こんにちは。マイスターの佐藤です。
今回はGR86のスピーカー交換です。
すでにオートバックスでカロッツェリアのサイバーナビ AVIC-CQ912-4が取り付けられていましたので、今回はこのサイバーナビを活かして本格的なフロント2wayマルチシステムを構築します。

今回のテーマは、単純にスピーカーを交換して音色を変えるだけではありません。
情報量、分解能、定位、低域のレスポンスまで含めて、スピーカーが持っている能力をしっかり引き出すこと。
そのために取り付けだけでなく、ドアの音響処理からクロスオーバー、タイムアライメント、左右独立EQまで追い込んでいきます。
BLAM Signatureを選択
当初はBLAM LIVEシリーズのL165Pを取り付ける予定でした。
ところがお客様と今後のシステムアップについて話していると、
「後々は3wayにもしてみたい」
という話に。
それなら今の段階から、もう一段上のユニットを使っておいた方がいい。
ということで急遽変更したのが、
BLAM Signature 165 S85 A
です。
Signatureシリーズの魅力は、単純に高域がきれい、低音がよく出るというだけではありません。
実際に鳴らしてみると、音の立ち上がりや減衰、細かなニュアンスの再現力が高く、音源に含まれている情報をかなり細かく拾ってきます。
いわゆる分解能の高さが非常に分かりやすいスピーカーです。
ひとつの音として重なって聴こえていたものが、それぞれ別の音として見えてくる。
このあたりは上位モデルならではですね。
Signatureツィーターを純正位置へ
ツィーターは純正位置へ取り付けます。

専用のマウントを製作してしっかり固定。

完成後は純正グリルの中へ収まるため、車内の見た目はほとんど変わりません。
しかし今回はサイバーナビをネットワークモードへ変更し、ツィーターとドアウーファーをそれぞれ独立して駆動します。
見た目は純正然としていますが、中身は本格的な2wayマルチシステムです。
D-Baffleとデッドニング
ドアウーファーの取り付けにはD-Baffleを使用します。

スピーカー交換ではユニットそのものに目が行きがちですが、その性能を引き出すうえで非常に重要なのが取り付ける土台です。
スピーカーはコーンを前後に動かすことで音を作っています。
当然、その反力は取り付け部分にも掛かります。
せっかく高性能なユニットを使っても、取り付け部分やドアパネルが一緒に動いてしまえば、入力されたエネルギーを正確に音へ変換できません。
そこでドアもしっかりデッドニング。

不要なパネル振動を抑え、スピーカーから発生するエネルギーをできるだけロスなく車室内へ送り出せる環境を作ります。
そしてBLAM Signatureの165mmウーファーを装着。

カーボンコーンがなかなかいい雰囲気です。
そしてこのウーファー。
実際に鳴らしてみると……
とにかく低音がよく出ます。
ただ低音の量が多いという意味ではありません。
低いところまでしっかり沈み込みながら、ベースの音程、キックの立ち上がり、その後の減衰まで潰れにくい。
低域の量感と分解能が両立している。
今回、Signatureに変更して特に大きな違いを感じた部分です。
サイバーナビをネットワークモードへ
取り付けが終わったら、ここから音響調整です。
AVIC-CQ912-4をネットワークモードへ設定し、ツィーターとウーファーを個別に制御します。
最終的なクロスオーバーは、
ツィーター HPF:4kHz/12dB/oct
ウーファー LPF:3.15kHz/12dB/oct

クロスオーバーというと「何Hzで切るか」という数字だけに目が行きますが、本当に重要なのはそこではありません。
ユニット自体の周波数特性、減衰特性、スロープ、そして位相。
それらを含めてクロス帯域で双方の音がどのように加算されるかを見ていきます。
ここが合っていないと、周波数特性だけはそれなりに見えていても、ボーカルの定位が曖昧になったり、音像が上下に分離したりします。
数字を合わせるのではなく、実際の車室内で音がどう繋がっているかが重要です。
左右独立で周波数特性を測定
続いてRTAを使って車室内の周波数特性を測定します。
まず左チャンネル。
続いて右チャンネル。

