人権倫理研修 | めいとく日和

めいとく日和

MEITOKUBIYORI 
社会福祉法人明徳会
STAFFBLOG

出張復命書

           平成 22年 7月 29

            

                                                       氏  名        H.Y 印

  このたび、下記により出張したので、その概要を報告します。

主催者

熊本県知的障がい者施設協会

用 務

「施設職員のための人権倫理研修会」

用務先

熊本県立大学中ホール

期 間

 平成22722日(木)

用務の概要(会議等の概要)

~見つめなおそう 支援のあり方を 人権について学びながら~

<趣旨・特徴>

 施設における虐待や人権侵害を防止するために、一人ひとりの支援者が自己の支援を振り返る。

 日本知的障がい者福祉協会の危機管理委員ならではの問題に着目出来る。

<午前の部>

全体会:「知的障がい者支援における権利擁護」

講師 :O大学大学院 教授

内容 :一口に人権と言ってもその内容は多様。知的障がい者の生命・生活を守る権利

    養護に関して何を(対象)、なぜ(根拠)、どのように考え(対応策)、行っていく

べきか(実践)について、リスクマネジメントとコンプライアンスの視点を交え

た講義。

1、権利擁護の必要性

認知症高齢者や知的障害者、精神障害者など判断能力の低下した人々は、様々な場面で権利侵害を受けやすく、また、いったん権利侵害を受けてしまうと、自信の力では権利の回復が難しい。そこで、侵害からの救済とともに、侵害されないようにその権利を擁護することが極めて重要。

2、権利侵害の実例として

「消費者被害」

情報不足や判断能力の低下につけこまれる。

「経済的虐待、財産搾取」

保護者や親族が障害年金を勝手に使う、障害者の死亡後に親族間で財産を奪い合う。入所施設では、印鑑や通帳を施設が管理している場合が多く、横領や寄付の強要が起きる場合がある。


・施設で利用者のお金を預かることは非常にリスキーである。→本来なら、成年後見人が管理すべきであるが、成年後見制度の不備が原因。

「身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト」

殴る蹴るなどの身体的暴行、強制わいせつ行為などの性的暴行、入浴をさせない・食事を与えないなどの怠慢、暴言、脅迫などの心理的虐待。


・知的障がいを持つ女性従業員に会社社長が暴行、強姦。→本人からの証言が乏しいなどの理由で、刑事的には無罪。

・また、「いじめ」という言葉に関しても、本来その内容が持つ本質を言葉が隠していると説明がある。本来は損害賠償の対象であり犯罪である。

・虐待が多いのは、障害者<高齢者 で、親族以外の保護者からの、経済的虐待が怒りやすい。

・サービス提供過程における契約違反。→契約に対する職員の意識が薄いのでは・・・

2)擁護されるべき権利

 大きく分けて、「人権」と「社会福祉の権利」。また、新しい人権として「個人の尊重」と「幸福追求権」が深く関わってくる。

現場では、人権侵害と支援の質が混同している。例として・・・

作業室から利用者が出て行く。→その先には階段があり、危ない。→支援員が大きな声でその利用者の名前を呼び、行動を制止。→外部からの人がいれば個人が特定(この施設を利用しているなど)でき、人権侵害にあたる。と、言う意見(とある権利擁護団体)もあったが、これは、「支援の方法論」であり、人権侵害にあたらないと説明があっている。

3、知的障害者の自己決定について

・権利擁護における基本理念においては「代行決定」ではなく「自己決定の支援」である。しかし、利用者の中には意思決定能力がまったくない場合があることは否定できないが、本当に決定能力がないのか? 職員のコミュニケーションスキルが不足しているだけ? 本人のパターナリズムは? 安易に決めつけてはならない。

・「代行決定の落とし穴」として、家族であっても、成年後見人などでない限りは法的根拠がなく、家族による事務管理にすぎない。

注意したい「同一化」として、家族による「本人の同一化(私がこう思うから、この子もきっとそう思うはず・・)」と、「財布の同一化」が挙げられている。

 家族による判断代行は、危険性と妥当性との微妙なバランスの上に存在している。(が、当然家族が決定できるのは20歳未満まで)微妙なバランスなうえ、熱心な支援員が強い「思い(家族より、利用者の気持ちが分かっているなど)」を持って接すると、家族、支援員の間にズレが生じやすい。強引な誘導にならないよう、一瞬立ち止まって、自己決定の侵害の可能性がないか?冷静に判断を行う必要がある。

<午後の部>

全体会:「本物のみ最後に残る」~人として、専門職として~

講師 :長崎県 S学園 施設長 

内容 :職員としての考え方や福祉サービスという言葉に幻惑され、利用者支援というこ

    とを誤解している場合が多いことを強調。その他、セーフティーマネージメント

    や問題や課題に対処するために、問題解決計画書の作成方法説明。

1、まずは、自分を知り、認めること

 (1)相手を理解する前に、自分を知ること

  ・教育分析 ・自己覚知は専門職として必須科目 ・自己受容できない人に他人は受

容できない。 ・セルフコントロールの重要性(ストレス・うつなど)。

(2)「自分にないもの」ではなく「自分にあるもの」で勝負する。

 ・弱点の修正よりも強みを生かす方が効率的 ・得意分野が存在感を高める ・適材

適所から適齢適所へ ・一度でも逃げると逃げることが癖になる。

(3)相手を変えようとする前に自分が変わること

 ・他人は自分を映す鏡 ・相手の立場で考えると理解が深まる。 ・見方を変えれば

考え方が変わる、考え方が変われば心が変わる、心が変われば行動が変わる。

・われ以外、みなわが師

2、何よりも大切なことは理念、考え方

 (1)福祉はサービス業という言葉のまやかし

  ・それを証明した自立支援法憲法控訴 ・福祉と商売では意味が異なる言葉「サービ

ス」

  ・自立を阻害するサービスもある

  ・真の利用者本位とは

 (2)誤解・歪曲された福祉用語

  ・大いなる誤解の言葉「受容」

  ・平等という名の不平等。(公平であるべき)

 ・差別はいけないけど、区別は必要。

 (3)満足感、幸福感は人によって千差万別

  ・個別的、主観的なもの

  ・人はみな同じ人はみな違う

  ・地域生活は天国にも地獄にもなりうる

  ・施設であっても地域であっても

<感想>

貴重な時間を頂き、またこのような研修に参加させて頂き、ありがとうございました。「人権倫理研修会」とテーマとしては難しい分野でしたが、特に前半のN先生による講義は、社会保障分野のスペシャリストという肩書から、法律的なとても難しい講義を予想していましたが、実際は職員(支援員)の目線に合わせて現場からの意見をフィードバックさせたような内容であった為、率直に頭に入ってくる説明でした。「人権」というものを、普段から何となく捉えていると至る所に落とし穴があり、ご利用者様の権利を意図せず侵害していることの多さに驚きました。「人権侵害と支援の質」においては、支援をする側としては常に何か引っかかったような感覚があり、そのひとつひとつはグレーゾーンが大部分を占め、ご利用者様とのやり取りの中ではっきりと「これは支援です」と言い切れる内容がそう多くはないことに気付きました。

また、家族との関係性についても講義で触れており、意見要望や苦情(ご自身、もしくはご利用者様の代弁者として)が、私たちにとっての大きな財産であることの再確認が出来ました。ここで得た情報や学んだことは毎日の支援に関わる大事な部分である為、機会があるごとに現場で伝えて行きたいと思います。