〇昭和41年文芸春秋刊。池島信平の司会で進められたラジオ番組対談本。

〇池島信平 文芸春秋社

〇小西四郎 東大史料編纂所教授

〇津久井竜雄 著述家

〇松本清張 作家 

 

●松本 やはりそれは行動力でしょうね。それと秩序にあまり拘束されないクラスというのではないでしょうか。たいてい維新というものは、私は徳川家康がタネをまいたと思うのです。(笑)というのはあれはずっとご承知のような、非常に苛酷に大名からいろいろ財力を取り上げているでしょう。

 

参勤交代や、河川の治水だとかいろいろやらされて、大名がだんだん貧乏していくわけですよね。西国の大名のほうは密貿易してあるていど経済的に豊かになったが、それ以外は疲弊してしまって、とにかく蔵元とか、札差にいろいろ頭をさげなければならないような状態になっていた

 

それから武士というものも、槍や刀がいらなくなって、社交とか、茶だとか行儀だとかそういうことばかりやっているから、もう西国以外の者は藩の疲弊で、金を借りて、それに四苦八苦する。下の旗本は旗本で、あの辺の蔵元に頭が上がらない。それは当然あのようになりますよね。

 

〇西国の大名は抜け荷や密貿易で自立の基礎を養っているが、その他の大名・旗本はもう疲弊して戦争どころではないと松本清張は言っています。