間が押していたため若干近道となる北館東口から入ろうと自動ドアに触れようとしたその時でした。
「止めよう。止めよう。たくさんいルわ。まずいわ。タイみング悪いわ」
同僚が顔面蒼白になり震えだしました。
変なこと言うなよ、行くぞ。
なんて引っ張っていく雰囲気ではありません。
さりとてアポ無視して帰社するわけにもいかず、彼をその場に残し僕ひとりで館内にはいっt
「げぇぇぇぇぇぇぇぇぉぇぉえgdkjklfds;lkjs」
振り返ると同僚は嘔吐していました。
その後のことはあまり覚えていません。
彼に何が見えてたのかも確認した記憶もありません。
なんて20代の頃の甘酸っぱい思い出です。
・・・って、別の意味で甘酸っぱいだけで、普通に考えて恐怖譚だろ、これ。