すっかり夏の日差しが強くなりました。
街行く人々も、涼しげな格好の上に、さらにハンカチやタオルで額
や首の汗を拭う姿がそこかしこに見られます。

ところが炎天下、どんなに熱い最中でも、したたる汗をぬぐおうと
もせず、しかも微笑みながら、説明をする人の話に耳を傾け続けら
れた方が……平成19年、佐賀県での高校総体開会式に臨まれた時
の皇太子殿下のお姿です。
「暑い」と決しておっしゃらないのは、周りの者を心配させる。そ
れ以上に、懸命に説明してくれる人々への礼儀とお考えなのかもし
れません。

本書の中ではこのように礼儀正しく、そして思いやりの深い、殿下
のお人柄を示すエピソードが随所に出てきますが、ではそのような
殿下のご人格はどのようにして形成されたのか、その一端を深く示
しているのが、本書の冒頭に掲げられている、殿下の次のような2
首の御歌です。

朝早き函館港に立ちて偲ぶ明治の帝の御幸ありしを

ももとせの昔帝の見ましけむ白山にして我登りゆく

この二首に共通するのは函館、白山という景勝の地を訪れながら、
はるか昔、同じ土地を訪れられ、或いは同じ光景を目にされた明治
天皇を偲ばれていることです。
幼少期より、明治天皇のみならず歴代天皇のご事績、ご聖徳を熱心
に学ばれてきた、そのことが現在の殿下のご姿勢、ご人格に大きな
影響を与えられたのではと拝察します。

読むほどに、皇太子殿下のご人徳にふれ、暖かで清らかな空気に包
まれると共に、皇室の伝統がしっかりと受け継がれる中で、新しい
御代を迎えることができる確信と喜びがジワジワと涌いてくる本で
す。(彦星)

『皇太子殿下─皇位継承者としてのご覚悟』
https://meiseisha.thebase.in/items/921396