空海と道元は、日本仏教史においても天才と言われる名僧です。もちろん他にも名僧と云われる方々はおられますが、ヨガの瞑想について考える時に、このお二人を比較することは、とても有意義だと思います。なぜなら、瞑想の二つの在り方を代表する存在だからです。


 このお二人は、時代こそ異なりますが、共に若くして中国に渡り、真剣に仏教の修行を積みました。しかし、そこにはある大きな違いがありました。それは選んだ「宗派」の違いです。

 

 空海は真言宗(密教)を、道元は禅宗(禅)を学んだのです。この二つの宗派は、最終目標は共に「成仏」なのですが、修行の方法が全く異なります。それは、むしろ正反対のアプローチだと言ってもよいでしょう。(もっとも「成仏」についても、この両者は必ずしも同じ定義ではありませんが)


 密教の瞑想法の基本は「三密(身口意・密)加持」といい、印(ムドラー)、真言(マントラ)と観想(様々なイメージを思い描く)を一致させ、そこから仏の力を得ようとするものです。

 例えば大日如来の印を組み、その真言を唱え、さらに自分が大日如来と一体になるという観想(入我我入観など)を行うことで、自分自身が大日如来と融合し、その力と境地を得ようとするわけです。これを「即身成仏」とも言います。この技術的構造は、ハタ・ヨガなどの密教系ヨガと酷似しています。