娘(中3)息子(中1)2児の母です。

習い事をきっかけに息子が小6で『PTSD』

診断。その後、二次障害で『強迫性障害』

発症。息子、小6秋から不登校になり、

続いて娘も不登校に。


習い事のはじまり〜今までの

日常で辛かった事、子供たちとの関わりを

お話させていただいています。


子供たちがまた、心から笑って

過ごせる日を願う母の日記です。

前回のお話

はじまりの続き その11『過去の記憶と今が作ってしまったもの』 


1番最初のお話

はじまり『あの頃は楽しかった』 



 頭の怪我をしてしまった息子は、

 翌日には

 トレーニングをし、

 3日後には

 日常練習に入った。

 


 

 4月になれば

 6年生になる息子が

 1番最初に迎える大会は

 全国大会に繋がる

 予選会になる。

 

 地区大会、県大会だ。



 今年こそは

 必ず結果を残し、 

 ずっと目標にしてきた

『日本ジュニア強化選手』に

 なる事だ。



 頑張れば

 手が届く所まで

 並ならぬ努力を続け

 勝ち取ってきたからこそ

 今年1年は

 身が引き締まる

 挑戦となる。



 どうか先生……。

 息子の目標が叶いますように、

 技への厳しさは

 仕方がないですが

 また、

 エースの彼の時のように

 同じ事を繰り返さないように…。

 犠牲者を増やしませんように…。

 どうか、

 お願いします……。

 息子は

 必死になって

 頑張っています。


 そんな息子を

 けなすような人格否定はせず、

 息子が

 乗り越えられるようなご指導を

 どうか

 お願いします……。

 どうか

 先生の言葉で息子を

 これ以上、

 潰さないで……。

 


 

 私はもう、

 心底願い

 先生を信じるしかなかった。



 

 怪我をした翌日に

 先生は息子に、

「昨日は、先生も心配で

 酷い事を言ってごめんな。

 今年が1番のチャンスになるから

 また、今日から気持ちを切り替えして

 頑張ろう。」

 と、おっしゃっていた。


 

 先生は

 今までも

 そうだった。


 

 自分の感情に我慢できず

 暴言を発し

 先生の教え子たちを

 傷つけてきた……。

 そして、

 子供たちは

 どんどん精神的に

 追い詰められていった……。

 

 

 ストレス性から

 喘息になってしまった仲間…。

 ストレス性から

 チック症になってしまった仲間…。

 うつ病…。

 パニック障害…。

 

 

 

 子供だから……。


 

 後で

 謝ればどうにかなる……。


 

 

 エースの彼の時も

 同じ過ちを犯して

 後悔していたのに……。



 結局、先生は

 子供のためではなく

 自分のために

 子供たちに

 暴言を吐き、

 自分のために

 翌日、

 子供に

 謝る……。


 

 謝るようになっただけ

 まだ、いいが

 相手が子供だからこそ

 それでは遅いのだ。

 

 

 

 子供だから、

 先生に逆らえなくて……。

 

 自分の中で

 我慢をして、

 明日も来る練習の場では

 先生をかばうように

 平気な顔で、

 大丈夫な顔をして、

 子供は

 先生と接する……。

 

 大人以上に

 子供は、

 自分を守るために学習をしてしまうのだ……。

 どうする事で

 自分を守れるのかを……。

 

 それが

 続けば続くほど

 子供は、

 自分を見失ってしまう……。

 

 

 怪我の翌日、

 息子に謝ってきた先生に

 息子は、

 「僕の不注意で、僕が悪いので。

 先生は、悪くないです。」

 と、言っていた。

 先生は、

 そんな息子からの言葉に

 安心する顔を見せて

 微笑んでいた。

 息子からの

 その言葉を期待していたんだろう……。

 

 

 息子の本心でもあり、

 自分を守る

 精一杯な言葉でもあっただろう……。




 息子は、

 その夜、私に言った。

 

 「先生は、僕に

 期待してくれているから。

 僕は、優しい先生も知っているから。

 頑張るしかないから。

 今日、先生が「ごめんな」って

 言ってきて

 僕が、

 「自分が悪いから。

 先生は、悪くないです。」って

 言ったら先生、

 安心して笑ってくれた。」



 そして、

 息子は言った。

 「今年は全国優勝をして

 絶対に日本ジュニアになる!

 先生を喜ばせたい!」

 と………。



  

 息子は、

 それからも

 練習場所に迎う車内では

 練習前の自分の心に恐怖心が

 襲いかかってこないように、

 笑うわけでも、

 見ているわけでもなく

 無心の状態で

 漫画の動画画面の一点だけを

 ただただ、

 練習に向かう自分のために

 見続けていた。


 きっと

 また、先生から

 色々な言葉を言われて

 追い詰められているんだろうな、と

 息子を見て

 悟った……。

 


 


「ごめんな。」



 

 先生にそう言われる度に

 息子は、自分のために日々、

 一生懸命やってくださっている先生を

 信じようとしてきた。

 純粋に先生への

 感謝も忘れずに……。


 

 

 全然、

 大丈夫ではないのに……。

 


 

 本当は、

 今にでも

 崩れてしまいそうなのに……。

 そうでもしていないと、

 自分で自分を

 保っていられなかったんだね。

 




 「大丈夫です。

 先生は、悪くないので。」



 そんな会話の中でも

 息子にとって、

 久しぶりに見れた

 先生の笑顔が

 とても嬉しくて、

 仕方がなかったようだった……。


 

 懐かしかったんだね、

 今では

 滅多に…ほとんどない

 先生の笑顔が見れて。

 



 

 自分に向けて

 笑ってくれた

 先生が……。

 素直に嬉しかったんだね。


 

 

 本当なら

 一緒に

 「先生の笑顔が見れて良かったね。」

 って、

 笑ってあげたかったのに

 私は……

 日頃の

 『息子ではないような息子の姿』を

 毎日、見ているから

 先生の笑顔に

 こんなに喜んでいる息子の心に

 モヤモヤした…。



 川に身を投げ出そうと

 してしまった子供もいたのを

 ふと、思い出し

 自分に問いかけた。



 

 「これでいいの?」と。




 自分のクラブしか

 見えていなかったが

 他の強豪クラブも

 同じような感じなのか?



 本当に

 今、小学生の息子が

 必要であり

 耐えるべき練習なのか……。



 

 毎日、毎日

 余分な神経を使い

 何かに怯えながら

 家でも

 笑わなくなってしまった息子……。



 本当の意味で

 『自分のために』

 毎日を生きてもらいたいと

 息子に

 切実に思った。



 その思いと同時に、

 このクラブで生き残るためには

 親も子供同様に評価されるため、

 みんなが、

 『先生は偉い存在だ』

 『我が子を守るために親も先生に

 気に入られないと』

 と、知らず知らず

 洗脳されてしまっていくのだ。



 息子を本当の意味で守るために

 私の洗脳も少しずつ

 息子への思いと共に

 溶け始めていった。




 

 息子、小学6年生の春だった。

  




 

 つづく


 
 最後まで読んでくださりありがとうございます。