当時、ヨガを習っていた私には、心に響くものがありました。

 

 アーサナなど形が上手くなった程度で満足していたのでは、それはお習字の次元なのだと思いました。自分の作ったアーサナを、どう空間の中に安定させるか、そのアーサナにどんな意味があるのか等々深く考察し体得しなければ、せっかくのヨガがただのラジオ体操の親戚になってしまう。呼吸法も有酸素運動程度の効果しか与えてくれないだろう。

 

 そう考えた私は、まずアーサナについて、骨格や血流、神経や内分泌、経穴や経絡、そしてチャクラ理論などの面からも考えることにしました。そして内観(身心を深く観察すること)を通して、それぞれのアーサナが身心にもたらす反応を、納得がゆくまで徹底的に、かつ微細に体感しました。

 

 次に、自分のアーサナを空間の中にどう安定させるかを研究しました。

 

 これは単にバランスをよくするという意味ではありません。肉体内部の五気(プラーナ気など)をしっかりと体感した上で、それを体外の五気と調和させて安定を得るのです。それには、周囲の大気が自身の身心を支え、また自分の身心が周囲の大気を支えるという、相互に支え合う感覚を磨くことから始めます。

 不思議なことに、それがわかりますと、自分の中の五気がどう動くかが体感できるようになります。つまり内外のエネルギーのバランスが整うことで、アーサナが空間に安定するのです。

 そうなれば今度は、自然と、体の感覚が希薄になってゆき、どこまでが自分の肉体なのか境がわからなくなってきます。それが「空間に融けてゆく感覚」なのです。