TPP:サービス分野の自由化がもたらす4つの分野への影響 | APS-15SA

APS-15SA

ブログの説明を入力します。

TPP:サービス分野の自由化がもたらす4つの分野への影響


TPP協議には ①24の作業分野があり、すべての生活分野に及びます。
その内容は物品にとどまらず、あらゆる産業で働く人々の労働のありように影響をもたらす。
  


TPPの作業分野に「サービス(サービス貿易)」という分野がある。       

WTO(世界貿易機関)の分類では
1.実務サービス、2.通信、3.建設、・エンジニアリング 4.流通、5.教育
6.環境、7.金融、8.保険、9.観光、・旅行、10.娯楽・文化・スポーツ
11.運輸の11分野が「サービス貿易」として列記されている。


この11分野のもとに150項目以上にわたって具体的な種類が明記されている。

たとえば
建設サービス及び関連のエンジニアリングサービスでは
(A)建築物に係る総合建設工事
(B)土木に係る総合建設工事
(C)設置及び組立工事
(D)建設物の仕上げの工事等となっている



このように「サービス貿易」の多くは、労働力を必要とする
「労働提供」の分野で、国際間の人の移動をともなうものが少なくない。


「サービス貿易」の自由化は、必然的に人(ヒト)と資本(カネ)の移動の自由化ということになる。 


カネの移動は関税をかけて調整することもできますが、人の移動は
出入国管理や仕事に必要な資格の共通化、相互承認などが必要になる。

自由貿易の「非課税撤障壁」だとして、医療、建設などの分野の
資格や試験、開業の規制緩和が論議対象になるのはそのためです。



TPPへの参加は、人の移動の自由化として、弁護士や医師をはじめ
 国家資格を持つ専門職が互いの国で自由に活動できる条件整備が求められることになる。
   


カネの自由化では、法制度や商慣習が異なる国でのトラブルの増加を
招くことからその調整も必要になる。


海外進出をする会社に就職すれば、TPP参加国への海外転勤は当たり前
国内転勤と同じ扱いという状況にもなりかねない。



WTOではサービスの貿易について4つの分類があり、いずれも人の移動がともなう。

1.越境取引で、ある国のサービス業者が、自国にいながらにして
 外国にいる顧客にサービスを提供する場合

2.国外消費である国の人が外国に行った時に
 現地のサービス事業者の提供を受けた場合

3.拠点の設置で、ある国のサービス事業者が
 外国に支店・現地法人などの拠点を設置してサービスの提供を行う場合

4.自然人(人間のこと、法律によって人格を与えられた団体である法人と区別する呼び方)
 の移動で、ある国のサービス事業者が社員や専門員などを外国に派遣して
 外国にいる顧客にサービスを提供する場合



また、他に国の事業者が日本の公共事業( ②政府調達・地方自治体発注も含む)
 に入札するための条件の実質平等を求めることも考えられる。


東南アジアの企業が落札した場合
自国の労働者を連れてきて低賃金で働かせることも条件整備の内容になる可能性もある。

実際、2005年にスウェーデンにラトヴィアの建設企業が進出した際
最低賃金の取り扱いをめぐってEU(欧州連合)裁判所を巻き込んだ争いになった事例もある。



自由貿易の拡大は、企業の「M&A(合併と買収)」が活発化することにもなる。

企業そのものを商品化する「M&A」では、労働者の雇用や労働条件が不安定になる事例も増えている。
また、「M&Aアドバイザー」や「M&Aコンサルタント」などの職種に
大量の外国人弁護士の流入が見込まれている。

就業者の6割以上がサービス産業で働き、その割合は近年、急速に高まっている。
それだけにサービス貿易の自由化による国内産業と労働市場への影響が懸念される。


(小田川義和・中山益則)



♦♥♦―――――♦♥♦―――――♦♥♦―――――♦♥♦―――――♦♥♦


①24の作業分野
 ・首席交渉官協議 ・市場アクセス(繊維・衣料品) ・市場アクセス(工業)
 ・市場アクセス(農業 )・原産地規則 ・貿易円滑化 ・SPS(衛生植物検疫)
 ・TBT(強制規格、任意規格及び適合性評価手続き) ・貿易救済(セーフガード等)
 ・政府調達 ・知的財産 ・競争政策 ・サービス(金融) ・サービス(越境サービス)
 ・サービス(電気通信) ・サービス(商用関係者の移動) ・電子取引 ・投資
 ・環境 ・労働・制度的事項 ・紛争解決 ・協力 ・分野横断的事項



②政府調達
 政府機関が購入する物品やサービス
 各国とも国内産業育成などの理由から国内産品を優遇してきた。
 ガットも政府調達を内国民待遇の適用除外としてきた。
 額の大きさから政府調達が非課税障壁の1つとして取り上げられ
 1996年に発効した「政府調達に関する協定」では
 国内優遇政策とされている。