そして左右同時。
車室内は左右非対称です。
運転席から左右のスピーカーまでの距離も違えば、ガラス、ダッシュボード、シート、ドアトリムなどからの反射条件も異なります。
そのため同じスピーカーを同じレベルで鳴らしても、運転席で測定すると左右同じ周波数特性にはなりません。
そこでサイバーナビの左右独立EQを使って、それぞれのレスポンスを整えていきます。

今回も低域には左右差があり、特に60Hz付近では左側が少し強め。
EQだけで無理に形を揃えるのではなく、最終的には左ウーファーの出力レベルを0.5dB下げることで、低域のエネルギーバランスと定位を整えました。
たった0.5dB。
でも最後のこの0.5dBが、案外効きます。
測定器で合わせて終わりではありません
RTAを見ながら周波数特性を整えれば完成。
……ではありません。
ここから実際の音楽を何曲も再生しながら聴感で追い込みます。
今回はシンバルの抜けをもう少し出したかったので、6.3kHzと8kHz付近を微調整。
最終的には両方とも約1dB持ち上げたところで、シンバルのアタックから余韻への繋がりが自然になりました。
測定して、
聴いて、
また調整する。
そしてもう一度聴く。
測定 → 聴感 → 微調整 → 再試聴
この繰り返しです。
測定器は非常に便利ですが、最終的に聴くのは測定器ではなく人間です。
サブウーファー無しとは思えない低域
そして今回、調整していて一番驚いたのが低域でした。
BLAM Signatureのウーファー。
やっぱりよく鳴ります。
Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」を再生すると、
ドスドスドス……。
いや、ちょっと鳴りすぎじゃない?
というくらい(笑)
しかもサブウーファーで後ろから低音を追加したものではなく、フロントドアの165mmウーファーから出ている低音です。
量感だけならEQで作ることもできます。
しかしSignatureの面白いところは、これだけ低域のエネルギーがありながら、その中に含まれる細かな情報が埋もれにくいこと。
音圧が上がってもベースラインが団子になりにくく、キックとベースの輪郭も追いやすい。
低域のダイナミクスと分解能。
ここはやはり上位ユニットらしいところです。
むしろこれだけドアウーファーが鳴ると、今度はドアトリム側の振動が気になってきます。
次に手を入れるなら、ドアトリム側のデッドニングも効果がありそうですね。
「今でも大満足なので……」
そして納車。
お客様もいろいろな曲をじっくり聴き込んでいました。
アーマード・コアのサウンドトラック。
最近聴いた中で一番低音が出ているというお気に入りの曲。
さらに米津玄師など、普段から聴いている音源を次々と再生。
曲によって低域の出方も音場もかなり違いますが、その違いもしっかり再現されています。
そして聴いているうちに、自然と曲を口ずさんでいる。
こういう反応って、結構分かりやすいんですよね。
音をチェックしているというより、いつの間にか音楽を楽しんでいる。
「全然違いますね」
との感想をいただきました。
まあ……
さすがに純正とは全然違います(笑)
そして施工前には、
「後々は3wayにもしてみたい」
という話をしていました。
そこで納車時に3wayの話をすると、
「いや、今でも大満足なので、随分先になりそうです」
とのこと。
まあ、分からんでもないです。
これだけ2wayで鳴ってしまうと、まずはこの状態でじっくり音楽を楽しみたくなります。
3wayへのシステムアップは、またその先のお楽しみということで。
今回のシステム
車両:トヨタ GR86
フロントスピーカー:BLAM Signature 165 S85 A
スピーカーバッフル:D-Baffle
ドア:デッドニング施工
ヘッドユニット:carrozzeria AVIC-CQ912-4
システム:フロント2wayマルチ
調整:クロスオーバー/タイムアライメント/左右独立EQ/レベル調整
高性能なスピーカーを取り付ければ、それだけでそのスピーカー本来の音が出るわけではありません。
取り付ける土台。
ドアの音響処理。
クロスオーバー。
位相。
タイムアライメント。
左右のレベル。
そしてイコライザー。
それぞれを合わせ込んで初めて、ユニットが持っている分解能、ダイナミクス、低域の制動感が生きてきます。
今回は改めてBLAM Signatureの実力を感じるGR86になりました。
まずはこの2wayシステムをじっくり楽しんでいただいて、
3wayへのシステムアップは、その先のお楽しみということで。
Meister カーオーディオ&セキュリティ